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第二章
ダンジョン
しおりを挟む「一体何があったんだ!?」
戦闘を終えて小休止していると、突然声が響いた。
何人かの騎士が森の中から歩き出てきていて、この惨状に驚愕しているようだった。
そりゃあ驚くよね...。ていうか、あの人たちはどこから来たんだろう?
彼らは隊長らしき人物とやや離れた場所で話を始めたので、気になるが声は全く聞こえない。
◆
ゼルスは、判断に困っていた。
捜索から帰って来ない冒険者たちを探しにダンジョンに入った騎士たちが戻ってきたのだ。しかし、
道がなくなっていた─── 。
報告によれば、なんと彼らが通ったはずの通路が壁で塞がれ行き止まりになっていたという。
冒険者たちはトラップによって閉じ込められたと判断し、安全のため遠距離から魔法をぶつけるもヒビすら入らず、諦めて帰還したと。
どうしたものか...。
不用意に罠に近づくことは危険で、通路の打通も望めない。
救出のためには迂回するしかないが、そのためには危険な未踏破領域を進むことになる。
これ以上の被害を出すわけにはいかない。
かといって、ダンジョン内部に残されたAランク冒険者数名というのは切り捨てるには大きすぎる存在だ。
「どちらを選んでも完全な正解ではない、か...」
俺はそう嘆息しながら、魔物の死体で溢れる野営地に視線を向けた。
救援の冒険者たちが持ってきたポーションによって重傷の者はいないが、疲労はそうもいかない。
ひとまずは地上の対応が先決だな...。
◆
騎士の隊長から、交代で休息を取りつつ夜を明かすという指示があった。
魔物の死体の処理など、諸々の後始末は明るくなってから行うという。
えぇ...まじでここで寝るの...?
地面には所狭しと魔物の死体が転がっていて、当たり一帯が奴らの血で濡れている。
ちょっともうすでに吐きそうなんだけど......。
などと内心で嘆いていると。
「魔物が出て来たぞ!?」
突然1人の騎士が大声を上げた。
俺を含め、皆がすぐに戦闘態勢に入った。
さっきまでとは打って変わり今度は一方向から向かって来る。
森の中では剣のみで戦うしかない俺は前衛に立ち、モンスターの一団とぶつかった。
もっと強くなりたい。先の戦いで生まれたその思いや悔しさをぶつけるように剣を振るい、オークの上位種であるハイオークの胸を切り裂いた。
奴は血を吹きながら地面に倒れたが...
「は?」
そのハイオークの死体は黒い靄のようになって姿を消してしまった。
地面には奴のものと思しき魔石だけが一つ転がっている。
どういうことだ...?
こんなことは初めてだ。なんで死体が消えた...?
思わず周りを見渡すが、他の皆はそれほど驚いた様子はない。それどころか、
「───そういうことだったのか」
誰かが納得したような声音で言う。
「まさか、ダンジョンとはな......」
ダンジョン...?
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