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第三章 出口を探して
第24話 選択
しおりを挟む「では、最初に冒険者登録の確認を行います。右手でも左手でも結構です。こちらの本に手をかざして少々お待ち下さい」
受付の男性は事務机の引き出しから一冊の本を取り出し、適当なページを開いて俺達の前に差し出した。それは辞書のように分厚い本だった。しかし、俺達の知っている辞書とは違い、その本は開かれたページを含めて全てのページが白紙となっていた。
「あ、イ、イヨ君からどうぞ。私はイヨ君の後からでいいや」
ゲームの中で散々繰り返してきたやり取りだろうに、トトは少し怖気付いている様子で頑なにその本に手を出そうとはしなかった。
「それじゃあ、お先に」
俺は開かれた本の右側のページに手を置き、そのまま『ユーザデータの読み込み』が終わるのを待った。
「はい、結構です。ーーおかえりなさいませイヨ様。ご無事でなによりです」
数十秒程その状態で待っていると、開かれたページに次々と文字が浮かび上がってきた。そして、俺の事を急に思い出したかのように受付の男性が親しみ深い笑顔を向けてきた。
「現在イヨ様が修得可能な職業はこのようになっております。職業の変更、または職業の登録を行いますか?」
受付の男性は本に浮かび上がった文字を指し示しながらそう言った。そこに記されていたのは『初級』というカテゴリーに含まれた『剣士』『魔法使い』『槍使い』『武道家』『探索者』『弓使い』という、ひどく懐かしい文字列だった。
「うわ、懐かしいなー、俺は初心者の頃に何を選んだんだっけな……」
俺が今ゲームの中の『イヨ』だったならば、少なくともこの辞書の数十ページ分は俺の情報に書き換わっていただろうに、今の俺ではただの1ページも埋める事が出来ないようだった。だけど、それが何だか無性に愉快な事に思えた。
「何で笑ってるのイヨ君。もしかして、なにか面白い事でも書かれてた?」
横から本を覗き込んできたトトが言った。しかし、この本に浮かび上がってきた文字は第三者には読めないようになっている。名前はもちろん、現在の職業、修得可能な職業も、本人とNPCにしか読み解く事が出来ないようになっているのだ。
「いや、初心者の頃を思い出して笑ってたんだ。あの頃は本当にひどかったな」
「うん、まぁ……。昔はひどかったよね。私もゲームを始めた時に『槍使い』を選んで凄く大変だったよ。装備は揃わないし、スキルも弱かったし。イヨ君は?」
「俺は『勇者』を選んでたんだ」
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