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『勇者伝』編

第136話『すべては○ンポポが優先されるのか』

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◇◇◇◇◇



 騎士団の訓練場に俺たちは来ていた。
 今日の訓練は終わっているそうなのでスペースは空いている。
 ただ、自主練で剣を振ったり打ち合ったりしている騎士は何人か残っていた。

 うんうん、個々の意識が高くなっているようでなにより。


「ジロー様、勇者を名乗る不届き者が屋敷に押しかけてきたと聞きましたが」
「面倒なことになってるなら加勢するわよ」
「ヒロオカ殿、勇者同士で決闘すると耳にしたぞ?」


 ベルナデット、デルフィーヌ、エレンたちがやってきた。
 ちょっとした騒ぎがあったと知って来てくれたっぽい。


「おおおっ!? なぁーんだ、あんたもこっちでカワイイ女の子たち集めてヨロシクやってんじゃーん!」

 デルフィーヌたちの姿を見ると、リクはニヤニヤしながらススススっと身を寄せてきた。

 そして馴れ馴れしく肘で突いてくる。

「このこのー。兄さんも隅に置けませんなぁ」

「…………」

 こいつ、絶対的に何か勘違いしてるな……。

 目が同類に向けるものになっている。

「けど、兄さんとこの女の子たち、みんな条例違反レベルの若さじゃね? JKくらい? ピチピチで羨ましい……あ、そうだ! 今度、互いの相手を交換してさぁ――」

「…………」

 こいつ、勝負がどうとかって言ってたのどうしたんだよ……。
 すべてはチン○ポが優先されるのか。
 ちなみにベルナデットは見た目こそ成長しているが、実年齢は幼女ですので。

「はあ? なんなの!? わたしたちはジローとそんな関係じゃないわよ! 失礼ねっ!」

 女性陣同士でも似たような会話がされたらしい。

 デルフィーヌが目を吊り上げて激昂していた。


「アララ? 貴女たちは勇者様の側にいるのにお情けを頂いていないの? 女としての魅力が足りてないんじゃない?」

「仕方ないわよ、インバーテッド。だって、小便臭そうな小娘ばっかりだもの。まともな大人の男ならその気が起きなくて当然だと思うわ?」


「なんですってぇ……!」「しょ、小便……?」「………………」


 見下した感じでデルフィーヌたちを嘲笑うリクパーティの女たち。
 いや、お前らんとこの勇者はバッチリその気起きてたけど……?
 ピチピチで羨ましいとか申しておりましたが……。

 ちなみに、もう一人のメンバーである紺髪の美少女は仲間がケンカを売ってる横でそっぽを向いて我関せずを貫いていた。


「あっ! もしかして兄さんって独占欲強めな感じ? 共有するのは無理ってこと?」


 リクはまだその話を続けてるのかと言いたくなるクソムーブ。
 独占欲とか共有とか、ワケのわからんことを……。
 こいつの言っていることは俺にとってもう一つの異世界であった。






 険悪になってるデルフィーヌたち女性陣サイド。

 自分のパーティメンバーが煽って引き起こした諍いを諫めるつもりもなく、ヤリチン世界の常識を共通の認識みたいに話してくるリク。

 すごく帰りたくて頭を悩ませていると、


「おおい、ドランスフィールド。転移魔法陣の解析がいいところだったのだから戻ってきて欲しいのだよ? ちょっと様子を見てくるだけではなかったのかだよ……?」


 エルラルキが、メガネのズレを直しながら怠そうにフラフラと訓練場に入ってきた。

 彼女とデルフィーヌは略奪召喚の魔法陣に加えて、フランク君ら第十騎士団が潜入に使った転移魔法陣の研究まですることになったため、最近は特に大忙しということだった。

 エルラルキのピンクブロンドの髪もボサボサである。

 いや、彼女はアレがデフォルトだっけ……。


「兄さーん、あの子、誰? なんか、メガネ外したら美人な予感するんだけど」
 

 リクがエルラルキを目敏く発見して訊いてくる。

 ピリピリした会話には無反応でも、新しい女の出現には素早く対応する都合の良さ。


「彼女は帝国から来てもらった魔道士だよ。領地の子供たちに魔法を教えてくれたりしてるんだ」


 研究の役割については伏せて説明する。
 そこまで話していい相手とは思えないからな。
 本音を言えば、勇者として認知されてるこいつとは協力関係を築きたいんだが……。


「おおっ、すげえ! 陰キャな女の子まで揃えてんの!? 獣耳の子もいるし、多種多様なハーレムっていかにも権力者ぽいっすね~! マジリスペクトだわ~! オレも貴族になりたくなってきたっす!」


 リクの言葉遣いが若干変化して、微妙に敬語らしきものが混じり始めた。

 どうやら彼にとって、バリエーション豊かなハーレムを形成している豪胆さは年長者として敬いたくなるポイントの一つだったらしい。

 そんなことでリスペクトしないで欲しいし、そもそも完全なる誤解なんだけど。


「まあ、女の子たちとのお楽しみについては一汗流した後でじっくり語り合いましょ。とりあえず、今は先にギルドの人にオレのほうが兄さんより実力あるってわかってもらわないといけないんで!」


 スチャッと剣を構えるリク。
 語り合わねえよ!
 勝手に脱線して、勝手に本題へ戻していく……。

 こいつの綿毛みたいな性分は死んでも直らないんだろうな。




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