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クリスとみそら

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「こ、これは……お父様?」

「ああ。まさか、これほどとはな」

 氷像に魔法をかけた本人たちもなぜか驚いているんだけど……

「あの、なにか失敗でも?」

「いや、そうではない。むしろ、逆だな」

 首を振って否定するアルフォンスさんに、エリシャさんが続けた。

「このドラゴンとフェニックスは、オルシャー家の血統魔法の歴史上、もしかすると最高の……いえ、それ以上の存在となるかもしれません」

 感慨深げに言うけど、オレにはよく分からん。

 サエちゃんもポーシャも、なにが起きたのかいまだによく分かっていないようで……って、サエちゃんの様子がおかしいぞ?

「な、なんでたーくんとポーシャは贈り物が貰えてわたしにはないのよ……?」

 そっちかーい!

 でもまあ気持ちは分からなくはないけど、今はとりあえずドラゴンとフェニックスだよな。

 ドラゴンは透き通った水晶質の体をなめらかに動かしてオレの前まで歩いてくると、「クアアアアッ」と鳴き声をあげてちょこんと犬のようにオスワリした。

 フェニックスのほうは、ふぁさっとその翼を広げて浮き上がると、え? え? と驚いているポーシャの腕を止まり木代わりに着地した。

「ひゃっ、冷たい」

 ビクッとしたのに気づいたのか、フェニックスが「キュルルル」と鳴くと「あ、冷たくなくなった」とポーシャ。

 どうやら、自分で体温調節が出来るみたいだ。

「ふむ。信じられん。受魂魔法は、人や生き物の精巧な模型や彫像に仮初めの命を与えてゴーレムとする魔法なのだ。しかし、どう見てもその2体は仮初めなどではなく、本物の命と魂を持っておる」

「お父様ならともかく、少なくともわたしにはこんなことは絶対にできませんわ」

 エリシャさんが持ち上げるが、「私にだって今までも、そしてこれからも無理さ」とアルフォンスさんは苦笑していた。

「さて、多少……いや、かなり驚いたがドラゴンとフェニックスはきみたちの家族となったのだ。名前をつけてやったらどうかね」

「な、名前ですか……」

 ていうか、なにもかもいきなりすぎだろ。こっちは魔法すらまだ完全には受け入れられていないってのにさ。

「あの店長、わたしのフェニックスさんにも、店長が名前を付けてくださいませんか?」

 あ、ポーシャはもう受け入れてるのね。

 そして、無茶振りしてくるね。まあいいんだけどさ。

 実は、2体を見た時にピンと閃いた名前があったんだよね。

「それじゃあ、ドラゴンはクリス。フェニックスはみそらっていうのはどうかな?」

「クリスちゃんとみそらちゃんですか? かわいい名前です! いいと思います!」

 喜ぶポーシャ。

「クリスっていうのは、水晶みたいだからクリスタルからでしょうけど……みそらっていうのは?」

 首をかしげるサエちゃん。

「そのフェニックス、碧いだろう? 青色にもいろいろ種類はあるんだけど、その中に明るく澄んだ空の青を表すみそら色っていうのがあるんだよ。フェニックスなら空も飛べるだろうし、いいんじゃないかなって」

「へえ、いいじゃない! うん、たーくんいいセンスだよ見直したぞ!」

「お空の色……素敵です。よろしくね、みそらちゃん、クリスちゃん」

「クアッ」

「キュル」

 ドラゴンもフェニックスも気に入ってくれたのか、オレたち3人に挨拶をするかのように頭をこすりつけて回る。

 うん、めっちゃカワイイぞ!
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