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第一章 

1-43 お引越しします!

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 私達が巣でゴソゴソしている間、お父さんは長老の所に。

そして、これまでの私の事。
お父さんとお母さんの"友人"の事。

その友人に合わせてからの私の様子を話していた。

もちろん、長老はお父さんとお母さんの"友人"が人間である事を知っている数少ない仲間のドラゴンだった。

お父さんから話を聞いた長老は、終始渋い顔をしていた。

実は長老は、ずっと私達一家の事。
私の事をずっと気にかけていたのだった。

だから、お父さんが何を話に来ても否定する気はなかったようだった。

しかし、まさか仲間同士のトラブルで自分達の敵となる相手を頼る事になるとは...。

それが、ずっと長老の心に引っかかっていた。

だが...私達一家、中でも私の事を考えるとダメだと言えなかったのだ。

私に関しては、もう暫く仲間内では話題になり好奇の対象で間違いなかった。

それでは...。

長老は暫く無言で考えてから、大きく息を吐いた、

そして...。

"仕方がない。子供の事を考えてやると、それが今の所1番いい方法なんだろう?
 なら、拒否はできまい。
だが、何かあればすぐに戻って来い。
今の住処は、そのままにしておけ。
交代で、私とお前さんの兄弟で手入れをしておく...。"

そう、返事を返したのだった。

長老の言葉を聞いて、お父さんは深々と頭を下げ御礼を言った。

そして、私達が待つ住処へと急いだ。


 その頃...。もう1箇所...の場所でも、慌しい状況になっていた。

お母さん達の友達である、人間達の家だ。

急に届いたお母さんからの知らせを受けて、びっくり仰天状態。

遊びに来るのか?と軽い気持ちで見たら、引越してくると書かれていたからだ。

「はっ!!引っ越し?なんで?どごに?!いつ!」

そう叫びながら、お母さんからの伝言に突っ込みを入れたとか...。

何せお母さんの伝言には...。

"やっほう~♪近々そちらに一家でお引越しするから、よ・ろ・し・く♡"

としか、書かれてなかったのだ...。

...。そりゃ~驚くよね...。

そんなこんなで、我が家のお引っ越しが決まった。

しかし、彼らの住んでいる近くにこんな大型の生き物が住める洞窟や山はなかった気が...。

そんな考えをしていたが...現地に着いてそんな考えはつゆと消える事に...。

何せ、私達子供以外の大人のドラゴンはある一定の年月と魔力が有れば、人型をとる事が出来るのだとか。

なので、無理に洞窟や聳え立つ岩山で生活しなくても問題なかったのだった。

早く教えて欲しかったよ...。

なんにせよ。長老の元から帰って来たお父さんと合流し、家族皆んなでお引越しとなった。

しかも引っ越し先は、人間の世界へだ。

私達兄弟は、それぞれお父さんとお母さんの背に乗り移動となる。

私は終始ご機嫌だった。

それを見て、お母さんとお父さんはホッとしていた。

しかし今回はある一定の場所に来たら、一度降り立ちお父さんとお母さんは姿を変えたのだった。

そう。人型に。

私は一度お母さんの人型の姿を見た事があったので驚きはしなかったが、兄達は驚いていた。

お母さんは、相変わらずの美人さん。

お父さんはと言うと...。

これまた美丈夫に...。

(私の両親揃ってなんで、人型もイケメンなの?!ズルい!)

思わず私は心の中で叫んだ。

お父さんも青髪のロングヘア。
身長も高く、タッパもあった。

細身だが、しっかり整った無駄のない筋肉が付いている。

顔も整っていて、ドラゴンの時と同じでイケメンだった。

お母さんと並ぶと、美女美男のカップルにしか見えなかった。

(絶対詐欺だ!?)

そう思いながら見ていると、お母さんが微笑んで来た。

(えっ?!もしかして...バレた?)

そんな事を思っていたら...。

"ここからは、ドラゴンの姿で何体も行くのは危険だからお父さんとお母さんはこの姿で行くわね。
 ここから先は、人間の領域だから。"

と、話してくれた。

"彼らの元へは魔法を使って行く。
それなら、特に問題ないから。
と...言いたいが、お前たちはまだ人型に慣れない。
だから、決して私達の側からは離れるな。"

"人間全てが優しいわけではないわ。
下手に人間に見つかったら、命はないわ...。だから、絶対この約束は守って。
お母さんとお父さんの側からは離れないで。必ず、言う事は聞いて。
出ないと、命の保証は出来ないから...。"

真剣な眼差しで話す両親。

私も兄達の顔からも陽気な雰囲気は消えた。

そうなのだ。
ここからは、人間の領域。

私達ドラゴンは、彼らにとって敵。
命の保証はない世界なのだった...。

私と兄達は、両親の言葉に静かに頷いた。

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