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第24話 テッド=ヴラドが死んで、エクムント=バルミングが生まれた
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エルフの国であるサルバリオン国の辺境地域。地理的に人間の集落もぽつりぽつりとある場所に彼女は居を構えていた。
普段は農民として野菜作りをしている傍ら、人生のやり直しを手助けする仕事も続けていた。
その仕事からか「人生再生家」と言われるのが彼女、クロノだった。
そこへ、彼の国で軍事クーデターが起きたという知らせが彼女の耳にも届いている国の王が彼女の元を訪れた。
「お前が人生のやり直しをしてくれるクロノというエルフだそうじゃないか。エルフィーナからお前を訪ねろと言われてやってきた。紹介状もある」
そう言ってテッドはエルフィーナのサインが書かれた紹介状を出しつつ、人間には何歳なのかは見た目ではいまいち分からない女のエルフに声をかけた。
「へぇ、私も随分と名が知れるようになったようだね。人生をやり直したい。誰だって1度は思う事。だが、それが本当にできるとしたらどうする?」
「お前なら人生をやり直せると聞いてやってきた。何でも別人に生まれ変わらせることができると聞いたんだが」
「別人とは違うねぇ。正確に言えば、10年ほど肉体を老化させるの。同じ人間でも10歳も年齢が違えば別人に見える。だから人生の再出発が出来るというわけ。
じゃあ早速始めるからそこのベッドに横になってちょうだい」
エルフの寿命はおよそ1000年ほどと言われているが「1000年しか生きれないのか」と嘆くエルフも数多い。何とか寿命を延ばそうと研究を続けて得た「副産物」それが彼女が使う「老化」の術だ。
人為的に「成長」あるいは「老化」させることで、一見しただけでは別人に見えるように細工をして人生をやり直したいという願いを実現させてきたのだ。
ベッドの上に寝たテッドはアイマスクを付けさせられる。
「何でこんなものを?」
「商売敵が出てきちゃ困るからね。もう少ししたら意識が飛ぶからあなたの体感的にはすぐ終わるわ」
「へ? 意識が飛ぶ!? それってど……」
彼女の言う通り、テッドの意識はそこでぶつりと切れた。
テッドが目覚めた時には既に施術は終わっているとの事だ。
「気分はどう?」
「うーむ……それほど変わりないが本当に10年老化したのか?」
「まぁアンタは15歳だっけ? それが25歳になった程度だからそれほど身体の変化は劇的ではなさそうね。前に30の男が40になった時は『体がだるい』とかぼやいてたけどね。鏡で自分の姿を見たい?」
「あ、ああ。頼む」
テッドはクロノから手鏡を受け取り自分の姿を見る。そこにはヒゲや髪が伸び放題のボサボサになった自分の姿が映っていた。
「う、うわ! 何だこりゃ!?」
「10年分の髪やひげが一気に伸びたみたいね。大丈夫、私は理容師でもあるから散髪も出来るわよ」
そう言うと彼女は床屋が使うハサミやカミソリが何本も納められたケースを取り出し、身に着ける。
「クロノ、それは別料金か?」
「施術費用の中に入ってるから大丈夫よ。リクエストとかある?」
「そうだなぁ……せっかく生えたんだから口ヒゲを残してほしい。あとは任せるよ」
「分かったわ。じゃあやるわ」
クロノはテッドの髪を切り、ヒゲを剃り、あるいは整えていく。
30分後……
「はい終わったわ」
クロノの手による散髪は終わった。テッドが鏡で見てみると中々の出来だ。
「これで施術は終わりか?」
「待って。最後に大事なものがあるわ」
そう言うと彼女は「苗字」と「名前」と書かれた箱を2つ取り出し、テッドの前に差し出す。
「何だこれは?」
「名前と名字が入った箱よ。この箱に入ってる紙を1枚ずつ取り出して。それがあなたの新しい名前よ」
「新しい名前なのにそんなことで決めていいのか?」
「旧い名前を捨てるというのはそういうものよ。運頼みというのはある意味神様の領域だから神の導くままにってね」
「ふーん。そうか」
テッドはそれぞれの箱に手を突っ込むと、名前の箱からは「エクムント」苗字の箱からは「バルミング」と書かれた紙が出てきた。
「決まりね。今日からあなたは「エクムント=バルミング」という25歳の男よ。もう15歳のテッド=ヴラドではないわ。せっかく生まれ変わった新しい人生なんだから、楽しんでいってね」
こうして15歳の青年「テッド=ヴラド」は今までの自分を捨て、25歳の男「エクムント=バルミング」という新たな人生をスタートさせた。
【次回予告】
エクムント=バルミングとなって10年。その身が朽ち果てるまで旅を終えるつもりはない。今日も彼は旅に出る。
最終話 「贖罪の旅」
普段は農民として野菜作りをしている傍ら、人生のやり直しを手助けする仕事も続けていた。
その仕事からか「人生再生家」と言われるのが彼女、クロノだった。
そこへ、彼の国で軍事クーデターが起きたという知らせが彼女の耳にも届いている国の王が彼女の元を訪れた。
「お前が人生のやり直しをしてくれるクロノというエルフだそうじゃないか。エルフィーナからお前を訪ねろと言われてやってきた。紹介状もある」
そう言ってテッドはエルフィーナのサインが書かれた紹介状を出しつつ、人間には何歳なのかは見た目ではいまいち分からない女のエルフに声をかけた。
「へぇ、私も随分と名が知れるようになったようだね。人生をやり直したい。誰だって1度は思う事。だが、それが本当にできるとしたらどうする?」
「お前なら人生をやり直せると聞いてやってきた。何でも別人に生まれ変わらせることができると聞いたんだが」
「別人とは違うねぇ。正確に言えば、10年ほど肉体を老化させるの。同じ人間でも10歳も年齢が違えば別人に見える。だから人生の再出発が出来るというわけ。
じゃあ早速始めるからそこのベッドに横になってちょうだい」
エルフの寿命はおよそ1000年ほどと言われているが「1000年しか生きれないのか」と嘆くエルフも数多い。何とか寿命を延ばそうと研究を続けて得た「副産物」それが彼女が使う「老化」の術だ。
人為的に「成長」あるいは「老化」させることで、一見しただけでは別人に見えるように細工をして人生をやり直したいという願いを実現させてきたのだ。
ベッドの上に寝たテッドはアイマスクを付けさせられる。
「何でこんなものを?」
「商売敵が出てきちゃ困るからね。もう少ししたら意識が飛ぶからあなたの体感的にはすぐ終わるわ」
「へ? 意識が飛ぶ!? それってど……」
彼女の言う通り、テッドの意識はそこでぶつりと切れた。
テッドが目覚めた時には既に施術は終わっているとの事だ。
「気分はどう?」
「うーむ……それほど変わりないが本当に10年老化したのか?」
「まぁアンタは15歳だっけ? それが25歳になった程度だからそれほど身体の変化は劇的ではなさそうね。前に30の男が40になった時は『体がだるい』とかぼやいてたけどね。鏡で自分の姿を見たい?」
「あ、ああ。頼む」
テッドはクロノから手鏡を受け取り自分の姿を見る。そこにはヒゲや髪が伸び放題のボサボサになった自分の姿が映っていた。
「う、うわ! 何だこりゃ!?」
「10年分の髪やひげが一気に伸びたみたいね。大丈夫、私は理容師でもあるから散髪も出来るわよ」
そう言うと彼女は床屋が使うハサミやカミソリが何本も納められたケースを取り出し、身に着ける。
「クロノ、それは別料金か?」
「施術費用の中に入ってるから大丈夫よ。リクエストとかある?」
「そうだなぁ……せっかく生えたんだから口ヒゲを残してほしい。あとは任せるよ」
「分かったわ。じゃあやるわ」
クロノはテッドの髪を切り、ヒゲを剃り、あるいは整えていく。
30分後……
「はい終わったわ」
クロノの手による散髪は終わった。テッドが鏡で見てみると中々の出来だ。
「これで施術は終わりか?」
「待って。最後に大事なものがあるわ」
そう言うと彼女は「苗字」と「名前」と書かれた箱を2つ取り出し、テッドの前に差し出す。
「何だこれは?」
「名前と名字が入った箱よ。この箱に入ってる紙を1枚ずつ取り出して。それがあなたの新しい名前よ」
「新しい名前なのにそんなことで決めていいのか?」
「旧い名前を捨てるというのはそういうものよ。運頼みというのはある意味神様の領域だから神の導くままにってね」
「ふーん。そうか」
テッドはそれぞれの箱に手を突っ込むと、名前の箱からは「エクムント」苗字の箱からは「バルミング」と書かれた紙が出てきた。
「決まりね。今日からあなたは「エクムント=バルミング」という25歳の男よ。もう15歳のテッド=ヴラドではないわ。せっかく生まれ変わった新しい人生なんだから、楽しんでいってね」
こうして15歳の青年「テッド=ヴラド」は今までの自分を捨て、25歳の男「エクムント=バルミング」という新たな人生をスタートさせた。
【次回予告】
エクムント=バルミングとなって10年。その身が朽ち果てるまで旅を終えるつもりはない。今日も彼は旅に出る。
最終話 「贖罪の旅」
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