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(…びっくり、した…)
既に夜も更けてレリアも下がり一人になった私は、ベッドの上に座り込んで昼間の事を思い出していました。今、身体の隅々まで、それこそ指の先まで、何か温かいものが確かに通っているのを感じます。聖女になってからずっと手足の先が冷たくて、酷い冷え性だと思っていました。冬はそのせいで眠れないほどだったのですが…セレン様の言うように、あれは常に聖力切れを起こしていたからでしょうか。暖かみのある身体は明らかにこれまでのものと違って、自分の身体じゃないみたいです。
(これが、セレン様の魔力…)
流し込まれた魔力は、温かく甘く感じられました。相性がいいとそう感じるそうで、逆に悪いと気分が悪くなるそうです。場合によっては拒否反応が起き、力が弱いと相手の魔力に負けて死んでしまうのだとか…セレン様の世界は魔力の技術が相当進んでいるようです。こちらの世界では…すっかり廃れていますものね。
(それにしても…)
ちょっと気を抜くと、意識はあの時の事に向かってしまいました。セレン様の匂いと、見た目よりもずっと固くて熱い身体、腕の力強さ、甘くて熱くて心地のよかった流れ入る大量の魔力、そして…触れた唇の感触…
あの時の事を思い出して、手が勝手に唇に触れていました。何だか自分のものじゃないみたいで、でもあの感触はとても強烈に残っています。思い出すだけで心臓がドキドキと跳ねてしまいます。跳ね過ぎて心臓が壊れないか心配になる程に…
(キス、した…のよね…)
改めてそう心の中でつぶやくと、頬が熱くなってきました。きっと今、私の顔は真っ赤に違いありません。誰もいないのが幸いでしょうか。でも、キ、キスだなんて…いえ、あれは魔力受け渡しの練習で、セレン様に他意はないのかもしれません。あれは私を気の毒に思っての事で…セレン様みたいなかっこいい大人の男性が、私なんかを相手にする筈がありませんものね。
「そうよ。きっと練習なのよ。だから、あれは…キ、キスじゃなくって…」
「くぅう?」
「ひゃぁ?!」
誰もいないからと思っている事が声になっていた私でしたが、いきなり飛び込んできた声に思わず悲鳴が出てしまいました。
「っ!ク、ククル…」
「きゅい」
いつの間にかベッドの上に上がり、キラキラした目で私を見上げるクルルに、私が思わず安堵の息がもれました。レリアかと思ったけれど、クルルだったのですね…クルルなら私の言っている意味が分からないので一安心です。
「もう、ビックリさせないで」
「きゅう?」
「ふふっ、可愛い…」
そっとその小さな体を抱きあげると、嬉しいのかふわふわの尻尾が揺れました。クリクリした目も全身で構って欲しいとアピールする仕草も、可愛くて仕方ありません。ふわりと身体を抱きしめると、クルルの身体からは爽やかな花のような匂いがしました。ああ、ふわふわの毛並みに気持ちが落ち着きます。
「さ、もう寝ましょう」
「くぅ」
暫くその柔らかい毛並みを堪能した私が横になってシーツを被ると、クルルも中に入ってきました。最初はダメと言ってベッドから出していましたが、何度言っても戻ってくるので、今は諦めて一緒に寝ています。でも、温かい存在に安心するせいか、クルルが一緒だととてもよく眠れるのですよね。
(それにしても…明日どんな顔してセレン様に会えばいいの…)
眠ろうと目を閉じた私でしたが、今度はその事に思い至って、その夜は中々寝付けませんでした。
「おはよう、ルネ。昨夜はよく眠れた?」
「ひゃぁ!」
どんな顔で会えばいいのかと散々悩みながらも、こんな事をレリアに話すわけにもいかない私は、一人悶々としながらもいつも通りセレン様と朝食を摂る為にダイニングに向かいましたが…急に声を掛けられて、思わず大きな声が出てしまいました。側に居たレリアが怪訝な表情を浮かべています。うう、変に思われてしまったでしょうか…
