→本当にあったかもしれない不思議な話

不老不死の薬

私は薬剤師として働いているが、趣味で古い本や文書を収集している。
ある日、ネットオークションで見つけた古い薬学の書物に興味を持ち、落札した。その本は江戸時代のもので、薬草や秘薬のレシピが書かれていた。本の中には、不老不死の薬の作り方が記されているという一文があった。私は好奇心に駆られて、そのレシピに従って薬を作ってみることにした。
その薬の材料は、珍しいものではなく、普通に手に入るものだった。
しかし、その薬を作るには、特別な場所と道具が必要だった。本によると、その場所は「地下室」と呼ばれていたが、その正体は不明だった。
私は、その地下室を探すために、本に書かれていた場所の近くにある古い寺院に行った。
寺院の住職に話を聞いたところ、その寺院には地下に秘密の部屋があるという。その部屋は、かつて薬師如来を祀っていたが、明治時代に廃止されたという。

住職は、私にその部屋を見せてくれると言った。私は、その部屋が本に書かれていた地下室なのではないかと期待した。
住職に案内されて、寺院の裏にある小さな扉を開けた。その扉の奥には、石段があり、暗闇に続いていた。
住職は、懐中電灯を持って、私に先に降りるように言った。石段を降りていくと、やがて地下に到着した。
そこには狭い部屋があり、壁には棚が並んでいた。棚には、本に書かれていた通りに、古い薬箱や壺が置かれていた。私は、その中に不老不死の薬の材料があるのではないかと思い、棚を調べ始めた。
すると、棚の一つに、本に書かれていた薬の名前が書かれた小さな瓶を見つけた。その瓶には、液体が入っていた。
私は、その瓶を手に取って、蓋を開けた。すると、甘い香りが漂ってきた。私は、その液体が本当に不老不死の薬なのかと疑問に思った。
しかし、その瞬間、住職が私の後ろから声をかけた。
「それは、危ないものですよ。飲んではいけません」
私は、驚いて振り返った。住職は、私の手に持っている瓶を見て、真剣な表情をしていた。
私は、住職に尋ねた。
「これは、不老不死の薬なのですか？」
住職は、首を振って答えた。
「いいえ、違います。それは、幻覚剤です。その液体を飲むと、現実と幻が区別できなくなります。そして、やがて狂気に陥ります。その薬は、かつてこの寺院で、罪人に与えられたものです。その薬を飲んだ者は、苦しみの中で死んでいきました。それは地獄の薬と呼ばれていました」
私は、住職の言葉に恐怖を感じた。私は、すぐに瓶を棚に戻した。
そして、住職に謝って、地下室から出て行った。
私はその日から、古い薬学の書物にすっかり興味を失ってしまった。