証なるもの

笹目いく子

文字の大きさ
上 下
57 / 59

帰還(一)

しおりを挟む
 濃い闇に包まれた日本橋本町四丁目の表通りを、数名の侍に守られた一挺の駕篭が進む。
 草履が道を踏みしめるかすかな音が、残暑の名残りが漂う夜の空気に溶けていく。奥田らの掲げる提灯の明かりだけが暗闇に揺れる本町は、酔客で賑わう時刻も過ぎて、静寂に包まれていた。
 駕篭はやがて、大鳥屋の店先で止まった。
 暖簾は戸口の内へ入れられ、土間の明かりは落ちていたが、まだ揚戸は半分開いていた。
 駕篭を降りた紀堂はしばし戸口の前に佇み、提灯の明かりに朧に浮かび上がる、暖簾の花喰鳥を見上げた。
 おもむろに土間へと足を踏み入れると、それを確認したように隠密と駕篭屋たちが歩きだした。密やかな足音が店から遠ざかっていき、やがて途絶えた。
 ゆっくりと、店の中を見回した。
 暗い土間に人の気配はなく、秤も帳簿もきちんと整理され、明日の商いに備えてある。
 帳簿類から漂ってくる、馴染み深い、ひんやりとした墨の匂いを胸に吸い込んだ。
 ずいぶん長いこと、店を留守にしていた気がした。
 家に戻った。ようやく、戻ってきた。潮が満ちるかのように、静かな思いが胸に湧き出していた。
 紀堂に、戻るのだ。
 帳場の奥の座敷から、行灯の明かりが細く漏れていた。
 腰に差していた打刀を手に持ち、土間の奥へと歩き出した途端、がたりと座敷の唐紙が開いた。
 行灯のやさしい明かりに、凝然と佇立する有里の姿が浮かび上がった。

「……藤五郎さん!」

 紀堂が口を開く前に、有里が鋭く声を上げた。

「藤五郎さん、藤五郎さん!」

 見開いた目をこちらに向けたまま、唐紙にすがるようにして喉いっぱいに叫ぶ。
 有里の背後の唐紙が開いて、藤五郎と手代の信介が飛び込んできた。
 藤五郎さん、と叫ぶ声がばらばらに壊れ、後は嗚咽に変わった。
 紀堂は土間から飛び上がり、帳場を突っ切り、ずるずると崩れ落ちる娘をしっかりと抱きとめた。

「紀堂さん……紀堂さん……」

 声を放って泣く娘を強く抱き竦め、有里さん、有里さん、と囁きながら背中を撫で、また強く抱いた。

「遅くなって、すまなかった。もう、終わった。全部……終わったよ」

 まるで何年も会っていなかったかのように、有里の感触が懐かしかった。

「全部、済んだ。もう、どこにも行かないよ」  

 耳元でそう繰り返し、大番頭を見上げた。
 本物の主なのか、と目を疑うようにして浅く喘いでいる藤五郎に、頬を緩めて見せた。途端、大番頭はがくりと肩を下げ、詰めていた息を大きく吐いた。
 筋張った大きな両手で顔をごしごしと擦り、しばらくじっと両目を覆った。それから、大番頭は気を取り直したように背筋を伸ばすと、

「……お帰りなさいまし、旦那様」

 と低く言った。 

「今、帰ったよ」
 
 噛み締めるようにして答えると、藤五郎は信介とちらと目を見合わせ歯を零す。
 そして、紀堂の肩に顔を埋めて慟哭する若女将を見て、濡れた目を和ませた。
 安堵にむせび泣く娘の声が、暗い店の中に高く低く響いていた。

***

 小舟の行き交う大川を、冷たい秋風が渡っていく。
 墨堤の桜紅葉は盛りを過ぎ、風が過ぎる度に爛熟した紅の葉をどっと散らし、土手と川面をも赤い斑に変えていた。

「いい日和だな」

 隣を歩く正馬が、のんびりと言う。
 高く青い空の下、秋気澄み渡った向島の茶色く枯れた田園を右手に見ながら、堤の上に降り積もった真っ赤な紅葉を踏んで歩いた。やがて、夏の頃と同じく人々が列をなしている屋敷の門前で、二人は足を止めた。
 音物を抱えた紋付袴や黒羽織の訪問客と、それを当て込んだ屋台で賑わう石翁の屋敷前の景色は、あの頃から変わっていない。
 躊躇うことなく門番に近づいていくと、総髪に長身の得体の知れぬ浪人風の男と、端正な黒羽織の青年の二人連れに、門番が怪訝な視線を投げてきた。

