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第一章 

1-162 四人と一緒に素材探しと食料調達へ 7

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 ブルーム兄さんは私の言葉に苦笑いを浮かべるだけで特に何も言ってこなかった。

兄さんなりに私の気持ちを察してくれているからだろう。

"とりあえず今は素材探しだな。俺とお前がいて探せないものはないからな。"

兄さんはそう言ってニカッと悪戯っ子のような表情をして笑う。

ほんとこの兄には敵わないと思いながら私も気持ちを切り替えて同じ表情をした。

"そうね。兄弟の中で私と兄さんは宝探しの名人だものね。"

そう言って互いの拳をぶつけて気合を入れ直して捜索を再開する。

ほんと...ブルーム兄さんは一見アホ...いやバカなのだが...。
それはあえて自分の実力を隠し弟妹の凄さを見せるパフォーマンスではないのかと最近思い出した。

昔...子供の頃は真性のアホならぬバカだったのだが、成長するにつれてそれが少しずつ変わってきているように思えるのだ。

それはラース兄さんも同じ考えのようだ。

本当にアホ...ってかバカな部分はもちろんある。
しかし、それをなしにしてもブルーム兄さんは賢さがしっかり備わってきているのだ。

"脳ある鷹は爪を隠す"と言うが...ブルーム兄さんはもしかしたらそれに当てはまる気がすると事き私は思ってしまった。

が...。

"スノー!!助けてぇ~!!このキノコ食ったら唇が腫れたぁ~~。
しかもメッチャいしゃいぃーー!!"

人が考えを巡らせている間にそこら辺に生えているドピンクのキノコを生かじって唇を真っ赤に腫れ上がらせて泣いている兄の姿...。

"やっぱり兄さんはアホね。そうよ。たんなるアホだわ。"

"ひぃでぇー。そにふぁふ、そょうにふぁひろよ!(とにかくどうにかしろよ!)"

泣いて縋ってくる兄に溜息を吐きながら私は回復魔法をかけるのだった。

(一瞬でもこの兄が賢いと思った自分がバカだったわ。)

"さすがスノー。助かったぜ!"

"兄さん!何でもかんでもあるものを口に入れないの!なんでその歳になっても分からないのよ!!"

私のお説教にブルーム兄さんはだってぇーと言って唇を尖らせるのだった。

こんな姿は小さい頃からまったく変わってないのだ。

これもまたブルーム兄さんらしいといえばらしいのだが...。

"はぁー。兄さんお腹すいたなら言ってよ。ハイこれ。"

そう言って私は鞄からおにぎりを出してブルーム兄さんに差し出したのだ。

ブルーム兄さんは私が手渡したおにぎりを見るとひと口で平らげたのだった。

おにぎりといってもかなり大きいおにぎりなのだが...。

"まだあるか?"

どうやら本当にお腹が空いていたらしく
ブルーム兄さんはおかわりを催促してきたのだった。

私は溜息をつきながら鞄よりおにぎりを五個ほど出したのが...どれも一口で平らげられたのは言うまでもない。

ブルーム兄さんは大きいおにぎりを合計十個ペロリと平らげたのだった。

"助かったぜ。なんとか小腹は満たせたから大丈夫だ。"

"はいはい。それは良かったですよ。じゃー続き頑張りますよ!"

"任せとけ!でもまた腹減ったら頼むぞ!あと、食えるもんがあってらおしえてくれ!"

こうしてまた素材探しを続けるのだった。

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