「ふふ、元気そうでよかった。昨日は大丈夫だったかい?無理せずゆっくりやっていこうか」
「へ…」
思わず変な声が出てしまいましたが…それは今日も昨日のあれをすると言う事でしょうか…いえ、あれは試してみるかと言われてやっただけなので、毎日する事ではない、ですよね?そう思った私でしたが…
「あ、あの…まさか、今日も?」
「当然だろう?国王は召喚の儀をする気でいるみたいだし、そうなればルネの聖力を使う気なんだ。今のままじゃ確実に聖力切れを起こしてしまう」
「で、でも…」
「どうかした?もしかして…あれから気分が悪くなった?」
「い、いえ、そんな事はありませんでしたが…」
「だったらいいだろう?私は魔力が多すぎて身体に負担がかかっているし、ルネは不足して体調が悪い。ルネに魔力を渡す事はお互いにメリットがあるからね」
「そ、それは、そうですが…」
「私とキスするのは、嫌?」
「そ、そんな、んじゃ…」
嫌ってわけじゃないけど、なんて言うか…セレン様こそ私とキ、キスなんて嫌じゃないでしょうか…それに…
「あの、皆さんに見られますし…」
「ん?あ、ああ。そこは心配ないよ。魔術でわからないようにしてるから」
「はぁ?」
「魔術で幻影を見せているんだよ。彼らにはいつも通りお茶して会話しているようにしか見えないから」
「ま、魔術で…ってそんな事まで…?」
「そうだね。ついでに音も聞こえないようにしているから。大丈夫だよ」
「……」
何も問題ないとにっこり笑顔を浮かべられたセレン様でしたが…なんて事でしょうか…魔術ってそんな事も出来るのですか。一体セレン様はどこまでの事をお出来になるのでしょう…そんな事に気を取られていた私でしたが、その後あっという間に腕の中に捕らわれて、またキスを、魔力の受け渡しをされたのでした。
既に夜も更けてレリアも下がり一人になった私は、ベッドの上に座り込んで昼間の事を思い出していました。今、身体の隅々まで、それこそ指の先まで、何か温かいものが確かに通っているのを感じます。聖女になってからずっと手足の先が冷たくて、酷い冷え性だと思っていました。冬はそのせいで眠れないほどだったのですが…セレン様の言うように、あれは常に聖力切れを起こしていたからでしょうか。暖かみのある身体は明らかにこれまでのものと違って、自分の身体じゃないみたいです。
(これが、セレン様の魔力…)
流し込まれた魔力は、温かく甘く感じられました。相性がいいとそう感じるそうで、逆に悪いと気分が悪くなるそうです。場合によっては拒否反応が起き、力が弱いと相手の魔力に負けて死んでしまうのだとか…セレン様の世界は魔力の技術が相当進んでいるようです。こちらの世界では…すっかり廃れていますものね。
(それにしても…)
ちょっと気を抜くと、意識はあの時の事に向かってしまいました。セレン様の匂いと、見た目よりもずっと固くて熱い身体、腕の力強さ、甘くて熱くて心地のよかった流れ入る大量の魔力、そして…触れた唇の感触…
あの時の事を思い出して、手が勝手に唇に触れていました。何だか自分のものじゃないみたいで、でもあの感触はとても強烈に残っています。思い出すだけで心臓がドキドキと跳ねてしまいます。跳ね過ぎて心臓が壊れないか心配になる程に…
(キス、した…のよね…)
改めてそう心の中でつぶやくと、頬が熱くなってきました。きっと今、私の顔は真っ赤に違いありません。誰もいないのが幸いでしょうか。でも、キ、キスだなんて…いえ、あれは魔力受け渡しの練習で、セレン様に他意はないのかもしれません。あれは私を気の毒に思っての事で…セレン様みたいなかっこいい大人の男性が、私なんかを相手にする筈がありませんものね。
