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第三章

3-48 宥めるのも一苦労

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 嵐をかいくぐって凹んでいるローダンの元へと着くとローダンはこんなにも私とラース兄さんが近づいていることにも気付かずにブツブツと何かを呟いていた。

状況的にかなりヤバいと感じた私とラース兄さんはまずローダンを刺激しないようにそっと近寄り何を呟いているのかを確認する。

そっとローダンに近寄ると...

『ダメ...兄さんと...姉さんは...ずっと僕といるの...。は、離れるなんて...あっては...いけないの...。ぼ、僕は...一人にならないの...。』

と繰り返し呟いていた。

呟いているローダンの顔付きはかなりやばかった。

普段のローダンの姿を知っている人ならかなりショックを受けるレベル。

ローダンの姿を見てラース兄さんは瞬時に判断して私にそっと囁く。

『今回のローダンはかなり危ない。スノーお前が先にローダンに声をかけるんだ。
私が声をかけると下手したらより状況を悪化させる可能性が高い。』

ラース兄さんにそう言われて私はゆっくりとさらにローダンに近寄りそっと抱きしめながら声をかける。

『ローダン。姉さんよ。どうしたの?大丈夫よ。姉さんも兄さんもそばにいるわよ。』

そう言いながらローダンの頭を優しく撫でるとあれだけ激しく荒れ狂っていた風や竜巻などが静かになり落ち着いていく。

そして抱きしめている私の腕を必死にしがみ付きながら涙をいっぱいに浮かべて私の顔を見上げ

『姉さん?』

『そうよ?どうしたの?』

私が優しく返答するとローダンはいつもの顔付きと雰囲気に戻り私にしがみついてきて号泣しだす。

すると...一気に空間は落ち着きブルーム兄さんを襲っていた雷も静かになった。

完全に落ち着いたのを確認すると兄さん達も側に来てローダンに声をかける。

『おい、ローダン一体どうしたんだ?』

『ローダン。落ち着きました?話せるようなら教えて下さい。』

ローダンは暫く私の腕の中で声を上げて子供のように泣き叫んでいる。

兄さん達の声もまともに聞こえていないと思うのだが...兄さん達は怒りもせずローダンが落ち着くのを待つ。

私は必死にしがみついてくるローダンの背中を摩りながらひたすら"大丈夫よ"と繰り返し声をかける。

どれだけ時間がたったのだろうか...泣き叫んでいたローダンの声もだいぶ小さくなってきた。

これならと思い改めてローダンに声をかけるとローダンはまだ私にしがみ付きながらもなぜこの様なことをしたのかを話し出した。

すると...ナチョマは荒療治をするつもりで放った一言がローダンの地雷だったのだ。

これを聞いたときは流石の私達兄弟もブチギレてしまった。




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