60 / 169
『領地経営』編
第60話『資源』
しおりを挟む山に入り、何班かに別れて探索を開始する。
薄暗い洞窟を俺の光魔法で照らしながら奥に進んでいく。
ひんやりとした空気。
何かしら資源があればいいんだが。
「うぎゃあ、転んだっぺ!」
「なにやってんだぁ。ほら、手を貸してやるだよ」
「おお、すまんさ。……って、あれ? なんかこの地面しょっぱいだよ?」
手に付着した砂を舐めた騎士の言葉が耳に入ってくる。
しょっぱい……? もしや! シュパンッ!
近くの岩を適当に斬り裂く。
断面から透明感のあるピンク色がキラキラと現れた。
指で破片をすくって舐めとると、
「ペロッ……やはり岩塩か!」
よく見れば洞窟の天井、壁、地面すべてが塩で覆われていた。
こいつはすげえぞ。
「おい、ジャードを呼んで来い! それから――」
「りょ、領主様ぁ! 大変だぁ! ちょっと来てくんろぉ!」
「お前は他の山に行かせた別動隊! どうしたぁ!?」
ズダダダダ。隣の山に移動。
「ジロー様、この石についているコレは銀じゃないでしょうか?」
「ほんとだ……銀だ……!」
テンションが上がって隣にいるベルナデットの頭をなでなで。
尻尾もふさふさぁ~。
「りょ、領主様ァ!」
「お前はさらに他のやつに任せたどっかの別動隊の!」
「大変ですぅ!」
「一体どうしたぁ!?」
ひょっとして温泉が見つかったのか!?
「あっ、ジロー様ぁ……」
ベルナデットを残して高速移動。
シュバババッ!
到着。
ええっ、温泉じゃないの?
そんなこと最初から言ってない?
そうだったね……。
「こいつは金……なのか?」
「ふふふ、きらきらだっぺよ……」
報告に来た女の騎士がニマニマ笑ってる。
とりあえず、ネコババすんなよと言っておいた。
「領主様ぁ!」
「なんだぁ!?」
そして――
複数の山を調査した結果……。
俺たちはいくつもの鉱床を発見することができた。
温泉は見つからなかったけど。
くそうなぜだ、温泉は金鉱と関係があるって聞いたのに……。
「たった一日でこの成果とは、大したものですね」
騎士に呼ばせたジャードが舌を巻く。
「のはは! せやろ? 俺ってすごいやろ?」
「……はい」
ジャード曰く、ここまで多くの資源が眠る領地は他に聞いたことがないという。
これで収入も安泰だな! ガッポガッポいけるぜ!
ニコルコを富ませる道筋が見えてきた。
探せばもっといろいろあるかもしれん。
そう、温泉だってきっとあるはず……。
俺はまだ諦めちゃいない。
明日も探検隊だ!
今日も今日とて魔境へ向かう。
整備した道は通りやすいな。
木がなくなった場所にはなぜか魔物も寄ってこないし。
これなら資源を掘り起こす段階になっても安全に作業が進められそうだ。
俺のうろ覚えな知識によると、金鉱のある場所には温泉がある可能性が高い。
地熱水がアレで熱によって地中の金が混じるからうんぬんかんぬん……。
詳しいことは覚えてない。
とにかく、金鉱の近くで温泉を見つけやすいのは間違いないのだ。
頑張って探してみよう。
俺は連れてきた騎士十五名に厳命する。
今日は金鉱付近を捜索して温泉を見つけろ!
温泉を知らない?
地面から熱い湯が沸いてるヤツだよ!
「ヒョロイカ卿、その温泉というのを見つけてどうするんですか?」
今日は初めから着いてきたジャードが訊いてくる。
「ん? ジャードも知らないの? 地面から湧くお湯にお風呂として浸かるんだよ」
「それは何か意味があるのでしょうか?」
「効能とかいろいろあってさ。肩こりとか腰痛に効くんだ」
「大聖国にある聖水を用いた療養法に似てますね……。しかし、そんなものよりも今は見つけた鉱山をどのように運用していくかのほうが重要だと思いますが。まだ発見しただけで正確な測量は終わっていないでしょう?」
バカ野郎! 大事だよ、温泉は。経済効果がスゴイんだかんな!
断じて俺が入りだけじゃない。ホントだぞ?
「はあ……ヒョロイカ卿がしたいなら好きにすればよいのでは? 鉱山のほうは私が見ておきます。我々の邪魔をしない限りは自由にどうぞ」
ジャードは溜息を吐くと、騎士を三人ほど連れて鉱山のなかに入っていった。
さり気に舐めた態度を取られた気もしないではない。
だが、面倒くさそうなことを引き受けてくれたから不問にしておこう。
0
お気に入りに追加
4,222
あなたにおすすめの小説
婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる