71 / 127
ハシバ国包囲網攻略戦
第71話 イシュタル国攻略戦
しおりを挟む
「冬にイシュタル国を攻める、ですと?」
「ああそうだ。今追撃をかけないとダメだ。翌年の夏まで待つと相手が回復してしまうし、気まぐれなアッシュル国の動向も分からなくなる。
今がチャンスなんだ。今しかけないと包囲網突破まで何年も足踏みしてしまう! 俺にはそんな時間は無い!」
「閣下、いささか慌てすぎではありませんか? 急いては事を仕損じるともいいますし。それに今回はイトリー家やビルスト国の支援も期待できませんよ?」
「無理強いなのはわかってる。でもどうしても今落とさないといけないんだ。頼む。今は耐えてくれ」
「……そこまでおっしゃるのなら拒むわけにじゃいきませんな」
マコトの配下は説得されてしぶしぶ軍を動かすことにした。
新年を祝う祭りも終わり正月気分が抜けてきたころ、マコトは2400の軍を率いてイシュタル国へと出兵する。
「閣下、一応は私も戦いに参加していると言えばそうですが、参謀扱いですか」
「ああそうだ。ディオール、お前もそろそろ年だろ。ハッキリ言ってその身体じゃ戦場には出せん」
「ハァ。仕方ありませんね」
「あのー……閣下? なんで我らがアッシュル国の部隊が最前線なんですか?」
「有能な者には活躍してもらわんとな。それともアレか? 怖気づいたか?」
「う……う……」
イシュタル国の城前からそう遠くはない場所に陣を構えたハシバ国軍の軍議。
そこでアッシュル国の王は、自分は「捨て石」だというのが分かった。後悔するがもう遅い。
簡単に相手を裏切る国は同じように簡単に味方を裏切る尻軽だし、実力も大した事は無い。そう判断されたのだ。
「? 何だ?」
マコトは違和感を感じていた。敵兵が城壁から出てこない。最初から籠城するつもりらしい。
携帯式の望遠鏡で城壁に配備されている敵兵の数を見ても、聞いた話でのイシュタル国の国力の大きさからしてはやけに少ない。
大規模な伏兵でもやるつもりだろうかと思い、ハーピーの偵察部隊と斥候による入念な索敵をしてもハシバ国軍の周りには敵はいなかった。
「兵士はどこに行ったんだ? まぁいい。攻めこめ!」
マコトの合図で破城槌と攻城塔が進軍する。相手の妨害に屈せずに突き進んでいった。
「尻尾を丸めるな! 押せ! 押せ!」
攻城塔からメリルの弟であるアレックス率いるコボルドの部隊が勢いよく飛び出し、城壁を制圧していく。
「アレックスの奴に手柄を独り占めさせるな! 行くぞ! ついてこい!」
オーガのナタルも部下に発破をかけて自らも敵陣向かって大太刀をふるって雑兵を斬り捨て、敵陣に真正面から切り込んでいく。
「ハァアアア……フレア・バリスタ!」
ジャック・オー・ランタンたちが炎の魔力でできた太矢を放つ。その命中精度は精確そのものであり、
先行している破城槌の邪魔にならず、それでいて城門にダメージを与えられる絶妙な位置にピンポイントで着弾する。
城攻めは順調に行われており、しばらくすれば落ちるだろうと予測される。だからこそ、引っかかる。
「……何かあるな。イシュタル国王は何を考えている?」
城壁の上で防衛部隊に指示を飛ばしているのはイシュタル国の王ではなかった。
前情報によれば彼は軍団指揮が下手というわけではなく、むしろ何度か戦闘経験を積んでいて得意な方であるとは聞いている。
ならなぜ戦場に出てこないのか?
「? 何だ、あれ?」
同時刻、ハーピーの偵察隊が奇妙なものを見つける。
イシュタル国とは別の包囲網参加国にイシュタル国の兵を中心とした連合軍が集まっている。その荷物の中に攻城はしごや分解した破城槌があるのが見えた。
「ハシゴに破城槌……? もしかして、首都に攻め込むするつもりか!?」
どうやら侵攻中のハシバ国軍を攻めるつもりはなく、あくまで城攻めをするつもりらしい。偵察隊はマコトのもとへと急いだ。
「閣下! 敵連合軍およそ1400が我が国の首都めがけて進軍を開始しました!」
「! 何!? ……そうか、そう来たか。大丈夫だ。首都はアルバートが守ってる。落とされることはないはずだ。このまま攻撃を続けよ!」
マコトは指示を飛ばす。敵兵の数が正しければそう簡単に守りを崩されるような勢いにはならない。そう確信し城攻めを続けることにした。
【次回予告】
ハシバ国首都を攻め落とすつもりのイシュタル国王。
その一手は吉と出るか、それとも凶と出るか。
第72話 「イシュタル国決死行」
「ああそうだ。今追撃をかけないとダメだ。翌年の夏まで待つと相手が回復してしまうし、気まぐれなアッシュル国の動向も分からなくなる。
今がチャンスなんだ。今しかけないと包囲網突破まで何年も足踏みしてしまう! 俺にはそんな時間は無い!」
「閣下、いささか慌てすぎではありませんか? 急いては事を仕損じるともいいますし。それに今回はイトリー家やビルスト国の支援も期待できませんよ?」
「無理強いなのはわかってる。でもどうしても今落とさないといけないんだ。頼む。今は耐えてくれ」
「……そこまでおっしゃるのなら拒むわけにじゃいきませんな」
マコトの配下は説得されてしぶしぶ軍を動かすことにした。
