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アレンシア戦役
第31話 マコト 出陣
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季節は過ぎ去り、暖かいというよりは少し暑い位の季節がやってこようとしていた。マコトの前に重要な情報を持った兵が2人、報告のためにやってきた。
「閣下、ミサワ領内から動員できる兵の数を報告いたします」
「閣下、ランカ領内で徴兵出来る数が把握できたのでご報告いたします」
「よし、分かった。準備が整い次第アレンシア国へと進軍する! シューヴァルにも連絡して傭兵の手配を頼むと伝えてくれ」
「ハッ!」
「戦争」と言う言葉に季語があるとしたら多分夏だろう。夏は比較的農作業に手がかからず、なおかつ冬と違って活動しやすい時期だから戦争は夏を中心に行われるからだ。マコトは召集令を出し、兵を集める。
出兵当日の朝
「ゴブー先生、出陣なさるんですって?」
「先生、帰ってきますよね?」
「大丈夫、弓の腕には自信がある。必ず帰って来るさ。戦果を持ってな」
「先生がんばれー!」
「先生ー! 負けるなー!」
「先生。これ、持ってってください。お守りです」
ゴブリンの少女がゴブーに獣の牙に糸を通したネックレスを渡す。
「ありがとう。必ず勝ってくるからな。シャーレ」
教え子達の声援を受けつつ、ゴブーは支給されたクロスボウを持って戦場へと向かっていく。
お虎はジェイクのつてをたどってこの国にやってきた男のオーガと話をしていた。
「聞いたぜ。お虎もこの戦争に参加するんだってな?」
「ああ。ナタルも出るんだろ? お互い戦果出して帰ろうな」
「な、なぁお虎。この戦争で手柄を立てて出世したら俺……あ、いや何でもねえ。忘れてくれ」
「その話は無事に帰ってから聞きたいな。とにかく無茶しないで生き残ること。手柄を焦って死ぬのだけは勘弁してよね。いいね?」
「あ、ああ。分かったよ」
自宅で出兵準備をしていたエルフェンが愛する妻や子供たちとしばしの別れを告げた。
「あなた、出陣なさるのですね。どうかお気をつけて」
「アリシア、もし万が一のことがあったら、その際はエルルとアイーシャを頼んだぞ」
「あなた! 縁起でもないこと言わないで!」
「もちろん生きて帰ってくるつもりだ。でも万が一のこともある。その際は……頼んだ」
「わかりました。でも絶対帰ってきてくださいね」
「パパ、いってらっしゃい」
「かえってきね、パパ」
妻と子供たちは夫あるいは父親を送り出していった。
「マコトさんよ、ついに行っちまうんだな。俺は無事を祈ることしか出来ねえけどちゃんと帰ってこいよ。雇い主が死んでまーた流浪の身になるのは勘弁な」
「大丈夫だ。ちゃんと帰ってくるつもりだ。留守の間は頼んだぞ」
「おう。任せとけ。悪いようにはしないぜ」
マコトはジェイクや他の部下に国を任せ、出陣式を執り行う。
「今回、諸君に集まってもらったのは他でもない、重税と圧政を敷いているアレンシア国王、来兎を討ち、苦しめられている民を救うためだ。
しかも彼らは都市国家の者にすら牙をむく狂犬だ。勢いが付いたら更なる被害が増えるのは確実だ。その前に叩いておかねばらならない!
そのために諸君の手を借りたい。そして共に勝利を手土産に凱旋しようではないか!」
マコトのスピーチは終わった。いよいよ兵士たちが出陣する。
「国王陛下の、御出陣! 国王陛下の、御出陣!」
先導する兵が厳粛なムードを出しつつ力強く叫ぶ。
女たちは父親や夫や息子、兄弟たちが戦地へと赴くさまを無事を祈りながら見送っていた。
出陣してから1日が経ち、互いの軍は元リシア国領付近の比較的開けた場所に陣を構えた。互いに挑発し合っているだけで動き出す気配は無い。
マコトは武将を集めて会議を開いていた。
「ディオール、軍の状況は?」
「我が軍が2000前後に対し相手は2200前後と思われます。数では若干不利ですな……仮にお互い相手が人間だとしたらの場合ですが」
「陣形で何とかならんのか?」
「我等はミサワ国やランカ国を併合して間もないですし、3分の1近くが傭兵ですから比較的連絡の取りやすい魚鱗にせざるを得ませんな。相手は横陣で来るらしいので、いかに戦線を突破するかがカギですぞ」
マコトの軍は総数の3分の1近くが傭兵なのに加えて、取り込んだレジスタンスやイトリー家支持派は戦いの素人が多く、連絡の比較的取りやすい魚鱗でないとまともに動けないため、この陣形で行かざるを得ないという事情があった。
「……というわけだ。ディオールが先陣を切る。その後方にエルフェンとジャックの遠距離攻撃部隊、その右翼をウラカン、左翼をシュネーが抑えてくれ。何か意見があるやつはいるか?」
「マコト様! なぜ私たちは後方なんですか!? これでは戦えませんよ!」
メリルが声を荒げる。彼女とアレックスは一応武将として戦場に出ることになった。しかし兵の数は少なく、その位置は本隊であるマコトの部隊周辺という後方で安全である代わりに活躍の機会も少なく、特に豚王と一戦を交える可能性はほぼ無い場所で、そこに不満を抱いていた。
「お前たち姉弟は本隊を別働隊などに狙われた際守るという重要な役目を与えている。信頼のある者にしか任せられない場所だぞ?」
