33 / 85
連載
火と煙と
しおりを挟む
「火だ!」
「どうしてここに?!」
避難した部屋の奥の間で髪を整えて貰っていた私は、そう叫ぶ声の方に視線を向けました。ドアの向こうに見えたのは、割れたガラスと炎を纏うカーテンでした。こんな王宮の警備が厳重な場所で突然カーテンが燃え上がるなど、尋常ではありません。私は直ぐに部屋を出ようと、侍女に付き添われて廊下に続くドアに向かいましたが…
「え?か、鍵が…っ?!」
ドアを開けようとした侍女が必死にドアを開けようとしますが、鍵がかかっているのか開きません。鍵は内側からしか掛けられない筈ですし、解除されているのにどういう事でしょうか?
仕方なく、先ほどこの部屋に入った隣の部屋との間にあるドアに向かいましたが…先に隣の部屋に足を踏み入れようとした侍女の動きが止まりました。
「…っ!煙が…」
「そんな…」
隣の部屋に続くドアからは煙が充満して室内はほぼ真っ白に見え、騎士達が消火している様な姿が浮かび上がっています。窓のカーテンの火は大した事がなかったようで、広がっている様にはみえませんが、勢いの割には煙の量が多い様に思います。でもこの煙の臭い、妙な甘さというか甘酸っぱい感じがして…変な感じがします。
「煙を吸い込まないで下さい!」
私が煙の臭いを気にしていると、側にいた女性騎士が、口元を袖で覆いながら叫びました。
「この煙、何か薬が混じっているかもしれません。口元を布か何かで覆って、身体を低くして吸い込まないようにしてください!」
女性騎士の言葉に、私もラウラも侍女たちも互いに顔を見合わせました。でも、直ぐに状況を理解してハンカチなどで口元を覆うと、煙の薄そうな場所へと移動して座り込みました。私達が移動している間に、女性騎士は煙が流れ込んでくる隣の部屋との間のドアを閉めました。これで隣室からこれ以上煙が入り込んでくることはないでしょう。
幸いにも隣室の火は大した事なさそうですし、煙も部屋のこちら側には流れてきません。この部屋から出たいところですが、私達がここにいるのはジーク様や騎士達も知っています。助けが来るまでお待ちくださいと女性騎士にも言われたため、私はラウラと侍女二人と一緒に待つ事にしました。色々と気にはなりますが、闇雲に動き回って皆さんの足を引っ張るわけにもいきませんから。
「一体何が…」
それにしても王の結婚式でこの様な事態が起きるとは、どういう事でしょうか。今日は一際警備も厳しく、部外者の立ち入りも制限されています。式場のある建物周辺も、招待客や許可された者しか立ち入る事は出来ないと聞いています。
「さすがに火矢が放たれるとは思いませんでした」
「一体何のために…」
「この婚礼をよく思わない者の仕業、でしょうか…」
「それはまだ何とも…でも、マルダーンとラルセンが手を組むのを良しとしない国や者がいてもおかしくはないですからね」
「そうね」
侍女たちの言葉には私も同感でしたが、やっぱり気が重くなるのを感じました。ジーク様との結婚をよく思わない者がいると言われると、お前ではだめだと言われたような気がして、ざらりとした嫌な感覚に襲われました。
いえ、母国では母が生きていた十歳までしか教育を受けられなかったし、王女として色々足りないのは間違いなく、そう思われても仕方ないのですが…今更ですが、この国に来てからもっとしっかり学んでおけばよかったです。ユリア先生たちのお陰で前よりマシにはなっていますが…半年程度ではまだまだ不十分でしょう…
「エリサ!どこだ!」
「ラウラ!返事をしてくれ!どこにいるんだ?!」
ラウラ達と一緒に部屋の片隅で助けを待っていた私は、私を呼ぶジーク様の声に顔をあげました。声はドアの向こうの廊下からしているようです。
「…ジーク様!」
「レイフ様、ここにいます!」
「…っ!エリサ?ここか!」
どうやら廊下の向こう側にいらっしゃったようで、ジーク様は私の声に直ぐ気が付いて下さいました。ドアノブを回す音がしましたが、音がするだけで開かないところを見ると、やはり鍵がかかっているようです。
「エリサ、鍵を解除してくれ」
「鍵はかけていません。でも、こちら側からも開かないんです」
「なんだと?!」
どうやら向こう側からも鍵がかかっていないようです。という事は、このドアに何か細工がされているという事でしょうか…一体何のために…
「ドアから離れてくれ」
「は、はい」
私達はジーク様の言う通り、ドアから離れました。壁の側で身を屈めていると、ドアが悲鳴のような物凄い音を立てました。えっと…ドア…が…
「エリサっ!」
既にドアの役目を果たさなくなったそれの間から現れたのは、ジーク様でした。ジ、ジーク様、もしかしてドア、破壊しちゃった…のですか…竜人は物凄く強いと聞きましたが、まさかドアを素手で壊せるとは思わず、私は目の前の景色を呆然と眺めていました。そんな私の視界に、剣を手にしたレイフ様がラウラに駆け寄っているのが見えました。えっと、ドアを壊したのはレイフ様…でしょうか?
