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第4話 罪悪感皆無のクズ

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 ナーシェンの捜索を始めた俺だが、手がかりらしい手がかりは無いのでとりあえず酒場によって情報収集だ。

「ナーシェンさんですか? ついさっき見ましたけど」

「!? 何!? どこだ! どこにいる!?」

「えっと……あ! いたいた! あそこです!」

 俺が酒場の主人が指さした方を見ると、幼い頃から見ていた顔であるナーシェンの物があった。



「!! ウワァオ! 会いたかったぜ無二の親友!」

 ナーシェンの野郎は俺を見るやそう言って突然抱きついてくる。

「放せ! 野郎に抱きつかれても嬉しくねえんだよっ!」

 俺は彼を無理やり引きはがす。改めてみれば、少しやつれたような気がする。



「……イーリスとライムの三角関係か?」

「ああそうだ。知ってるなら話は早い。なぁ頼むよ。お前も手助けしてくれないか? 誰だって目の前に最高の女が1夜限りの関係だって言えば、恋人同士になりたくなるよな? 揺れ動くよな? なぁ、そうだろ?」

「俺を追放しといてよくもまぁそんな被害者面でいられるな。お前が独り身ってなら分かるがイーリスと将来を誓い合った仲だっていうのはよーく知ってるぞ? それを裏切ったテメェが100%悪いに決まってる」

「何度も確認したんだぞ! 何度も何度も!『一夜限りの関係だ』って念に念を押してたんだぞ! それを事が済んだらライムの奴が「私たち2人の幸せな将来が見えちゃったんです」って誘ってきたんだぞ!?」



 目の前のクズ野郎は口だけは達者だ。出てくるのは独りよがりな言い訳ばかり、いや言い訳「のみ」だ。

「それが事実だったとしてもそれでイーリスが許してくれると思うのか? テメェがいた種だ、責任もってテメェが自分自身の手で刈り取ってくれ。どうなろうが俺は知ったこっちゃねぇ!」

 そのセリフや態度からして反省している様子がこれっぽちも感じられなかった。
 これで心底反省しているのなら「昔のよしみ」って奴で少しは協力してやってもいいとは思っていたんだが、そういうわけにもいかなさそうだ。



「なぁ頼むよ。俺だって正直お前の事は追放したくなかった。ただライムが気に入らないって言うから追い出しただけなんだ。全部ライムが悪いんだ」

「そうやって自分は被害者であって一切責任を取るつもりも必要もない、ってか? 大した奴だよお前は。ツラの皮が盾役タンクの装甲並みに分厚いな。
 今回の浮気はお前にとってもイーリスにとっても幸運だったな。良かったな浮気程度で済んで。これが結婚して子供が産まれた後にやらかしたら何の罪もない子供が『まきぞえ』になる所だったぜ?」

『若く美しい女が好きな男は、加齢した妻を捨て、新たに若く美しい女を求める』

 ロクデナシのクソヤロウが古今東西関わらずにやらかす定番中の定番行為。同情する余地など、耳かき一杯たりとも無い。



「そんなつれないこと言わなくたっていいだろ! 俺だって一生懸命誘惑に耐えた! でも一瞬、ほんの一瞬なんだ!
 男たるもの迫られればほんの、ほんの耳かき一杯くらいの一瞬でもうまくいくかもって思っちまうよな? なぁ? そういうもんだろ!?」

「恋人がいるなら一瞬たりともスキを見せずに油断するんじゃねえよ!
 ……っていうか、なんだお前。さっきからずっと『俺は被害者だ』って言ってばっかりだよな? 罪悪感とか加害者意識は無いわけ?」

「でも本当の事じゃないか! 俺は本当に誘惑されただけで何も悪いことは……」

「口を開けば言い訳ばかり! 何で『ごめんなさい』の一言が出てこねえんだテメェは!?」

 反省の色も態度もカケラたりとも示さない大バカ野郎を見てイラついた俺はテーブルをバン! と叩きながら怒声を浴びせる。大声とでかい音を出したせいか店内はシン……と静まり返り、周りにいる者全員が俺たち2人を見ている。
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