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いざ、かまくら
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「ご主人様。皆さまお見えになりました。お庭でご主人様とサエ様をお待ちしています」
執事のエイティが、執務室で書類仕事を進めていた俺とサエちゃんを呼びに来たのは長いこと降り続いていた雪が止んだ翌日の昼過ぎのこと。
庭に出ると、ポーシャや孤児院の院長をはじめ、屋台で働いてくれてる孤児のみんなや流石に働かせるにはまだ小さい子、それに夜営業で働いてくれてる未亡人の皆さんやその子供、それから冒険者の面々まで約100人近くがわいわい騒いでいた。
「みんな、足下が悪い中わざわざ来てくれてありがとう」
みんな自分たちの雪かきや雪おろしやらいろいろあっただろうにこれだけの人数が集まってくれたのは本当にありがたい。
「いやいや、いいんすよ店長。いつも店長には世話になってますからね。それより、今日はなんでも美味い物を食わせてもらえると聞きましたが、本当ですかい?」
前の方にいた大柄の冒険者の男の言葉に頷く。
「ああ、本当だよ。ちょうど今日みたいな日はいちだんと美味しくなる料理があるのさ」
「も、もしかして鍋料理ってやつですかい?」
おっと。この人は鍋のこと知ってたのか。でも残念。
「確かに鍋は寒い日にみんなで食べると美味しいけど、今日は違うよ。今日のメニューは、お餅尽くしだ」
「オモチ……ですかい? おい、みんな聞いたことあるか?」
初めて聞くオモチなるものを知っているヤツはいるかとキョロキョロ辺りを見渡すが、当然のように知っている人は皆無で皆が首を横に振る。
とりあえず、俺とサエちゃんでやってみせる。
俺が杵を持ち、サエちゃんが返し役。
よいしょー! よいしょー! よいしょー!
そーれぺったんぺったんぺったん!
蒸し上がった餅米を臼にいれ、杵で軽く潰してからかけ声に合わせてついていく。
筋肉がないから軽快にとはいえないけど、やっぱり楽しいな餅つきって。
「はい、これがお餅だよ。ポーシャ、食べてみて。喉に詰まらないように気を付けて」
「はいっ!」
つきたてのお餅にバターを乗せて醤油をひと垂らし。
湯気がたつ餅をポーシャが口に運ぶ。
「はじめて食べる感触ですけど、美味しいです!」
うむ、そうだろうそうだろう。
笑顔で食べるポーシャを見て、集まったみんなも早く食べたそうにウズウズしだす。
「それじゃ、何人かで組になって餅をついて食べようか。ひっくり返す時に怪我をしないようになー。それと、悪いけどシルビアたちはどんどん餅米を蒸してきてくれるかな」
そしてほどなく、そこら中で楽しそうなかけ声があがりはじめた。
よいしょー どっこいせー おらよっと
ふんぬーっ ぺったん おりゃーっ
冒険者たちはさすがの迫力だし、未亡人と子供のペアも小さい杵と臼を使って楽しそうに餅つきを楽しんでくれてるみたいだ。
「味付けもいろいろあるぞー。甘いきな粉、甘く煮た豆、バター、発酵させた豆も美味いけど、俺のオススメはかまくらの中で七輪を使って海苔を巻き、醤油につけて食べる磯部焼き……ってだれも聞いてないな」
屋敷の使用人たちにせっかくかまくらを作ってもらったんだけど……あとで謝っておくか。
お、グロリアはずんだ餅が気に入ったのか。渋いな。
あとで餅チーズ明太ピザも作り方教えるから今度のおやつで出してくれ。
執事のエイティが、執務室で書類仕事を進めていた俺とサエちゃんを呼びに来たのは長いこと降り続いていた雪が止んだ翌日の昼過ぎのこと。
庭に出ると、ポーシャや孤児院の院長をはじめ、屋台で働いてくれてる孤児のみんなや流石に働かせるにはまだ小さい子、それに夜営業で働いてくれてる未亡人の皆さんやその子供、それから冒険者の面々まで約100人近くがわいわい騒いでいた。
「みんな、足下が悪い中わざわざ来てくれてありがとう」
みんな自分たちの雪かきや雪おろしやらいろいろあっただろうにこれだけの人数が集まってくれたのは本当にありがたい。
「いやいや、いいんすよ店長。いつも店長には世話になってますからね。それより、今日はなんでも美味い物を食わせてもらえると聞きましたが、本当ですかい?」
前の方にいた大柄の冒険者の男の言葉に頷く。
「ああ、本当だよ。ちょうど今日みたいな日はいちだんと美味しくなる料理があるのさ」
「も、もしかして鍋料理ってやつですかい?」
おっと。この人は鍋のこと知ってたのか。でも残念。
「確かに鍋は寒い日にみんなで食べると美味しいけど、今日は違うよ。今日のメニューは、お餅尽くしだ」
「オモチ……ですかい? おい、みんな聞いたことあるか?」
初めて聞くオモチなるものを知っているヤツはいるかとキョロキョロ辺りを見渡すが、当然のように知っている人は皆無で皆が首を横に振る。
とりあえず、俺とサエちゃんでやってみせる。
俺が杵を持ち、サエちゃんが返し役。
よいしょー! よいしょー! よいしょー!
そーれぺったんぺったんぺったん!
蒸し上がった餅米を臼にいれ、杵で軽く潰してからかけ声に合わせてついていく。
筋肉がないから軽快にとはいえないけど、やっぱり楽しいな餅つきって。
「はい、これがお餅だよ。ポーシャ、食べてみて。喉に詰まらないように気を付けて」
「はいっ!」
つきたてのお餅にバターを乗せて醤油をひと垂らし。
湯気がたつ餅をポーシャが口に運ぶ。
「はじめて食べる感触ですけど、美味しいです!」
うむ、そうだろうそうだろう。
笑顔で食べるポーシャを見て、集まったみんなも早く食べたそうにウズウズしだす。
「それじゃ、何人かで組になって餅をついて食べようか。ひっくり返す時に怪我をしないようになー。それと、悪いけどシルビアたちはどんどん餅米を蒸してきてくれるかな」
そしてほどなく、そこら中で楽しそうなかけ声があがりはじめた。
よいしょー どっこいせー おらよっと
ふんぬーっ ぺったん おりゃーっ
冒険者たちはさすがの迫力だし、未亡人と子供のペアも小さい杵と臼を使って楽しそうに餅つきを楽しんでくれてるみたいだ。
「味付けもいろいろあるぞー。甘いきな粉、甘く煮た豆、バター、発酵させた豆も美味いけど、俺のオススメはかまくらの中で七輪を使って海苔を巻き、醤油につけて食べる磯部焼き……ってだれも聞いてないな」
屋敷の使用人たちにせっかくかまくらを作ってもらったんだけど……あとで謝っておくか。
お、グロリアはずんだ餅が気に入ったのか。渋いな。
あとで餅チーズ明太ピザも作り方教えるから今度のおやつで出してくれ。
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