新年を祝う祭りも終わり正月気分が抜けてきたころ、マコトは2400の軍を率いてイシュタル国へと出兵する。
「閣下、一応は私も戦いに参加していると言えばそうですが、参謀扱いですか」
「ああそうだ。ディオール、お前もそろそろ年だろ。ハッキリ言ってその身体じゃ戦場には出せん」
「ハァ。仕方ありませんね」
「あのー……閣下? なんで我らがアッシュル国の部隊が最前線なんですか?」
「有能な者には活躍してもらわんとな。それともアレか? 怖気づいたか?」
「う……う……」
イシュタル国の城前からそう遠くはない場所に陣を構えたハシバ国軍の軍議。
そこでアッシュル国の王は、自分は「捨て石」だというのが分かった。後悔するがもう遅い。
簡単に相手を裏切る国は同じように簡単に味方を裏切る尻軽だし、実力も大した事は無い。そう判断されたのだ。
「? 何だ?」
マコトは違和感を感じていた。敵兵が城壁から出てこない。最初から籠城するつもりらしい。
携帯式の望遠鏡で城壁に配備されている敵兵の数を見ても、聞いた話でのイシュタル国の国力の大きさからしてはやけに少ない。
大規模な伏兵でもやるつもりだろうかと思い、ハーピーの偵察部隊と斥候による入念な索敵をしてもハシバ国軍の周りには敵はいなかった。
「兵士はどこに行ったんだ? まぁいい。攻めこめ!」
マコトの合図で破城槌と攻城塔が進軍する。相手の妨害に屈せずに突き進んでいった。
「尻尾を丸めるな! 押せ! 押せ!」
攻城塔からメリルの弟であるアレックス率いるコボルドの部隊が勢いよく飛び出し、城壁を制圧していく。
「アレックスの奴に手柄を独り占めさせるな! 行くぞ! ついてこい!」
オーガのナタルも部下に発破をかけて自らも敵陣向かって大太刀をふるって雑兵を斬り捨て、敵陣に真正面から切り込んでいく。
「ハァアアア……フレア・バリスタ!」
ジャック・オー・ランタンたちが炎の魔力でできた太矢を放つ。その命中精度は精確そのものであり、
先行している破城槌の邪魔にならず、それでいて城門にダメージを与えられる絶妙な位置にピンポイントで着弾する。
城攻めは順調に行われており、しばらくすれば落ちるだろうと予測される。だからこそ、引っかかる。
「……何かあるな。イシュタル国王は何を考えている?」
城壁の上で防衛部隊に指示を飛ばしているのはイシュタル国の王ではなかった。
前情報によれば彼は軍団指揮が下手というわけではなく、むしろ何度か戦闘経験を積んでいて得意な方であるとは聞いている。
ならなぜ戦場に出てこないのか?
「? 何だ、あれ?」
同時刻、ハーピーの偵察隊が奇妙なものを見つける。
イシュタル国とは別の包囲網参加国にイシュタル国の兵を中心とした連合軍が集まっている。その荷物の中に攻城はしごや分解した破城槌があるのが見えた。
「ハシゴに破城槌……? もしかして、首都に攻め込むするつもりか!?」
どうやら侵攻中のハシバ国軍を攻めるつもりはなく、あくまで城攻めをするつもりらしい。偵察隊はマコトのもとへと急いだ。
「閣下! 敵連合軍およそ1400が我が国の首都めがけて進軍を開始しました!」
「! 何!? ……そうか、そう来たか。大丈夫だ。首都はアルバートが守ってる。落とされることはないはずだ。このまま攻撃を続けよ!」
マコトは指示を飛ばす。敵兵の数が正しければそう簡単に守りを崩されるような勢いにはならない。そう確信し城攻めを続けることにした。
【次回予告】
ハシバ国首都を攻め落とすつもりのイシュタル国王。
その一手は吉と出るか、それとも凶と出るか。
第72話 「イシュタル国決死行」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】新しい我輩、はじめます。
コル
ファンタジー
魔界を統一した魔王デイルワッツ、次に人間界を支配するために侵攻を開始する。
そんな時、人間界で「天使の剣を抜いたものが勇者となり魔王を討つべし」とお触れが出た。
これを聞いたデイルワッツは自分の魂と魔力を人間の体に移し、自ら剣の破壊と勇者を始末しようと儀式に紛れ込むがなかなか剣を抜けるものは出てこなかった。
見物人にも儀式参加となりデイルワッツの順番が回っきてしまう、逃げるに逃げれなくなってしまい仕方なく剣を掴んだ瞬間に魔力を吸われ剣に宿る精霊エリンが具現化し剣が抜けてしまった。
剣を抜いた事により勇者と認められ魔王討伐の命が下る……がその魔王は自分自身である。
自分が自分を討ちに行く謎の冒険記はじめます。
【完結済】
・スケルトンでも愛してほしい![https://www.alphapolis.co.jp/novel/525653722/331309959]
・私が勇者を追いかける理由。[https://www.alphapolis.co.jp/novel/525653722/132420209]
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さんとのマルチ投稿です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる