113 / 127
激闘 ヴェルガノン帝国
第113話 反攻作戦
しおりを挟む
「閣下。戦と行軍続きで兵たちに疲れが見えています。休息をとらせてはいかがでしょうか?」
「ふむ、仕方ないな。しばらく休暇を取らせよう。制圧された領土を最大限に注意深く監視してくれ。あいつらは何を持ち出してくるかわかったもんじゃないからな」
「ハッ」
首都陥落の危機は去った。だが依然ヴェルガノン帝国はミサワ領、ランカ領、そしてペク国を制圧中であり、何とかして彼らを追い出さなくてはならない。
だが戦や行軍続きでは兵士の士気に悪影響が出るので、マコトは10日の休息を与えることにした。
「いかがなさいますかティアラ様?」
「今回の作戦は相手の隙を見て首都を陥落させることが狙いだったが、それが失敗したとなれば正直負け戦だ。
無論このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。敵将の1人でも引き込むくらいの事はしないとデューク様に面目が立たない」
首なし騎士のティアラは苦い顔をしながらも指示をする。
今の自分たちは敗残兵のようなものだが、戦果の1つあげずに帰るわけにもいかないと思っていたからだ。彼女は皇帝デュークに並々ならぬ忠誠心を持っていたがため、特に。
「……城壁ごと相手を崩す、と? 出来るのか?」
「はい。せっかく築いたペク国の城壁を壊すことになりますけどよろしいですか? 修繕費は出しますよ」
「マコトよ、お主がそう言うのなら構わん。領土解放のためだ、好きにしてくれ」
「ありがとうございます」
マコトはペク国の老師と話をしていた。彼が言うには城壁ごと相手を崩すつもりらしい。それだけの兵器を彼は持っていたのだ。
ハシバ国本隊が帰還してから10日後。辺りはすっかり冬の空気になった中をハシバ国の軍が領土解放のために動き出す。まずはミサワ領とランカ領の解放のため本隊を2つに分けて攻め込んだ。
「閣下、各員戦闘配備につきました。ご指示を」
「分かった。砲撃を開始してくれ」
ミサワ国を攻め込む隊の総司令であるマコトが砲撃開始の指示を送る。
10門ある大砲が次々と砲弾を撃ち出し城壁に叩きつける。砲弾が1発当たるだけで壁にヒビが入るほどの威力を持ったものを断続的ではあるが飛ばし続ける。
ヒビの入った壁に続けて食らえば城壁の石は砕けはがれ落ち、徐々に浸食されていく。
ドワーフたちが開発した大砲は戦場の光景を大きく塗りかえた。大砲から発射される砲弾は石でできた城壁を砕くほどの威力があり、従来の城や城壁での籠城は不可能となった。
マコトは以前、大砲の技術を持つオレイカルコス連合との戦いでは「大砲の前では城壁は何の意味も無い」事を知っており、極力防衛戦をしないよう采配を振るっていた。
「ティアラ様! このままでは城壁が持ちません!」
「クッ! やむを得ん! 野戦をするぞ!」
(これでは『引きずり出された』格好になるな……籠城すれば城壁ごと崩され、野戦に出れば相手を倒すには数が足りない……クッ! どうすれば!)
ティアラは苦虫を噛み潰したような渋い顔をして采配を振るう。たとえ自分達が大きく不利であるというのを知っていてもなお。
「閣下、敵部隊が城壁から出て来る模様です」
「そうか。野戦の用意をしとけ!」
マコトは明るい顔をしながら指示を出す。
以前イルバーン防衛戦で勝った経験に加え、今回の戦では首都防衛戦で援護してくれた僧兵たちがいることもあって、特別に不利な要素でもなければ勝てるだろうと踏んでいたのだ。
「グゥア!」
「アガガ! アガ……ガ……ガ……」
弓矢の射程外から聖別された銃弾、並びに聖なる魔法が絶え間なく撃ち出され、次々と不死者の兵隊たちが倒されていく。
射程外からの一方的な攻撃を仮に突破できたとしても、接近戦においてはヴェルガノン帝国軍の天敵とでもいえる僧兵が待ち受けるマコトの軍は、彼らにとって真正面から打ち破るのはほぼ不可能な存在だった。
「ティアラ様! 我が隊の残存兵残り僅かです!」
次々と上がってくる報告は自分たちが苦戦、不利な状況であることを伝える物ばかり。明るいニュースは皆無だ。
「クソッ! ここまでか! 総員に退却命令を。再び山脈を超えて本国まで撤退する!」
彼女は苦渋の決断を下した、いや下さざるを得なかった。
「閣下。すんなり勝てましたね」
「ま、勝った勝ったともてはやされるような戦いってのは危ないものさ。勝って当然、勝てて当たり前の勝利こそ本当の勝利ってやつなのさ」
「この調子だとヴェルガノン帝国とやらも案外大したことなさそうに見えてきましたよ。山脈越えは慌てましたけどそれ以外はどうってことないですね。ま、いわゆる1発屋ってやつですかね?」
「……だといいがな。勝ち戦でも調子に乗るなと伝えてくれ」
「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。連戦連勝続きであるハシバ国軍だがいつそれが崩れるかはわからない。用心するに越したことはないとマコトの感が告げていた。
【次回予告】
ランカ領を奪還する部隊に組み込まれていたクルス。そこで彼は全てのきっかけをなった相手と出会う。
