フードデリバリー配達員をやっていたら異世界に自由に行けるようになったので、日本からいろいろな物をデリバリーして大金持ちを目指します！

メイドカフェ店長

「中世ヨーロッパインテリア雑貨と家具のマジリハ？　変わった名前のお店ね」

　インターネットで偶然見つけたそのサイトは、個人が苦労してなんとか作りましたっていう感じが滲み出た変わり映えのしない、どこにでもあるような、そんなサイト。

　チョコレート菓子をつまみながらなんとなくマジリハのホームページを覗いて見ると。

「え、こんないい場所にあるのに土日にしか開けてないなんて……それもネット販売無しで、完全予約制？　それにこの値段……やる気あるのかしらね」

　港区と渋谷区の境にある骨董通りから少し入った場所にあるらしいこのお店。こんないい場所にあるなら家賃もそれなりに高いはずだし、普通なら毎日開けないとやっていけないと思うんだけど。雑貨と家具の写真と値段も載ってるけど、その価格もちょっと信じられない値付けだわ。

　庶民が使うような家具や食器、衣類なんかもそれなりにいい値段が設定されていて、安さが売りのアパレルよりずっと高い。

　特に、貴族御用達とかかれている部類の物は小物でも10万円以上。100万以上もするようなドレスや家具なんて誰が買うのかしら……。

「ん、この店長もしかして？」

　あー。この店長さんどこかで見たことあると思ったんだけど、最近動画サイトで急に有名になった人だ。

　きれいな女な人といっしょにマジックショーの動画をあげているんだけど、何回見てもタネも仕掛けも分からないのよ。プロのマジシャンの人も、弟子にして欲しいってコメントに書いたとかなんとか。

　たまに銀座でマジックショーを披露することもあるみたいだけど、不定期で予告もされないから狙って見に行くのは難しいのよね。でもいつかは見てみたいわ。

　あ、今度のお店もふたりでやるのね。もしかして夫婦なのかしら。少なくとも、付き合ってるのは間違いなさそうね。

　それにしても、中世ヨーロッパの雑貨かあ。どれもこれも、大量生産されたものではなく職人が時間をかけてひとつひとつ手作りした物って書いてる。それが本当なら値段が高くなるのま分かるけど。

「あ、このメイド服かわいい」

　目に留まったのは、伯爵家で採用されていると説明書きのある正統派のメイド服。あれ？　採用されている？　採用されていた、ならまだ分かるけどミスかしらね。

　でも、このメイド服の凄さが、私には分かる。

　今どきの媚び要素や萌え要素なんて微塵も感じさせない、あくまでも実用性を高めることにこだわり抜いた逸品よ。

　このメイド服、私の店でも使えないかしら。お値段は……うわ、高い。でも……欲しい。

　気がついたら、予約が終わっていた。

　恐ろしいわ。このサイト、魔法でもかかっているんじゃないかしら。

　でも……。

　あのメイド服を着たメイドさんが本格的な中世ヨーロッパの家具や雑貨を上品に並べたメイドカフェで働いていたら……。

　あー、早く予約の日にならないかしらね。