人魔共和国建国記

あがつま ゆい

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激闘 ヴェルガノン帝国

第119話 近い将来 遠い将来

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 冬の寒さがようやく過ぎ去り始め、野草の新芽が芽吹く頃になったころ、ハシバ国の軍人たちが顔を突き合わせて会議を開いていた。

「帝都の制圧……ですか」
「ああ。街道の関門を突破して首都を一気に急襲する。あいつらが山を越えて王都を襲った時みたいにな」

 シグリッドの持ってきた地図によると都市国家イルバーンから帝都までは歩いて4日程度の位置にあるという。そこを制圧して首都機能をマヒ、あわよくば皇帝デュークを倒すことが狙いだ。

「法王猊下げいかの命を受けて集った僧兵およそ13000が味方だ。この戦い、勝てると思うぞ」
「しかし補給はいかがいたしますか? 僧兵に加えて我がハシバ国軍も参加となりますとそれだけの兵を支えきれるかどうかわかりませんぞ?」
「都市国家と教会が補給に関しては全面協力してくれるからその辺の心配もない。俺たちは全力で目の前の敵に集中すればいい」
「なるほど。支援の当てはあるのですね」

 今年の夏に行われるヴェルガノン帝国との戦争、それも首都制圧というこれまで以上に激しくなることが予想される大きな大きなものだ。規模がでかいだけあって細かいことも慎重に議論を重ねていく。



 会議が終わるころには夕方になっていた。家族が待つ居間へと向かう。

「あなた、お帰りなさい」

 メリルの腕には新たに産まれた人間の男の子が抱かれていた。

「アーク、帰ってきたぞ」

 マコトはその子を抱いてあやし始めた。

「パパおかえりー」

 最近しゃべりだすようになった娘のリーリエが父親に声をかける。かわいい盛りの年頃だ。

「オヤジおかえり」
「今日はちょっと遅かったな。会議が長引いたのか?」

 そして今ではすっかり成人したクルスとケンイチが出迎える。



 マコトの家族は3男1女とまずまずの大きさになっていた。当面は問題にならないがいずれ王位継承はもめるだろう。

 長男だが養子であるクルス。
 マコトとメリルの間にできた初めての子供だがオーガであるケンイチ。
 同じく実子でなおかつ人間であるが3男のアーク

 3人とも決め手に欠けており誰を次期国王にするかはまだ本格的に議論は始まってはいないが紛糾しそうな案件である。

「そろそろ王位継承も考えんといかんな」
「オヤジ、別に迷うことはねえだろ? 兄貴クルスが継げばいい。俺が兄貴を支えて兄貴が国を支える。それでいいじゃねえか、何の問題があるんだい?」
「そうか。お前は昔から迷うことが無いな」
「まぁな。悩むなんて時間の無駄だよ、どうせ解決しなくてはいけないんだからさ」

 ケンイチは竹を割ったような単純でさっぱりした性格で、悩みが無いのが特徴だ。それにマコトはだいぶ救われている。

「ま、目下の課題はヴェルガノン帝国だな。王位継承問題はそいつを倒した後いくらでも悩めばいい」
「だな。こいつらに負けちゃ王位継承もへったくれも無いからな。ところで母さん、今夜の晩飯は何だい?」
「久しぶりにいい肉が手に入ったからステーキよ」
「おおっ! 良いねぇ!」

 ケンイチの好物が出ると知って彼のテンションが上がる。こうして家族の団らんが始まった。



【次回予告】

ついにハシバ国がヴェルガノン帝国制圧に向けて動き出す。だが予想外の事態が待っていた。

第120話 「ヴェルガノン帝国への侵攻作戦」
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