第114話 「かたき討ち」
「ふむ、仕方ないな。しばらく休暇を取らせよう。制圧された領土を最大限に注意深く監視してくれ。あいつらは何を持ち出してくるかわかったもんじゃないからな」
「ハッ」
首都陥落の危機は去った。だが依然ヴェルガノン帝国はミサワ領、ランカ領、そしてペク国を制圧中であり、何とかして彼らを追い出さなくてはならない。
だが戦や行軍続きでは兵士の士気に悪影響が出るので、マコトは10日の休息を与えることにした。
「いかがなさいますかティアラ様?」
「今回の作戦は相手の隙を見て首都を陥落させることが狙いだったが、それが失敗したとなれば正直負け戦だ。
無論このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。敵将の1人でも引き込むくらいの事はしないとデューク様に面目が立たない」
首なし騎士のティアラは苦い顔をしながらも指示をする。
今の自分たちは敗残兵のようなものだが、戦果の1つあげずに帰るわけにもいかないと思っていたからだ。彼女は皇帝デュークに並々ならぬ忠誠心を持っていたがため、特に。
「……城壁ごと相手を崩す、と? 出来るのか?」
「はい。せっかく築いたペク国の城壁を壊すことになりますけどよろしいですか? 修繕費は出しますよ」
「マコトよ、お主がそう言うのなら構わん。領土解放のためだ、好きにしてくれ」
「ありがとうございます」
マコトはペク国の老師と話をしていた。彼が言うには城壁ごと相手を崩すつもりらしい。それだけの兵器を彼は持っていたのだ。
ハシバ国本隊が帰還してから10日後。辺りはすっかり冬の空気になった中をハシバ国の軍が領土解放のために動き出す。まずはミサワ領とランカ領の解放のため本隊を2つに分けて攻め込んだ。
「閣下、各員戦闘配備につきました。ご指示を」
「分かった。砲撃を開始してくれ」
ミサワ国を攻め込む隊の総司令であるマコトが砲撃開始の指示を送る。
10門ある大砲が次々と砲弾を撃ち出し城壁に叩きつける。砲弾が1発当たるだけで壁にヒビが入るほどの威力を持ったものを断続的ではあるが飛ばし続ける。
ヒビの入った壁に続けて食らえば城壁の石は砕けはがれ落ち、徐々に浸食されていく。
ドワーフたちが開発した大砲は戦場の光景を大きく塗りかえた。大砲から発射される砲弾は石でできた城壁を砕くほどの威力があり、従来の城や城壁での籠城は不可能となった。
マコトは以前、大砲の技術を持つオレイカルコス連合との戦いでは「大砲の前では城壁は何の意味も無い」事を知っており、極力防衛戦をしないよう采配を振るっていた。
「ティアラ様! このままでは城壁が持ちません!」
「クッ! やむを得ん! 野戦をするぞ!」
(これでは『引きずり出された』格好になるな……籠城すれば城壁ごと崩され、野戦に出れば相手を倒すには数が足りない……クッ! どうすれば!)
ティアラは苦虫を噛み潰したような渋い顔をして采配を振るう。たとえ自分達が大きく不利であるというのを知っていてもなお。
「閣下、敵部隊が城壁から出て来る模様です」
「そうか。野戦の用意をしとけ!」
マコトは明るい顔をしながら指示を出す。
以前イルバーン防衛戦で勝った経験に加え、今回の戦では首都防衛戦で援護してくれた僧兵たちがいることもあって、特別に不利な要素でもなければ勝てるだろうと踏んでいたのだ。
「グゥア!」
「アガガ! アガ……ガ……ガ……」
弓矢の射程外から聖別された銃弾、並びに聖なる魔法が絶え間なく撃ち出され、次々と不死者の兵隊たちが倒されていく。
射程外からの一方的な攻撃を仮に突破できたとしても、接近戦においてはヴェルガノン帝国軍の天敵とでもいえる僧兵が待ち受けるマコトの軍は、彼らにとって真正面から打ち破るのはほぼ不可能な存在だった。
「ティアラ様! 我が隊の残存兵残り僅かです!」
次々と上がってくる報告は自分たちが苦戦、不利な状況であることを伝える物ばかり。明るいニュースは皆無だ。
「クソッ! ここまでか! 総員に退却命令を。再び山脈を超えて本国まで撤退する!」
彼女は苦渋の決断を下した、いや下さざるを得なかった。
「閣下。すんなり勝てましたね」
「ま、勝った勝ったともてはやされるような戦いってのは危ないものさ。勝って当然、勝てて当たり前の勝利こそ本当の勝利ってやつなのさ」
「この調子だとヴェルガノン帝国とやらも案外大したことなさそうに見えてきましたよ。山脈越えは慌てましたけどそれ以外はどうってことないですね。ま、いわゆる1発屋ってやつですかね?」
「……だといいがな。勝ち戦でも調子に乗るなと伝えてくれ」
「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。連戦連勝続きであるハシバ国軍だがいつそれが崩れるかはわからない。用心するに越したことはないとマコトの感が告げていた。
【次回予告】
ランカ領を奪還する部隊に組み込まれていたクルス。そこで彼は全てのきっかけをなった相手と出会う。
第114話 「かたき討ち」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる