→賛否分かれる面白いショートストーリー（1分以内で読了限定）

#95 閉鎖病棟の絵

閉鎖病棟の中で、老画家は壁に向かって絵を描いていた。彼の作品は、病院のスタッフから多くの賞賛を受けていた。しかし、彼の絵にはいつも何かが足りないと感じていた。

新しい看護師が赴任してきた日、彼女は老画家の絵に興味を持ち、彼に話しかけた。
「あなたの絵には、いつも人物が描かれていませんね。なぜですか？」

老画家は微笑みながら答えた。
「私の絵には、見る人が自分自身を投影するスペースを残しているのです。」

数日後、看護師は老画家が亡くなったことを知らされた。彼女は彼の部屋に行き、壁に掛けられた最後の絵を見た。そこには、病棟の窓から見える景色が描かれていたが、今回は中央に一人の女性が立っていた。

看護師は驚いた。その女性は、彼女自身の姿だった。彼女は老画家が言っていたことを思い出した。そして、彼女は理解した。老画家は、彼女が彼の絵に入ることをずっと待っていたのだ。

しかし、その時、看護師は気づいた。窓の外には何も見えない。病棟は完全に閉ざされていた。外の景色は、老画家の想像の産物だった。
では、彼女が見た自分の姿は？

ここから出られない私は誰・・・？
と、絵の中の彼女は困惑するのだった。