「大鳥屋店主の紀堂と申します。卒爾ながら、お尋ね申し上げますが……」

 紀堂はそう言いながら、繊細な両目を細くしてにこりと微笑んだ。
 その美貌にぽかんと見惚れた尻端折りの男は、次の瞬間、あっ、と息を呑んだ。

「そ、その方……待て。少し待て」

 泡を食ったように言いながら、門内へと駆け込んでいく。男を見送る紀堂の耳に、きょんきょんと鳴く百舌鳥の高い声が、どこからともなく響いた。

「……広彬どの、久しいのう。何度呼んでもちっとも顔を見せぬから、気を揉んでおったぞ」

 ほどなくして屋敷に招じ入れられ、正馬と別れて奥座敷へと通されると、上座に坐した恰幅のいい男がむっつりと言った。
 紀堂は涼しい顔で浅く頭を下げた。石翁からは幾度か向島へ赴くように促す手紙が届いていたが、のらりくらりと引き伸ばしていたのだ。

「ご無礼の段、どうかお許しくださいませ。火急の事態が出来致しておりましたもので」 
「噂は聞き及んでおる。先手頭の柳井とやらが乱行に走ったそうだの。そこもとや大和守どのの手勢と、派手にやりおうたとか」

 そこまで言って、ぐいと厚い唇を歪めた。

「まさか、千川家のご嫡男が存命であろうとは思いも寄らなかった。……儂に隠しておられたな」

 知っていたならば水野派を揺さぶる材料にしたものを、とでも言いたげに、苛立ちを隠さぬ目でこちらを睨む。

「お許しくださいませ。余人に漏れれば、弟の命が危うくなりかねぬ状況でございましたので」

 悪びれずに紀堂は微笑した。

「大殿様よりご教示を賜りました、飯田の生糸為替金支払方のお役を得たために、そこまで探り当てることが叶いました。まことに、お礼の言葉もございませぬ」
「ぬけぬけと申される。……で、此度は儂に何用であろうか。先般の礼でもお返しいただけるのかな」

 こめかみをぴくぴくと痙攣させつつ、翁が唸った。

「は。実は、今一度石翁様のお力添えを乞いに参りましてございます」
「何と? この上また力を貸せと」

 わずかに身を乗り出し、はい、と紀堂は美しい双眸で男を凝視した。

「千川家の再興に、お力添えをくださいませ」
「儂が?」

 老人が一瞬唖然とし、それから噛みつくように言った。

「大御所様に、ご家名の復活を奏上せよと申されるのか?」
「はい。何とぞ、お願い申し上げまする」
「そんなことをして、儂に何の得があるのか。大御台様の不興を買うばかりではないか。図々しいにもほどがあるというものだ」
「なりませぬか」
「……広彬どの」

 大仰な嘆息が聞こえてきた。

「過日の儂の計らいは、そこもととは過去に浅からぬ縁があると思えば、いささかお役に立つのもやぶさかではないと思った次第。そう、いつもいつもいい顔ばかりはできかねる」
「これは……心外なお言葉」

 幽艶な双眸を細めて笑うと、紀堂は挑むように冷たい光を瞳に漲らせた。

「我が父と母を悲嘆の淵へ追いやったお方のお言葉とは、とうてい思えませぬ」

 男のがっしりとした顎が強張った。

「……何のことかわからぬ、とは無論申さぬ。しかし、儂もそこもとへの誠意は十分に示したつもりであるのだがのう」
「我が父母の苦しみの対価を、ずいぶんと安く見積もられたものですな」

 抜き身で斬りつけるように返した途端、翁が気色ばんだ。

「お口が過ぎるのではないか、広彬どの」

 鉛のように重圧感を感じさせる両目が、警告を浮かべてこちらを睨む。

「越前守や大和守が背後におるのか知らぬが、あまり多くを望まれぬ方がよろしかろうぞ。そこもとには官位もなければ、ご家臣団もおられぬのだからな」

 立場を弁えろというわけか。紀堂はさして驚きもせず、なるほど、と小さく頷いた。

「よく分かり申しました。なればよろしゅうございます。私が直接、大御所様へお願い申し上げましょう」
「……何を申すのだ。そなたがお願い申し上げたところで、誰が耳を貸すというのだ。千川家の庶子とはいえ、改易された身なのだぞ。西丸に足を踏み入れることすら許されるものか」

