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第二章

王都と門番1『種族差別ですか? このコノヤロー。』

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 周囲はおびただしい量の水で浸されていた。

 エルーシャと同時に放った俺の『ウォーターバレット』は力を込め過ぎたのか、とてつもない破壊力で盗賊団を一掃した。

 岩場は崩壊し、吹き飛ばされて岩に叩きつけられた盗賊たちは肉片となった。崩れた岩の下敷きになって潰された者もいた。

 運よく生き残った連中も強く体を打ち付けて全員気絶していた。

 威力を理解せず放った俺の魔法は一瞬で場に惨劇をもたらしてしまった。

「マジか……」

 こちらの消耗がゼロで制圧できたのはよかったのだろうが、これはやりすぎたな。女神様からもらった、このちょっとばかしの魔法の才能とやらはピーキーすぎる。うっかり身内を巻き込んだら洒落にならんぞ。外に出てから里で魔法の勉強を疎かにしていたツケがちょくちょく回ってきている。

「すごいね、グレンっち! 身体強化の魔法もすごかったけど、属性魔法も規格外だよッ! さすがエルフ! あれってどうやったの!?」

「お、おう……」

 エルーシャが俺の腕を掴んで興奮気味に揺さ振ってくる。なんだかんだ、魔法についての探求心もあるんだな。

 彼女は食い気だけで構成された人間じゃなかったようだ。

 つか、木を薙ぎ倒したのは魔法の力だと思われてるのか。

 ルドルフも勘違いしてたっけ。

 規格外な現象は大抵エルフの魔法だからで通る世界。ちょろいぜ。エルフでよかった。おかげで心置きなくトラックができる。同族には通用しないだろうけど。王都でジンジャーに会ったら余計なことを言わないよう口止めしとこう。

「これで肉体派か……エルフの魔法は底が知れねえぜ」
「おかげで楽ができましたが、とてつもないですね……」 

 戦わずに済んだジェロムとサラスは半ば引いていた。
 おおう、エルフへの誤解を生み出しちまった。すまん、同胞たちよ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「おら、キリキリ歩け!」

 ジェロムに叩きつけられ、ドナドナされていく盗賊たち。彼らは近くの村に連れていかれた後、犯罪奴隷にされるそうだ。

 縄で縛られ、合流してきたエルーシャの家の騎士たちにも囲まれた状態ではもはや逃げ出すことは敵わないだろう。

 ちなみに運よく助かった生存者は三分の一ほど。しかし、最終的に連行することになったのはたったの三人だけだった。

 二、三人は知らないうちにどこかへ消えていた。どうやら少し目を離した隙に逃げてしまったらしい。

 ジェロムは不覚だと非常に悔しがっていた。

 まあ、仕方ないさ。

 あっちが一枚上手だったんだ。

 ところで、満足そうな顔で腹を撫でているリュキアが近くにいたのだが……そんなわけないよな。




「化け物をこっちに寄せないでくれぇ――ッ!」
「ひいぃぃいぃ……」
「かあちゃん助けてぇ!」

 俺とリュキアが近づくと盗賊どもは恥も外聞もなく泣き喚きだした。

 化け物とは失敬なやつらだ。

 種族差別ですか? このコノヤロー。エルフ舐めんなよ。

 いたいけな幼女もいるのになんて言い草だ。

「じぃー」

「どうした、リュキア?」

 指を口に咥えながら盗賊たちを見つめるリュキアに声をかける。

「これ、エルたちにあげちゃうの?」

 これって完全にモノ扱いだな。

 エルってのはエルーシャか? 

 短期間でかなり打ち解けたようだ。やはり精神年齢が……。

「そりゃそうだろ」

 こんな物騒で下劣な輩と俺はドライブしたくない。背中に乗せたくない。

 引きずっても行きたくない。

「もったいない……」

 何がもったいないのだろうか。子供の考えることはイマイチわからない。

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