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第二章

ダンジョン②

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 向かって来たモンスターは、倒すと魔石だけを残して消滅した。
 戦闘が終わった地面には数十個の魔石が転がっている。

 こいつらは一体なんなんだ───?


 「あの原因がダンジョンだとすれば...まさか」

 「だが、それなら色々と腑に落ちる」

 「ああ。ここまで大掛かりだった事も、情報が隠されていたのにも、な」
 
 「いや、しかし...そんな、そんな事が本当に起こったというのか?あんなのは御伽話のレベルじゃないか...!?」

 「だが実在する。可能性はゼロじゃない。それにもう何ヶ月も経ってるんだ、なのにスタンピードの原因も発表されていない───」
 

 周囲の冒険者たちは深刻な表情で話し合っている。

 彼らも混乱してるみたいだけど、それでも何か知ってる感じだよな...?

 色々と聞いてみたかったが、彼らが纏う張り詰めた緊張感には不思議と近付けない。

 
 一人置いていかれ状況がわからずに立ち尽くしていると、背後から右肩をポンと叩かれた。

 「こりゃあ、大変な事になったかもな」

 もはや聞き慣れた声に振り向くと、やはりビューラーだった。
 しかしいつもどこか余裕のある彼が、見たことのない真剣な表情でモンスターたちが来た方向を睨んでいた。

 何が大変なんだ...?

 「ビューラー───」

 聞こうとするけれど、それよりも先に彼が口を開いた。

 「こうなったからには説明してもらうぜ」

 ビューラーの鋭い声に驚きながら彼の視線を追うと、一人の男が神妙な面持ちで立っていた。

 騎士の隊長だ。
 ピリついた冒険者たちの視線が彼に突き刺さる。

 彼はおもむろに辺りを、冒険者たちを見渡してから考え込むように数秒目を閉じ、やがて大きく息を吐いて目を開けた。

 重苦しい、といったふうに口を開く。

 「...仕方あるまい」

 「単刀直入に言おう。先のスタンピード、その原因がダンジョンの出現にある可能性がある。...いや、高いと言っていい。事件後から長期にわたって、そして現在もなお調査が行われているが、原因らしい原因は一つも発見されなかった。───このダンジョンを除いてな」

 疑問はいくつもあるが黙って聞き入る。

 「皆も思い至っているだろうが、スタンピードがダンジョンによって引き起こされたとすればそれが意味するところはただ一つ。"災禍級"ダンジョンの出現だ」

 あたりがざわつく。
 
 曰く、内部を調査していた複数の高ランク冒険者が未帰還であり、その中にはSランクパーティーも丸ごと含まれるという。

 Sランクといえば国の英雄的存在だ。個人ではなくパーティーでSとはいえ、それでも並の冒険者とは次元が違う存在だ。

 そんな彼らが、未帰還。

 「なッ───!?じゃ、じゃあ本当に災禍級だってのか!?」

 「わからん。が、その可能性が高い。内部の危険度はもちろんだが、複数の入り口が存在するという広大さ。どれを取っても並ではない」


 ───どう考えてもやばいことが起きてるっていうのはわかるけど、そもそも災禍級ってなんなんだ?


 困惑する俺を他所に話は続く。

 ───曰く、内部が危険な事は承知の上だが、未帰還の高ランク冒険者たちを見捨てるのは些か大きすぎる損失であると。
 さらに上に判断を仰ごうにも、彼らの生存を考えれば一分一秒の時間も惜しいと。

 「そもそも領都近郊のダンジョンにて魔物の地上侵出を確認した以上、どのみち放置はできまい。交代で休息を取り、払暁と共に内部へ向かう」











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