 男が鼻を鳴らして睨めつけた。

「千川の子息として参るのではございませぬ」

 そう応じるなり、紀堂は端麗極まりない笑みを浮かべた。

「実の子として父にお目にかかるのです。子が父に目通るのに、何の遠慮がございましょうか」

 石翁が目を剥いて硬直した。
 幻惑するような美貌に、怖気の走るような凄みが加わる。

「大和守様か越前守様に申し上げたならば、すぐさま西丸御殿へ導き入れてくれるはず。そうは思いませぬか」
「──そなた」

 驚愕を両目に浮かべ、石翁が絶句した。

「そなた、まさか、知って……」
「御身と紫野との子が、そこもとの失態によって今まで野に隠され、かくも長きに渡り辛酸を嘗めてきたと知れたら……私の父はお怒りになられるであろうか。私の実の父は、さように情の深きお方であろうか。そこもとはよくご存知であろう。どう思う、石翁どの」

 わなわなと頬をふるわせながら、男がぐっと言葉を飲んだ。
 猪首に喉仏が忙しく上下し、ぴくぴくと唇がひきつる。
 その姿を、紀堂は静まり返った目で見詰めていた。この男が紫野の死に落胆していたのは、その死を憐れんだわけではないのだ。将軍家斉の寵愛を得て、子まで成した絶世の美貌の娘だった。生きておれば使い道があったものを、とでも思ったのに違いない。
 そうとなれば、己が大御所の子であるとは知らぬらしい紀堂を、下手に刺激せぬ方が上策だと踏んだのだろう。建議書や水野派の内情を探らせれば、一石二鳥というわけだ。
 ところが、無知で御しやすいと見えた青年が、真実を覚って逆に脅しにかかってきた。

(さぁ、どうする)

 忙しく瞳を揺らして逡巡している男を凝視した。
 と、石翁は紀堂の白く冴えた面を睨みつけるなり、手に持った白扇で、ぱん、と鋭く掌を叩いた。
 豪奢な座敷に響いたその音が、静寂に吸い込まれていく。
 こちらを睨めつけたまま身じろぎもせずにいる翁の目に、やがて怪訝そうな表情が過った。視線がすっと襖の方を向く。耳をそばだてるようにして束の間襖の外をうかがってから、小さく息を飲んでこちらを見た。
 紀堂がゆったりと視線を返すのを呆然と見返し、にわかに顔から坊主頭まで真っ赤にする。

「おのれ……」

 こめかみに青筋を浮かせて呻いた。
 紀堂は霞がかったように浮世ばなれした美貌を綻ばせ、ただ微笑んでいた。手勢を呼んだつもりであろうが、生憎そんなものはやっては来ない。
 幾度か喘いだ老爺の喉が、ぐう、と鳴った。

「──わかり申した」

 砂を噛むような顔で絞り出すと、ぐったりと肩を落とし、太い息を吐いた。
 坊主頭にねっとりとした汗を浮かべながら、虚ろな目でつくづくとこちらを眺める。

「千川家の再興を、進言致しましょう。……まったく、初心そうな顔をして、図太い」
「恐れ入ります。何しろ、大鳥屋店主にございますので」

 にこりと極上の微笑みを返すと、石翁は忌々しげに白髪眉をしかめ、早く行け、というように力なく扇子を扇いだ。
 屋敷の門を出た紀堂は、別室に待たせてあった正馬と合流した。そして、付け届けを山と抱えてじりじりしながら門前に並ぶ人々を横目に、羽織を翻して堤を歩きだした。

「……異変はありませんでしたか」

 乾いた素風がさらさらと紅葉を散らし、爽やかに額を撫でていくのを感じながら訊ねる。

「五人ばかり、座敷に入り込もうとしている連中がいた」

 淡々と隣の師匠が答えた。

「皆、物騒なものを手にしておったので、伸しておいた」

 紀堂は黙って微笑んだ。
 紀堂は石翁の大失態の生き証人だ。機会と見れば、口封じにかかるだろうとは思っていた。
 だが、変わり身の早い男のことだ。正馬のような護衛が張り付いていると知れば、暗殺はさっさと諦めて、紀堂の要求を呑んで縁を切ろうとするに違いない。大御所の怒りを買うよりは、大御台の機嫌を損ねる方がましというものだ。 
 もう、あの屋敷を訪うことはないだろう。そう思いながら紀堂はひんやりと澄んだ風に目を細くした。