「無事でよかった!」
ラウラ達の様子に気を取られていた私は、次の瞬間にはがっつりと拘束されている自分を自覚しました。目の前に広がった色は私と同じものですが…ち、近いです、ジーク様…いえ、それよりも…
「い、痛いですっ」
「…っ!す、すまないっ!」
えっと、渾身の力で抱きしめられていたのでしょうか…力も凄いですが、ジーク様の衣装に付いている金属製の勲章などが顔に当たってそちらの方が痛いです。幸いすぐに力を緩めて下さいましたが、それでも解放はして貰えず、少しだけ身体を離したジーク様は私の全身を見下ろしてきました。うう、今はまだ髪を結っていた途中ですし、ドレスも簡易なものだし、お化粧もしていないので、こんな姿を見られるのは非常に不本意なのですが…
「どこも怪我は…」
「ないです。皆さんが守ってくださいましたから」
不安げに金色の瞳を揺らしたジーク様の様子から、かなり心配をかけてしまったようです。私は何とか笑みを浮かべてそう答えましたが…笑顔がぎこちなかった自覚があります。
というのも、ここまで近づいた事がなかったので、この距離に動揺してしまったのです。こうしていると、何と言うか…ジーク様の身体の大きさを凄く感じます。ドアを壊せるジーク様なら、私などギューッと力を籠めて抱きしめたら窒息死しそうな気が…いえ、そんな事ジーク様はしないでしょうけど。でも、人族とは違うのだと改めて感じました。
「あの…何が起きているんですか?」
未だに放してくれないジーク様との距離感が居た堪れなくて、私はジーク様から意識を逸らすためにそう問いかけました。
「ああ、何者かが隣の部屋に火矢を放ったらしい」
「火矢を?こんな時に?」
「ああ、今外で火矢を放った者を騎士が捕らえたようだ」
「え?もうですか?」
「今日は騎士が至る所に配置されているからな。詳しくはこれからだが…」
騎士さんの仕事の早さにも驚きですが、こんな状況で堂々と仕掛けてくるなんて、それはそれで強心臓ですね…警備が厳しいので、怪しい行動をとれば直ぐに捕まってしまうでしょうに。それとも、それも計算の上、なのでしょうか…
「ジーク、ここか」
今度はエリック様が現れました。やはりあの壊れたドアから入ってこられたようです。エリック様の後ろには、ドアを修復しようと騎士が三人程集まっているのが見えました。
「エリック、何かわかったか?」
「ああ、厨房だが、調理用の火にガッシの枝が紛れ込んだようだ」
「ガッシの枝が?」
「ああ。お陰で煙を吸い込んだ料理人と見習いが眠り込んでしまった。ボヤが起きたのはそのせいらしい」
ガッシの枝は、眠り薬の原料になる木の枝です。木の枝を乾燥させて粉末にすれば眠り薬になりますが、あの枝を燻しても同じ効果があると聞きます。それじゃ…
「陛下、恐れながら申し上げます。それでしたら隣の部屋の煙もそうかもしれません。独特の臭いがしましたから」
「何?」
女性騎士がそう言うと、ジーク様とエリック様は顔を見合わせると、エリック様は調べてくるといって出ていかれました。確かに、隣の部屋は火の勢いの割に煙が多かったように感じます。もしかすると、あの火矢はガッシの枝で作られたのでしょうか…
「…とにかくここは危険だ。移動しよう」
ジーク様がそう仰って、私達はまた移動になりました。
「どうしてここに?!」
避難した部屋の奥の間で髪を整えて貰っていた私は、そう叫ぶ声の方に視線を向けました。ドアの向こうに見えたのは、割れたガラスと炎を纏うカーテンでした。こんな王宮の警備が厳重な場所で突然カーテンが燃え上がるなど、尋常ではありません。私は直ぐに部屋を出ようと、侍女に付き添われて廊下に続くドアに向かいましたが…
「え?か、鍵が…っ?!」
ドアを開けようとした侍女が必死にドアを開けようとしますが、鍵がかかっているのか開きません。鍵は内側からしか掛けられない筈ですし、解除されているのにどういう事でしょうか?
仕方なく、先ほどこの部屋に入った隣の部屋との間にあるドアに向かいましたが…先に隣の部屋に足を踏み入れようとした侍女の動きが止まりました。
「…っ!煙が…」
「そんな…」
隣の部屋に続くドアからは煙が充満して室内はほぼ真っ白に見え、騎士達が消火している様な姿が浮かび上がっています。窓のカーテンの火は大した事がなかったようで、広がっている様にはみえませんが、勢いの割には煙の量が多い様に思います。でもこの煙の臭い、妙な甘さというか甘酸っぱい感じがして…変な感じがします。
「煙を吸い込まないで下さい!」
私が煙の臭いを気にしていると、側にいた女性騎士が、口元を袖で覆いながら叫びました。
「この煙、何か薬が混じっているかもしれません。口元を布か何かで覆って、身体を低くして吸い込まないようにしてください!」
女性騎士の言葉に、私もラウラも侍女たちも互いに顔を見合わせました。でも、直ぐに状況を理解してハンカチなどで口元を覆うと、煙の薄そうな場所へと移動して座り込みました。私達が移動している間に、女性騎士は煙が流れ込んでくる隣の部屋との間のドアを閉めました。これで隣室からこれ以上煙が入り込んでくることはないでしょう。
幸いにも隣室の火は大した事なさそうですし、煙も部屋のこちら側には流れてきません。この部屋から出たいところですが、私達がここにいるのはジーク様や騎士達も知っています。助けが来るまでお待ちくださいと女性騎士にも言われたため、私はラウラと侍女二人と一緒に待つ事にしました。色々と気にはなりますが、闇雲に動き回って皆さんの足を引っ張るわけにもいきませんから。
「一体何が…」
それにしても王の結婚式でこの様な事態が起きるとは、どういう事でしょうか。今日は一際警備も厳しく、部外者の立ち入りも制限されています。式場のある建物周辺も、招待客や許可された者しか立ち入る事は出来ないと聞いています。
「さすがに火矢が放たれるとは思いませんでした」
「一体何のために…」
「この婚礼をよく思わない者の仕業、でしょうか…」
「それはまだ何とも…でも、マルダーンとラルセンが手を組むのを良しとしない国や者がいてもおかしくはないですからね」
「そうね」
侍女たちの言葉には私も同感でしたが、やっぱり気が重くなるのを感じました。ジーク様との結婚をよく思わない者がいると言われると、お前ではだめだと言われたような気がして、ざらりとした嫌な感覚に襲われました。
いえ、母国では母が生きていた十歳までしか教育を受けられなかったし、王女として色々足りないのは間違いなく、そう思われても仕方ないのですが…今更ですが、この国に来てからもっとしっかり学んでおけばよかったです。ユリア先生たちのお陰で前よりマシにはなっていますが…半年程度ではまだまだ不十分でしょう…
「エリサ!どこだ!」
「ラウラ!返事をしてくれ!どこにいるんだ?!」
ラウラ達と一緒に部屋の片隅で助けを待っていた私は、私を呼ぶジーク様の声に顔をあげました。声はドアの向こうの廊下からしているようです。
「…ジーク様!」
「レイフ様、ここにいます!」
「…っ!エリサ?ここか!」
どうやら廊下の向こう側にいらっしゃったようで、ジーク様は私の声に直ぐ気が付いて下さいました。ドアノブを回す音がしましたが、音がするだけで開かないところを見ると、やはり鍵がかかっているようです。
「エリサ、鍵を解除してくれ」
「鍵はかけていません。でも、こちら側からも開かないんです」
「なんだと?!」
どうやら向こう側からも鍵がかかっていないようです。という事は、このドアに何か細工がされているという事でしょうか…一体何のために…
「ドアから離れてくれ」
「は、はい」
私達はジーク様の言う通り、ドアから離れました。壁の側で身を屈めていると、ドアが悲鳴のような物凄い音を立てました。えっと…ドア…が…
「エリサっ!」
既にドアの役目を果たさなくなったそれの間から現れたのは、ジーク様でした。ジ、ジーク様、もしかしてドア、破壊しちゃった…のですか…竜人は物凄く強いと聞きましたが、まさかドアを素手で壊せるとは思わず、私は目の前の景色を呆然と眺めていました。そんな私の視界に、剣を手にしたレイフ様がラウラに駆け寄っているのが見えました。えっと、ドアを壊したのはレイフ様…でしょうか?
