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ハシバ国包囲網攻略戦
第65話 グーン国攻略戦
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季節は巡り、初夏。
慰民祭も終わり本格的な夏を迎える頃、マコト率いるハシバ国軍1500がグーン国目がけて進軍をしていた。
「俺達は1500、相手は推定1000前後。数では有利だな。攻撃を開始せよ!」
ハシバ国軍は魚鱗の陣で、ギーシュ率いるグーン国軍は防御に長けた鶴翼の陣形で挑む。
紅い髪が戦場でも目立つシュネー率いる先鋒部隊が進軍するが、ある地点でピタリと止まる。
「あの茂みに火矢を」
部隊長はそう指示する。言われるがまま兵が火矢を放つと……
「あちちちち!」
「熱っ! 熱っ!」
「クソッ! バレてたか!」
敵の伏兵が次々と現れた。
ハーピーの偵察部隊の威力は絶大だ。地上から見ただけでは分からない伏兵も空からなら一発で見破れる。
伏兵が得意だったギーシュだったがマコトの軍がその上を行った。
「閣下! わが軍の伏兵、次々と見破られています! まるでこちら側の戦略が手に取るように分かるようでして……」
「ぬうううう……こうも簡単に伏兵を見破ってくるとは」
ギーシュの顔が徐々に渋いものへと変わっていく。
「とにかく慌てるな! 同盟の援軍が来るまで持ちこたえればいい!」
「閣下! 敵軍、動きが止まりました!」
「何だと?」
伏兵を見破りながら順調に進軍していた兵がぴたりと止まる。何故だ? 何を待っているんだ?
◇◇◇
「ギーシュの野郎、苦戦してるみたいだな。この辺が潮時だな」
ネクはハシバ国の間者からもらった神霊石をとりだし、王の勅命を下す。
「王が命ず! 我が家臣たちよ! いかなる命令であったとしてもオレの言う事を聞け!」
神霊石の力が戦場全体に広がる。
「全部隊に命令! ギーシュの首を討ち取れ!」
ネク隊はきびすを返し、上司であるギーシュの兵に牙を向く。
「ネク様! ギーシュ本隊、後退していきます! いかがなさいますか!?」
「追いかけろ! 奴の首をとるまで前進し続けろ!」
◇◇◇
「閣下! 一大事です! ネクが謀叛を起こしました! わが軍に襲い掛かってきます!」
「慌てるな! 例の場所へ誘導しろ! 全軍後退!」
ギーシュ本隊が退却していく。そこへネク隊が追撃を仕掛ける。距離が徐々に縮まり毒牙がギーシュにかかろうとした瞬間……!!
ネク隊は周りをギーシュの兵で囲まれてしまった。ギーシュ自慢の伏兵が襲い掛かってくる!
「フン! 奴が謀叛を企てているのはお見通しだ! かかれ!」
◇◇◇
ハーピーの偵察兵がマコトに報告する。妙な事が起こっていた。
「閣下! 妙な事に、ネク隊とギーシュ本隊が同士討ちを始めました!」
「ネクには武器と食糧を供給する代わりにギーシュを倒せば領土をやると約束し、ギーシュにはネクが謀叛をくわだている、という噂を流す。こうすればお互いに同士討ちで消耗させることが出来るんだ」
「閣下、ネクへの支援は分かりますがなぜギーシュにまで?」
「ギーシュを暗殺されるのが1番うま味が無い。お互いを消耗させることが何より重要な事なんだ」
対立する者たちをお互い戦わせて戦力を消耗させる。これは孫氏の兵法にも出てくる「離間計」を参考にしたものだ。
◇◇◇
「伏兵だと!? バカな!」
「ネク様! ギーシュ本隊、きびすを返すように前進してきます!」
ネク隊は左右を伏兵に挟まれ、さらに正面からギーシュ本隊が突っ込んでくる! 加えて伏兵部隊が横へ横へ広がることで退路も完全ではないがほぼ塞がれ、包囲されてしまった。
「そんな……そんな、バカな!」
包囲されると心理的な圧迫は正面からぶつかるだけよりも格段に高くなる。ネク隊は王の勅命で無理矢理従わせてはいるものの、嫌々戦わされているのであれば影響は大きく出てくる。総崩れになるのは時間の問題であった。
しばらく戦ったものの、しょせんはぶつかる前から勝敗は決まってる試合。ネク隊は総崩れを起こし、将である彼はギーシュの元に引きずり出されてしまった。
「クソッ! クソッ! こんなところで!」
「もういい。貴様を雇った私が愚かだった。修正せねばなるまい。首をはねよ!」
その場で刑は執行された。
「閣下! ハシバ国軍が再び行軍を開始しました! いかがいたしますか!?」
「これでわが軍は800に対して相手は1500か! クソッ! これでは勝負にならんぞ! 籠城して援軍を待つ! 総員、退却しろ!」
マコトが仕掛けた罠にまんまとハマってしまったギーシュは頼みの綱の援軍を待つことにした。