「紫野様は、一度はお命を絶とうとなさったのだそうだ」

 老公に見えた二日後、大鳥屋へ戻った正馬が、池の石橋の上に並んで立って言ったのを思い出す。

「大御所に無体を働かれたことを恥と思われ、喉を突こうとなさったのだ。それを知った伊予守様は、どうか生きて欲しいと強くお引き止めになられた。そして、紫野様がそなたを身籠もっていると判った時、生まれてくる子を、お二人の子としてお育てになることをご決心なされたそうだ」

 池のぐるりを黄金色の青肌や柳、真紅の楓が金襴のごとく彩っている。冴えた風が吹き抜ける度、散らされた艶やかな葉が池の面を覆っていく。
 正馬は左肩を負傷してはいるものの、驚くべき回復力で毒の痺れからも脱しており、しっかりと背筋を伸ばして佇んでいた。

「……千川家の子として、育てようとな」  

 ぽちゃり、と足元で水音が立った。赤い錦鯉が餌をねだって数匹集まり、錦繍の水面を揺らしている。

「そうでしたか……」

 父は、母がこの世を去った後も、その決心を守り通してくれた。強く、やさしい人だった。

「このことを知っておるのは野月の家人と、千川家のご家老衆、それに四代目紀堂のみだったが……越前守様と大和守様へ明かしたのか」
「はい」

 紀堂は師匠を見上げて気負いなく頷いた。

「玄蕃に、伝えてよいと申しました。老公と大御台様を抑え込むのに、これ以上の武器はございませんでしょう」

 大御所の子に手を出したことを追及されれば、さすがの大御台の立場も危うくなる。
 石翁が大御所に千川家の再興を勧め、越前守らがそれを支持すれば、否とは言えぬはずだ。

「そなたもなかなか、強かになった」

 そう言って、正馬は笑った。


 大川に優雅な弧を描く吾妻橋が、墨堤の桜紅葉に彩られるようにして迫っていた。対岸の町屋の間に浅草寺の五重塔がそそりたち、九輪がちかりちかりと煌めいている。

「……先生、友一郎を誘って、馬喰町へ寄っていきませんか」

 ふと思いついてそう訊ねると、正馬が不思議そうな顔でこちらを見た。

「馬喰町?」 
「ねずみの弥之吉が、煮売り屋をはじめたそうです。意外にうまいって評判ですよ」

 そりゃあいい、と正馬が笑った。
 友一郎には、高輪から戻った翌朝に花筏で会った。満身創痍の紀堂を見て真っ青になった友人は、「今日は店には出ない」と宣言して自室に紀堂を招き入れた。二十五年以上前にまで遡って、すべてを打ち明けた。実父が誰であるのかということだけは除いて。
 このことだけは、有里にも明かさないと決めた。墓の下まで、持っていく。
 友一郎は長い話を身じろぎもせずに聞き終えると、ぷいと部屋を出て行った。しばらくして戻った時には、酒器と酒肴を載せた折敷を手にしていた。

「この間は、飲み損ねたもんな。飲み直そうぜ」

 自分と紀堂の前の猪口に酒を注いで、ぶっきらぼうに言う。
 友人の目と鼻が擦ったように赤らんでいるのを見て、急に喉が詰まった。

「……何だよ。もう猪口を投げたりしねぇよ」

 喉をふるわせて黙り込んだ紀堂に向かって、眉を片方吊り上げて見せる。
 思わず歯を零すと、紀堂は猪口を取り上げて、酒と一緒に胸に込み上げる熱いものを飲み下したのだった。
 

「……あの若旦那はおもしろい男だな。肝が据わっているし頭もいいが、とんでもなく人を食ったところがある」

 正馬が堤から大川を見渡しつつ楽しげに言った。

「そうなのです」思わず大きく首肯した。
「俺も幾度も煮え湯を飲まされたことがあります」
「ほう、例えば」
 
 こちらを向いた師匠に口を開きかけ、途端、有里への恋文の件を思い出した。

「まぁ……色々です」とお茶を濁すと、勘のいい正馬が心得たように目に笑いを浮かべた。
「なるほど。じゃあ若旦那にたっぷり飲ませて聞き出すとするか」

 肩を揺らしながら、師匠がすたすたと歩いていく。
 しまった、やぶ蛇であったか、と紀堂は顔を火照らせながら空を仰いだ。
 赤く色づいた梢を透かして、秋晴れの空がどこまでも広がっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帖