「無事でよかった!」
ラウラ達の様子に気を取られていた私は、次の瞬間にはがっつりと拘束されている自分を自覚しました。目の前に広がった色は私と同じものですが…ち、近いです、ジーク様…いえ、それよりも…
「い、痛いですっ」
「…っ!す、すまないっ!」
えっと、渾身の力で抱きしめられていたのでしょうか…力も凄いですが、ジーク様の衣装に付いている金属製の勲章などが顔に当たってそちらの方が痛いです。幸いすぐに力を緩めて下さいましたが、それでも解放はして貰えず、少しだけ身体を離したジーク様は私の全身を見下ろしてきました。うう、今はまだ髪を結っていた途中ですし、ドレスも簡易なものだし、お化粧もしていないので、こんな姿を見られるのは非常に不本意なのですが…
「どこも怪我は…」
「ないです。皆さんが守ってくださいましたから」
不安げに金色の瞳を揺らしたジーク様の様子から、かなり心配をかけてしまったようです。私は何とか笑みを浮かべてそう答えましたが…笑顔がぎこちなかった自覚があります。
というのも、ここまで近づいた事がなかったので、この距離に動揺してしまったのです。こうしていると、何と言うか…ジーク様の身体の大きさを凄く感じます。ドアを壊せるジーク様なら、私などギューッと力を籠めて抱きしめたら窒息死しそうな気が…いえ、そんな事ジーク様はしないでしょうけど。でも、人族とは違うのだと改めて感じました。
「あの…何が起きているんですか?」
未だに放してくれないジーク様との距離感が居た堪れなくて、私はジーク様から意識を逸らすためにそう問いかけました。
「ああ、何者かが隣の部屋に火矢を放ったらしい」
「火矢を?こんな時に?」
「ああ、今外で火矢を放った者を騎士が捕らえたようだ」
「え?もうですか?」
「今日は騎士が至る所に配置されているからな。詳しくはこれからだが…」
騎士さんの仕事の早さにも驚きですが、こんな状況で堂々と仕掛けてくるなんて、それはそれで強心臓ですね…警備が厳しいので、怪しい行動をとれば直ぐに捕まってしまうでしょうに。それとも、それも計算の上、なのでしょうか…
「ジーク、ここか」
今度はエリック様が現れました。やはりあの壊れたドアから入ってこられたようです。エリック様の後ろには、ドアを修復しようと騎士が三人程集まっているのが見えました。
「エリック、何かわかったか?」
「ああ、厨房だが、調理用の火にガッシの枝が紛れ込んだようだ」
「ガッシの枝が?」
「ああ。お陰で煙を吸い込んだ料理人と見習いが眠り込んでしまった。ボヤが起きたのはそのせいらしい」
ガッシの枝は、眠り薬の原料になる木の枝です。木の枝を乾燥させて粉末にすれば眠り薬になりますが、あの枝を燻しても同じ効果があると聞きます。それじゃ…
「陛下、恐れながら申し上げます。それでしたら隣の部屋の煙もそうかもしれません。独特の臭いがしましたから」
「何?」
女性騎士がそう言うと、ジーク様とエリック様は顔を見合わせると、エリック様は調べてくるといって出ていかれました。確かに、隣の部屋は火の勢いの割に煙が多かったように感じます。もしかすると、あの火矢はガッシの枝で作られたのでしょうか…
「…とにかくここは危険だ。移動しよう」
ジーク様がそう仰って、私達はまた移動になりました。
73
お気に入りに追加
9,171
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。