【次回予告】
グーン国頼みの綱である包囲網連合からの援軍。
それに立ちふさがるは鳥の王にして、獣の王。
第66話 「衝突」
慰民祭も終わり本格的な夏を迎える頃、マコト率いるハシバ国軍1500がグーン国目がけて進軍をしていた。
「俺達は1500、相手は推定1000前後。数では有利だな。攻撃を開始せよ!」
ハシバ国軍は魚鱗の陣で、ギーシュ率いるグーン国軍は防御に長けた鶴翼の陣形で挑む。
紅い髪が戦場でも目立つシュネー率いる先鋒部隊が進軍するが、ある地点でピタリと止まる。
「あの茂みに火矢を」
部隊長はそう指示する。言われるがまま兵が火矢を放つと……
「あちちちち!」
「熱っ! 熱っ!」
「クソッ! バレてたか!」
敵の伏兵が次々と現れた。
ハーピーの偵察部隊の威力は絶大だ。地上から見ただけでは分からない伏兵も空からなら一発で見破れる。
伏兵が得意だったギーシュだったがマコトの軍がその上を行った。
「閣下! わが軍の伏兵、次々と見破られています! まるでこちら側の戦略が手に取るように分かるようでして……」
「ぬうううう……こうも簡単に伏兵を見破ってくるとは」
ギーシュの顔が徐々に渋いものへと変わっていく。
「とにかく慌てるな! 同盟の援軍が来るまで持ちこたえればいい!」
「閣下! 敵軍、動きが止まりました!」
「何だと?」
伏兵を見破りながら順調に進軍していた兵がぴたりと止まる。何故だ? 何を待っているんだ?
◇◇◇
「ギーシュの野郎、苦戦してるみたいだな。この辺が潮時だな」
ネクはハシバ国の間者からもらった神霊石をとりだし、王の勅命を下す。
「王が命ず! 我が家臣たちよ! いかなる命令であったとしてもオレの言う事を聞け!」
神霊石の力が戦場全体に広がる。
「全部隊に命令! ギーシュの首を討ち取れ!」
ネク隊はきびすを返し、上司であるギーシュの兵に牙を向く。
「ネク様! ギーシュ本隊、後退していきます! いかがなさいますか!?」
「追いかけろ! 奴の首をとるまで前進し続けろ!」
◇◇◇
「閣下! 一大事です! ネクが謀叛を起こしました! わが軍に襲い掛かってきます!」
「慌てるな! 例の場所へ誘導しろ! 全軍後退!」
ギーシュ本隊が退却していく。そこへネク隊が追撃を仕掛ける。距離が徐々に縮まり毒牙がギーシュにかかろうとした瞬間……!!
ネク隊は周りをギーシュの兵で囲まれてしまった。ギーシュ自慢の伏兵が襲い掛かってくる!
「フン! 奴が謀叛を企てているのはお見通しだ! かかれ!」
◇◇◇
ハーピーの偵察兵がマコトに報告する。妙な事が起こっていた。
「閣下! 妙な事に、ネク隊とギーシュ本隊が同士討ちを始めました!」
「ネクには武器と食糧を供給する代わりにギーシュを倒せば領土をやると約束し、ギーシュにはネクが謀叛をくわだている、という噂を流す。こうすればお互いに同士討ちで消耗させることが出来るんだ」
「閣下、ネクへの支援は分かりますがなぜギーシュにまで?」
「ギーシュを暗殺されるのが1番うま味が無い。お互いを消耗させることが何より重要な事なんだ」
対立する者たちをお互い戦わせて戦力を消耗させる。これは孫氏の兵法にも出てくる「離間計」を参考にしたものだ。
◇◇◇
「伏兵だと!? バカな!」
「ネク様! ギーシュ本隊、きびすを返すように前進してきます!」
ネク隊は左右を伏兵に挟まれ、さらに正面からギーシュ本隊が突っ込んでくる! 加えて伏兵部隊が横へ横へ広がることで退路も完全ではないがほぼ塞がれ、包囲されてしまった。
「そんな……そんな、バカな!」
包囲されると心理的な圧迫は正面からぶつかるだけよりも格段に高くなる。ネク隊は王の勅命で無理矢理従わせてはいるものの、嫌々戦わされているのであれば影響は大きく出てくる。総崩れになるのは時間の問題であった。
しばらく戦ったものの、しょせんはぶつかる前から勝敗は決まってる試合。ネク隊は総崩れを起こし、将である彼はギーシュの元に引きずり出されてしまった。
「クソッ! クソッ! こんなところで!」
「もういい。貴様を雇った私が愚かだった。修正せねばなるまい。首をはねよ!」
その場で刑は執行された。
「閣下! ハシバ国軍が再び行軍を開始しました! いかがいたしますか!?」
「これでわが軍は800に対して相手は1500か! クソッ! これでは勝負にならんぞ! 籠城して援軍を待つ! 総員、退却しろ!」
マコトが仕掛けた罠にまんまとハマってしまったギーシュは頼みの綱の援軍を待つことにした。
【次回予告】
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