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魔力暴走
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「魔力を…吸い上げる?」
その女性からの言葉が、私には直ぐには理解出来ず、おうむ返しになってしまいました。セレン様は魔力を使い過ぎて魔力切れになっているのではないでしょうか。先ほどから散々あの異形相手に術を使っていたのです。そんな状態でこれ以上魔力を失ったら…
「ああ、ルネの思っている事と真逆なのよ。今のセレンは久しぶりに魔術を使ったのもあって、コントロール出来ずに暴走しかけているの。ううん、もう暴走が始まっているわ。このままじゃ魔力がセレンの身体を食い破ってしまう。それを解消出来るのは、相性が良くて器が大きいルネしかいないの。お願い、時間がないわ、早くして」
「でも…どうやって…」
いきなり魔力を吸い上げろと言われても…どうすればいいのでしょうか。そう思った私でしたが…
「セレンから魔力を受け取ったでしょ?それと同じ事をすればいいのよ」
セレン様から魔力をって…私はここ数日繰り返されたセレン様との魔力交換を思い出しましたが…
「ええっ?あれ…が?」
「そう、それ。でも今のセレンは意識がないから、いつもみたいにコントロールできない。もしかしたら受け入れ過ぎて死んじゃうかもしれないけど」
「死ぬ…」
「そう。器以上に受け入れたら死ぬわ。でも、このまま放っておいたらセレンは死ぬ。ううん、ここにいる全員、巻き添えで死ぬ事になるわ」
「巻き添え…って?」
「セレンが言ってたでしょ?魔力暴走を起こしたら王宮くらい吹っ飛ぶかもって。あれ、冗談じゃないから」
確かにセレン様は王太子殿下にもそのように話していました。あれは誇張して言っているのかと思っていましたが…言われた事の内容が突拍子過ぎるのに、今までに聞いていた事と妙に合う部分もあって、私は彼女の言葉を否定する事が出来ませんでした。それに、このままだとセレン様が死んでしまうと言われた事にショックを受けていました。
「いつもって…あの…キ…」
「そう。口で受け渡ししてたでしょ?あれの事よ」
「……」
「きっと一気に魔力がルネに入るわ。気を付けないとルネの器も壊れるから、限界を感じたら直ぐに離れて」
そ、そんな…あれをこんな人がたくさんいる前で…最初に浮かんだのはそんな事でした。いえ、今はそんな事を気にしている場合じゃないのですが…
「ごめん、ルネ。もう時間がないの。セレンの身体が耐えきれなくなったら終わりよ」
再度かけられた声にハッと意識をセレン様に向けると、セレン様は益々苦しそうにしています。どうしてこの状態で魔力暴走がとか、この女性は誰なのかなどの疑問も浮かびましたが、セレン様が苦しんでいるのは間違いなく、多分、女性の言っている事も嘘ではないのでしょう。そして、私にはこの女性が言う事以外の手段を何も持っていないのです。
「あれは私が抑えとくから、早くお願い」
そうでした。あの異形はまだ戦える状態なのです。今はセレン様が作ったらしい膜の中に閉じ込められていて攻撃してきませんが、何も終わっていないのです。あれを女性に任せて大丈夫なのかとの疑問もありますが、今は彼女を信じてセレン様を助けるのが先でしょう。
(ま、魔力を受け取るだけだから…これは治療…なのよ)
自分から口付けするなんて…そう思いますが、もう迷っている時間もありません。私は…心の中でセレン様に謝りながら…そっと唇をセレン様のそれに重ねました。
(…!!!)
