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第23話『帝国の脅威となり得る存在』
しおりを挟む「なぜ俺に正体を明かしてそんな話をするんだ?」
普通に考えて侵略先の相手にバラすのは愚策だろう。まあ、俺がこのことを国の偉い人に伝えたところで信じてもらえるわけないし、こんな異次元空間を作り出せる文明に地球が太刀打ちできるとも思えない。
あ、そっか。
よく考えたら俺一人に話したところで何か変わるわけじゃないんだな……。
「私はこの惑星を数年に渡って観測していたが、これまで帝国の脅威となり得る対象は確認されていなかった。この惑星の侵略難易度はGランクで安定していた。しかし、一か月前、この星に突如として帝国の脅威となり得る存在が現れた……」
「脅威となり得る存在?」
「そう――貴方、新庄玲央のこと……」
江入さんは俺を指さした。
これ、人に指をさしちゃいけません!
「俺? 俺はただの高校生だよ?」
「とぼけるのは無駄、我々は独自のツールを使って力のある存在を検知することができる」
「…………」
「先日、貴方が個体別脅威Cランクの結城優紗を容易くねじ伏せたことは把握している」
あれを見られてたのか……。
じゃあ言い逃れはできないな。
結城優紗がチート的な能力を持ってるのも知ってるっぽいし。
どうやら彼女の調査能力は本物のようだ。
「貴方はこの星で銀河惑星連盟大帝国に敗北をもたらしかねない唯一の人物。貴方の存在を認識してから、私はこうして二人だけで対話できる機会を窺っていた」
そういえば脅威度の最高ランクがいくつかは知らないけどさ?
仮にもチートを授けられた勇者がCって低くね?
いくらなんでもCが最高ランクってわけはないはずだし。
俺だけが勝利の妨げになると捉えているって相当な自信だよな。
銀河なんとか帝国は勇者すらも容易に抑え込める戦力を備えているということか?
分析が正確に行われているのならば、銀河なんとか帝国は俺が率いていた魔王軍と同等かそれ以上の勢力があるのかもしれない。
「俺と対話して、どうするつもりだったんだ?」
「帝国はいかに未開で格下の惑星であろうと確実な勝利のために最善を尽くす。今回、本星は貴方との戦闘を回避して帝国側に取り込むことが最も効率的と判断した。貴方が帝国の軍門に下るのならば、帝国は地球を占領下にした後、貴方にこの星の統治を委任してもよいと条件を提示している」
あ、これって協力するなら世界の半分をくれてやるとかそういうやつだ!
貰えるのは半分じゃなくて全部みたいだけど。
俺を地球の王にしてやるよってわけか……。
石油王より遥か上の存在である。
しゅごいスケールだ。
いや、待て……。
冷静になってよく考えろ。
統治を委任って、つまり代官みたいなことをやっていいよって話じゃないか?
それって中間管理職じゃん!
そういうのって、どうせ本星とかいうところに決まった年貢を納めないとダメなんでしょ?
上が命令してきたら言うこと聞かないといけないポジションなんでしょ?
「もちろん、この惑星で得た収益の何割かは本星に税として納めることになる。また、戦時下においては戦力を提供する義務も発生する」
ほらやっぱり!
部下と上司の板挟みになって一番苦しむところじゃないか!
ふざけるなよ……! 統治者って大変なんだぞ。
全員がちゃんと素直に従ってくれればいいけどさ。
下剋上を狙ってくるやつとか。
こっそり汚職を働くやつとか……。
そういう馬鹿な連中を押さえつけながら国民の生活にも気を配らなきゃいけなくて、マジ苦労が絶えない仕事なんだからな?
魔王のときは自分が一番偉かったからギリギリ耐えられたけど、それを上司がいる状態でやれとか何の罰ゲームだっつーの。
「そんな条件、お断りだっ! 支配者としての苦労を抱えながら上司の機嫌も気にしなきゃいけない立場なんて真っ平ごめんだぜ」
「まるで支配者の経験があるかのようなことを言う……意味不明」
俺が前世の経験を踏まえて答えると、江入さんは怪訝な表情を見せた。
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