「……」
メリルは不満げな顔をしながらも渋々納得してくれた。
「総員に明日総攻撃をかけると伝えてくれ。伝令兵、明日早朝にアレンシア国軍にメッセージを伝えてくれ」
「閣下、ミサワ領内から動員できる兵の数を報告いたします」
「閣下、ランカ領内で徴兵出来る数が把握できたのでご報告いたします」
「よし、分かった。準備が整い次第アレンシア国へと進軍する! シューヴァルにも連絡して傭兵の手配を頼むと伝えてくれ」
「ハッ!」
「戦争」と言う言葉に季語があるとしたら多分夏だろう。夏は比較的農作業に手がかからず、なおかつ冬と違って活動しやすい時期だから戦争は夏を中心に行われるからだ。マコトは召集令を出し、兵を集める。
出兵当日の朝
「ゴブー先生、出陣なさるんですって?」
「先生、帰ってきますよね?」
「大丈夫、弓の腕には自信がある。必ず帰って来るさ。戦果を持ってな」
「先生がんばれー!」
「先生ー! 負けるなー!」
「先生。これ、持ってってください。お守りです」
ゴブリンの少女がゴブーに獣の牙に糸を通したネックレスを渡す。
「ありがとう。必ず勝ってくるからな。シャーレ」
教え子達の声援を受けつつ、ゴブーは支給されたクロスボウを持って戦場へと向かっていく。
お虎はジェイクのつてをたどってこの国にやってきた男のオーガと話をしていた。
「聞いたぜ。お虎もこの戦争に参加するんだってな?」
「ああ。ナタルも出るんだろ? お互い戦果出して帰ろうな」
「な、なぁお虎。この戦争で手柄を立てて出世したら俺……あ、いや何でもねえ。忘れてくれ」
「その話は無事に帰ってから聞きたいな。とにかく無茶しないで生き残ること。手柄を焦って死ぬのだけは勘弁してよね。いいね?」
「あ、ああ。分かったよ」
自宅で出兵準備をしていたエルフェンが愛する妻や子供たちとしばしの別れを告げた。
「あなた、出陣なさるのですね。どうかお気をつけて」
「アリシア、もし万が一のことがあったら、その際はエルルとアイーシャを頼んだぞ」
「あなた! 縁起でもないこと言わないで!」
「もちろん生きて帰ってくるつもりだ。でも万が一のこともある。その際は……頼んだ」
「わかりました。でも絶対帰ってきてくださいね」
「パパ、いってらっしゃい」
「かえってきね、パパ」
妻と子供たちは夫あるいは父親を送り出していった。
「マコトさんよ、ついに行っちまうんだな。俺は無事を祈ることしか出来ねえけどちゃんと帰ってこいよ。雇い主が死んでまーた流浪の身になるのは勘弁な」
「大丈夫だ。ちゃんと帰ってくるつもりだ。留守の間は頼んだぞ」
「おう。任せとけ。悪いようにはしないぜ」
マコトはジェイクや他の部下に国を任せ、出陣式を執り行う。
「今回、諸君に集まってもらったのは他でもない、重税と圧政を敷いているアレンシア国王、来兎を討ち、苦しめられている民を救うためだ。
しかも彼らは都市国家の者にすら牙をむく狂犬だ。勢いが付いたら更なる被害が増えるのは確実だ。その前に叩いておかねばらならない!
そのために諸君の手を借りたい。そして共に勝利を手土産に凱旋しようではないか!」
マコトのスピーチは終わった。いよいよ兵士たちが出陣する。
「国王陛下の、御出陣! 国王陛下の、御出陣!」
先導する兵が厳粛なムードを出しつつ力強く叫ぶ。
女たちは父親や夫や息子、兄弟たちが戦地へと赴くさまを無事を祈りながら見送っていた。
出陣してから1日が経ち、互いの軍は元リシア国領付近の比較的開けた場所に陣を構えた。互いに挑発し合っているだけで動き出す気配は無い。
マコトは武将を集めて会議を開いていた。
「ディオール、軍の状況は?」
「我が軍が2000前後に対し相手は2200前後と思われます。数では若干不利ですな……仮にお互い相手が人間だとしたらの場合ですが」
「陣形で何とかならんのか?」
「我等はミサワ国やランカ国を併合して間もないですし、3分の1近くが傭兵ですから比較的連絡の取りやすい魚鱗にせざるを得ませんな。相手は横陣で来るらしいので、いかに戦線を突破するかがカギですぞ」
マコトの軍は総数の3分の1近くが傭兵なのに加えて、取り込んだレジスタンスやイトリー家支持派は戦いの素人が多く、連絡の比較的取りやすい魚鱗でないとまともに動けないため、この陣形で行かざるを得ないという事情があった。
「……というわけだ。ディオールが先陣を切る。その後方にエルフェンとジャックの遠距離攻撃部隊、その右翼をウラカン、左翼をシュネーが抑えてくれ。何か意見があるやつはいるか?」
「マコト様! なぜ私たちは後方なんですか!? これでは戦えませんよ!」
メリルが声を荒げる。彼女とアレックスは一応武将として戦場に出ることになった。しかし兵の数は少なく、その位置は本隊であるマコトの部隊周辺という後方で安全である代わりに活躍の機会も少なく、特に豚王と一戦を交える可能性はほぼ無い場所で、そこに不満を抱いていた。
「お前たち姉弟は本隊を別働隊などに狙われた際守るという重要な役目を与えている。信頼のある者にしか任せられない場所だぞ?」
「……」
メリルは不満げな顔をしながらも渋々納得してくれた。
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