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#50 ダムでの別れ(切ないラスト)
しおりを挟む彼はダムの上で立ち尽くしていた。彼女との思い出の場所だった。ここで初めて出会った。ここで初めてキスをした。ここで初めて別れを告げた。
彼女は病気だった。余命はわずかだった。だから、彼女は彼に最後の願いをした。
「私が死んだら、このダムに私の遺灰をまいてほしい」と。
彼は約束した。そして、彼女は亡くなった。彼は悲しみに暮れたが、彼女の願いを果たすために、ダムにやってきた。
彼は骨壷を抱えて、ダムの端に歩み寄った。水面に映る夕日が美しかった。彼は深呼吸して、骨壷のふたを開けた。
すると、突然、大きな音が響いた。ダムが決壊したのだ。
水が崩れ落ちてきた。彼は驚いて、骨壷を手放した。骨壷は水に飲み込まれていった。
「なんてことだ……」
彼は絶望した。彼女の願いを果たせなかった。彼女の遺灰は水に流されてしまった。
しかし、そのとき、彼は気づいた。水が流れる先には、海があるのだ。海につながる川があるのだ。
「もしかしたら……」
彼は思った。
「もしかしたら、これでいいのかもしれない」
彼女は海が好きだった。海に行くと元気になると言っていた。海に行きたいと言っていた。
「もしかしたら……」
彼は涙を流した。
「もしかしたら、海へ行きたかったのかもしれない……」
ダムの決壊には意味があったのだ。
彼女の遺灰は水と一体となって、海へと向かっていった。美しく広大な海へと帰っていった。
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