「そうよ。きっと練習なのよ。だから、あれは…キ、キスじゃなくって…」
「くぅう?」
「ひゃぁ?!」
誰もいないからと思っている事が声になっていた私でしたが、いきなり飛び込んできた声に思わず悲鳴が出てしまいました。
「っ!ク、ククル…」
「きゅい」
いつの間にかベッドの上に上がり、キラキラした目で私を見上げるクルルに、私が思わず安堵の息がもれました。レリアかと思ったけれど、クルルだったのですね…クルルなら私の言っている意味が分からないので一安心です。
「もう、ビックリさせないで」
「きゅう?」
「ふふっ、可愛い…」
そっとその小さな体を抱きあげると、嬉しいのかふわふわの尻尾が揺れました。クリクリした目も全身で構って欲しいとアピールする仕草も、可愛くて仕方ありません。ふわりと身体を抱きしめると、クルルの身体からは爽やかな花のような匂いがしました。ああ、ふわふわの毛並みに気持ちが落ち着きます。
「さ、もう寝ましょう」
「くぅ」
暫くその柔らかい毛並みを堪能した私が横になってシーツを被ると、クルルも中に入ってきました。最初はダメと言ってベッドから出していましたが、何度言っても戻ってくるので、今は諦めて一緒に寝ています。でも、温かい存在に安心するせいか、クルルが一緒だととてもよく眠れるのですよね。
(それにしても…明日どんな顔してセレン様に会えばいいの…)
眠ろうと目を閉じた私でしたが、今度はその事に思い至って、その夜は中々寝付けませんでした。
「おはよう、ルネ。昨夜はよく眠れた?」
「ひゃぁ!」
どんな顔で会えばいいのかと散々悩みながらも、こんな事をレリアに話すわけにもいかない私は、一人悶々としながらもいつも通りセレン様と朝食を摂る為にダイニングに向かいましたが…急に声を掛けられて、思わず大きな声が出てしまいました。側に居たレリアが怪訝な表情を浮かべています。うう、変に思われてしまったでしょうか…
「ふふ、元気そうでよかった。昨日は大丈夫だったかい?無理せずゆっくりやっていこうか」
「へ…」
思わず変な声が出てしまいましたが…それは今日も昨日のあれをすると言う事でしょうか…いえ、あれは試してみるかと言われてやっただけなので、毎日する事ではない、ですよね?そう思った私でしたが…
「あ、あの…まさか、今日も?」
「当然だろう?国王は召喚の儀をする気でいるみたいだし、そうなればルネの聖力を使う気なんだ。今のままじゃ確実に聖力切れを起こしてしまう」
「で、でも…」
「どうかした?もしかして…あれから気分が悪くなった?」
「い、いえ、そんな事はありませんでしたが…」
「だったらいいだろう?私は魔力が多すぎて身体に負担がかかっているし、ルネは不足して体調が悪い。ルネに魔力を渡す事はお互いにメリットがあるからね」
「そ、それは、そうですが…」
「私とキスするのは、嫌?」
「そ、そんな、んじゃ…」
嫌ってわけじゃないけど、なんて言うか…セレン様こそ私とキ、キスなんて嫌じゃないでしょうか…それに…
「あの、皆さんに見られますし…」
「ん?あ、ああ。そこは心配ないよ。魔術でわからないようにしてるから」
「はぁ?」
「魔術で幻影を見せているんだよ。彼らにはいつも通りお茶して会話しているようにしか見えないから」
「ま、魔術で…ってそんな事まで…?」
「そうだね。ついでに音も聞こえないようにしているから。大丈夫だよ」
「……」
何も問題ないとにっこり笑顔を浮かべられたセレン様でしたが…なんて事でしょうか…魔術ってそんな事も出来るのですか。一体セレン様はどこまでの事をお出来になるのでしょう…そんな事に気を取られていた私でしたが、その後あっという間に腕の中に捕らわれて、またキスを、魔力の受け渡しをされたのでした。
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