唇を合わせた途端、何かが物凄い勢いで私の中に流れ込んでくるのを感じました。あの女性が言っていた通り、これまでの魔力量とはけた違いで、あまりの勢いに身体が硬直して動きません。まるで身体の内側から外に向かって何かが飛び出そうとしている感じがして、それが痛みとなって全身を蝕み始めました。まるで身体の内側から無数の針で刺されているようです。
(こ、んな……)
余りの痛みに意識が遠くなりそうです。でも、頃合いを見て離れないと私も死んでしまうと言われた言葉に、私は辛うじて踏み止まっていました。私の事よりも、セレン様が死んでしまう方が嫌です。その一心で暴力的な力の流入にも必死で耐えました。何があっても、私、は…
「ルネ!もういいわ!これ以上は!」
女性の声がどこか遠くで聞こえた気がしましたが…それっきり私の意識は途絶えたのでした。
その女性からの言葉が、私には直ぐには理解出来ず、おうむ返しになってしまいました。セレン様は魔力を使い過ぎて魔力切れになっているのではないでしょうか。先ほどから散々あの異形相手に術を使っていたのです。そんな状態でこれ以上魔力を失ったら…
「ああ、ルネの思っている事と真逆なのよ。今のセレンは久しぶりに魔術を使ったのもあって、コントロール出来ずに暴走しかけているの。ううん、もう暴走が始まっているわ。このままじゃ魔力がセレンの身体を食い破ってしまう。それを解消出来るのは、相性が良くて器が大きいルネしかいないの。お願い、時間がないわ、早くして」
「でも…どうやって…」
いきなり魔力を吸い上げろと言われても…どうすればいいのでしょうか。そう思った私でしたが…
「セレンから魔力を受け取ったでしょ?それと同じ事をすればいいのよ」
セレン様から魔力をって…私はここ数日繰り返されたセレン様との魔力交換を思い出しましたが…
「ええっ?あれ…が?」
「そう、それ。でも今のセレンは意識がないから、いつもみたいにコントロールできない。もしかしたら受け入れ過ぎて死んじゃうかもしれないけど」
「死ぬ…」
「そう。器以上に受け入れたら死ぬわ。でも、このまま放っておいたらセレンは死ぬ。ううん、ここにいる全員、巻き添えで死ぬ事になるわ」
「巻き添え…って?」
「セレンが言ってたでしょ?魔力暴走を起こしたら王宮くらい吹っ飛ぶかもって。あれ、冗談じゃないから」
確かにセレン様は王太子殿下にもそのように話していました。あれは誇張して言っているのかと思っていましたが…言われた事の内容が突拍子過ぎるのに、今までに聞いていた事と妙に合う部分もあって、私は彼女の言葉を否定する事が出来ませんでした。それに、このままだとセレン様が死んでしまうと言われた事にショックを受けていました。
「いつもって…あの…キ…」
「そう。口で受け渡ししてたでしょ?あれの事よ」
「……」
「きっと一気に魔力がルネに入るわ。気を付けないとルネの器も壊れるから、限界を感じたら直ぐに離れて」
そ、そんな…あれをこんな人がたくさんいる前で…最初に浮かんだのはそんな事でした。いえ、今はそんな事を気にしている場合じゃないのですが…
「ごめん、ルネ。もう時間がないの。セレンの身体が耐えきれなくなったら終わりよ」
再度かけられた声にハッと意識をセレン様に向けると、セレン様は益々苦しそうにしています。どうしてこの状態で魔力暴走がとか、この女性は誰なのかなどの疑問も浮かびましたが、セレン様が苦しんでいるのは間違いなく、多分、女性の言っている事も嘘ではないのでしょう。そして、私にはこの女性が言う事以外の手段を何も持っていないのです。
「あれは私が抑えとくから、早くお願い」
そうでした。あの異形はまだ戦える状態なのです。今はセレン様が作ったらしい膜の中に閉じ込められていて攻撃してきませんが、何も終わっていないのです。あれを女性に任せて大丈夫なのかとの疑問もありますが、今は彼女を信じてセレン様を助けるのが先でしょう。
(ま、魔力を受け取るだけだから…これは治療…なのよ)
自分から口付けするなんて…そう思いますが、もう迷っている時間もありません。私は…心の中でセレン様に謝りながら…そっと唇をセレン様のそれに重ねました。
(…!!!)
唇を合わせた途端、何かが物凄い勢いで私の中に流れ込んでくるのを感じました。あの女性が言っていた通り、これまでの魔力量とはけた違いで、あまりの勢いに身体が硬直して動きません。まるで身体の内側から外に向かって何かが飛び出そうとしている感じがして、それが痛みとなって全身を蝕み始めました。まるで身体の内側から無数の針で刺されているようです。
(こ、んな……)
余りの痛みに意識が遠くなりそうです。でも、頃合いを見て離れないと私も死んでしまうと言われた言葉に、私は辛うじて踏み止まっていました。私の事よりも、セレン様が死んでしまう方が嫌です。その一心で暴力的な力の流入にも必死で耐えました。何があっても、私、は…
「ルネ!もういいわ!これ以上は!」
女性の声がどこか遠くで聞こえた気がしましたが…それっきり私の意識は途絶えたのでした。
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