笹目いく子
歴史・時代
旧題:調べ、かき鳴らせ 第8回歴史·時代小説大賞、大賞受賞作品。本所松坂町の三味線師匠である岡安久弥は、三味線名手として名を馳せる一方で、一刀流の使い手でもある謎めいた浪人だった。 文政の己丑火事の最中、とある大名家の内紛の助太刀を頼まれた久弥は、神田で焼け出された少年を拾う。 出自に秘密を抱え、孤独に生きてきた久弥は、青馬と名付けた少年を育てはじめ、やがて彼に天賦の三味線の才能があることに気付く。 青馬に三味線を教え、密かに思いを寄せる柳橋芸者の真澄や、友人の医師橋倉らと青馬の成長を見守りながら、久弥は幸福な日々を過ごすのだが…… ある日その平穏な生活は暗転する。生家に政変が生じ、久弥は青馬や真澄から引き離され、後嗣争いの渦へと巻き込まれていく。彼は愛する人々の元へ戻れるのだろうか?(性描写はありませんが、暴力場面あり)

魔斬

夢酔藤山
歴史・時代
深淵なる江戸の闇には、怨霊や妖魔の類が巣食い、昼と対なす穢土があった。 その魔を斬り払う闇の稼業、魔斬。 坊主や神主の手に負えぬ退魔を金銭で請け負う江戸の元締は関東長吏頭・浅草弾左衛門。忌むべき身分を統べる弾左衛門が最後に頼るのが、武家で唯一の魔斬人・山田浅右衛門である。昼は罪人の首を斬り、夜は怨霊を斬る因果の男。 幕末。 深い闇の奥に、今日もあやかしを斬る男がいる。 2023年オール讀物中間発表止まりの作品。その先の連作を含めて、いよいよ御開帳。

転娘忍法帖

あきらつかさ
歴史・時代
時は江戸、四代将軍家綱の頃。 小国に仕える忍の息子・巽丸(たつみまる)はある時、侵入した曲者を追った先で、老忍者に謎の秘術を受ける。 どうにか生還したものの、目覚めた時には女の体になっていた。 国に渦巻く陰謀と、師となった忍に預けられた書を狙う者との戦いに翻弄される、ひとりの若忍者の運命は――――

富嶽を駆けよ

有馬桓次郎
歴史・時代
★☆★ 第10回歴史・時代小説大賞〈あの時代の名脇役賞〉受賞作 ★☆★ https://www.alphapolis.co.jp/prize/result/853000200  天保三年。  尾張藩江戸屋敷の奥女中を勤めていた辰は、身長五尺七寸の大女。  嫁入りが決まって奉公も明けていたが、女人禁足の山・富士の山頂に立つという夢のため、養父と衝突しつつもなお深川で一人暮らしを続けている。  許婚の万次郎の口利きで富士講の大先達・小谷三志と面会した辰は、小谷翁の手引きで遂に富士山への登拝を決行する。  しかし人目を避けるために選ばれたその日程は、閉山から一ヶ月が経った長月二十六日。人跡の絶えた富士山は、五合目から上が完全に真冬となっていた。  逆巻く暴風、身を切る寒気、そして高山病……数多の試練を乗り越え、無事に富士山頂へ辿りつくことができた辰であったが──。  江戸後期、史上初の富士山女性登頂者「高山たつ」の挑戦を描く冒険記。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

狐侍こんこんちき

月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。 父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。 そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、 門弟なんぞはひとりもいやしない。 寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。 かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。 のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。 おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。 もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。 けれどもある日のこと。 自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。 脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。 こんこんちきちき、こんちきちん。 家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。 巻き起こる騒動の数々。 これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。

KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

ジェド
歴史・時代
1894年、東洋の島国・琉球王国が沖縄県となった明治時代―― 後の世で「空手」や「琉球古武術」と呼ばれることとなる武術は、琉球語で「ティー(手)」と呼ばれていた。 ティーの修業者たちにとって腕試しの場となるのは、自由組手形式の野試合「カキダミシ(掛け試し)」。 誇り高き武人たちは、時代に翻弄されながらも戦い続ける。 拳と思いが交錯する空手アクション歴史小説、ここに誕生! ・検索キーワード 空手道、琉球空手、沖縄空手、琉球古武道、剛柔流、上地流、小林流、少林寺流、少林流、松林流、和道流、松濤館流、糸東流、東恩流、劉衛流、極真会館、大山道場、芦原会館、正道会館、白蓮会館、国際FSA拳真館、大道塾空道

処理中です...