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第一章 

1-8 兄妹って

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 私の尻尾の一振りで、地面に亀裂が入ってしまった事に、家族皆んな驚いた。
私は軽く振ったつもりだが、まさか亀裂まで入るとは思わなかった。

生まれたての弟も、驚いて泣いてしまった。

"あらあら。大丈夫よ。"

お母さんは、優しく泣いている弟を慰めていた。

兄達はお父さんの足元に、いつのまにか逃げていた。

私だけその場にポツン。
...あっ、ここでも私は独りになるんだって思った時だった。

お父さんが私をそっと咥えて、自分の掌の上に降ろしたのだった。

私は、お父さんの手のひらの上でじっと見つめた。

"こんな元気な子は初めてだね。
将来が楽しみだよ。"

"そうね。今迄の子供達に比べたら、今回の子供達は面白い子ばかりだわ。"

お父さんとお母さんは、和やかに話していた。
打って変わって、弟はまだお母さんの側でぐずっているし、兄達はお父さんの足元にしがみついていた。

"君達以外にもね。私達には、子供が居るんだよ。
皆んな大きくなって、巣立ちをしてそれぞれ生活をしているから、滅多には会えないけどね。"

"私も、もう歳だから今回で子供を産むのを最後にするのよ。
最後に産んだ子供達が、貴方達で良かったわ。
人生最後の子育てが楽しみだわ。"

お父さんもお母さんも、優しい顔で、声で、私達を見ながら話してくれた。

その言葉と表情で、今度の人生で私は独りにならなくてすむと思い、静かに涙を流してしまったのだった。

なく私を見て、お父さんとお母さんは大慌て。

私を笑わそうと変顔したり、こそばそうとしたりした。
産まれて初めての、親との関わりに私の目からますます涙が溢れるのだった。

悲しい涙以外の涙を流すのは、初めてだったので、止め方がわからなかった。

お父さんとお母さんの様子が、おかしい事に気づいた兄達。
お父さんの足元から、手の方へと移動して来たのだ。

そして、お父さんの手の中で涙を流す私を見て、兄達も大慌て。

私の前に来て、お父さんと同じ様に変顔をしたりと、笑わせようとしたのだった。

今度の家族はなんて暖かいのだろうか...。
私の目から出る、嬉し涙は次々と溢れてくるのだった。

ひとしきり泣き、私と私をあやそうとした兄達は疲れて、眠ってしまった。

自分の手の中で寝る私達の姿を、お父さんとお母さんは愛おしそうに見つめていた。

"君が産んだ子はどの子も可愛かったが、この子達は特に可愛いね。
それに、初めての雌子だ。
色も、可愛さも君にそっくりだね。
しかし、....。"

お父さんは、なぜが辛そうな声を出していた。
なぜそんな声を出すのかと言ったら...。

私達をそっと起きない様に、弟の居る巣の方へ運んだ。
そして、私達を並べてみると一目瞭然だった。

私だけ。
私だけ、体の割合に対して翼が極端に小さかったのだった。

それを見て、お父さんは辛そうな声を出したのだった。

それに気付いたお母さんは、お父さんの頬にそっと口付けをした。

"大丈夫よ。どの子も元気に産まれてくれたわ。
もしかしたら、大きくなるに連れて翼も大きくなるかも知れないわ。
私達が、クヨクヨしても仕方がないわ。"

そう言って、お母さんはお父さんを元気付けたのだった。
お母さんだって不安だった。

今まで沢山の子供達を産み、育てて来たが、私みたいな子は今まで居なかったのだから...。

しかし、親である自分達が不安がっていては、子供達も不安になってしまう。
それでは、意味がない。

大丈夫。
そう信じて、育てるしかなかったのだった。

お母さんの気持ちに気付き、お父さんは笑顔になり、お母さんにそっとお返しの口付けをした。

"ありがとう。元気が出たよ。
そうだね。大丈夫だ。無事に産まれて来てくれたんだ。
よし!明日この子達に名前をプレゼントしよう。
名無しのままでは、可哀想だからね。"

お父さんはそう言って、私達を見つめた。

巣の中では、兄妹仲良く丸まって眠っていた。
寝相が凄くいいので、兄妹で蹴り合いや、乗り合いをしていた。

そんな私達の姿を、2人は微笑みながら見つめていたのだった。
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