上 下
211 / 238

結婚式の準備

しおりを挟む
 その後、ランチの時にお互いの結婚式の予定を話し合いました。家格が同じなので式を挙げる会場も同じですし、私は急に決まったのもあって卒業後すぐに…とはなりそうもありません。これなら日程が被る事はなさそうです。

「それにしても大変だったみたいね」
「ええ。もう…」

 思い出すだけでぐったり疲れそうな創世祭以降の出来事を、私は他言無用でと前置きしてから話しました。まぁ、どうせベルティーユ様もご存じだとは思いますが、さすがに詳細まではご存じなかったようで、話し終えた頃にはため息ともつかない息をついていました。あ、勿論お兄様の女装やセレスティーヌ様との結婚が偽装である事は内緒です。

「それは…お疲れ様?」

 ベルティーユ様も他にどういっていいのかわからないと言った感じですわね。でも、実際そんな感じだったのです。まぁ、エストレ国のお二人のインパクトが強すぎて、却って荒唐無稽にすら思えてしまうほどです。

「それで…婚約者とはどうなの?結婚したからには関係も進んだのかしら?」

 うう、やっぱりそうなりますわよね…その質問は予想していましたが…

「はぁあ?ろくに話もしていない?」

 あれからリシャール様との時間が殆ど取れず、最近では顔を合わせる時間もないと話すと、ベルティーユ様が驚きの声を上げました。やっぱりそう思いますよね…そして驚かれる情況で間違っていなかったのだと改めて知って、一気に気落ちしましたわ…

「何やっているのよ、あなた達…」
「それが…」

 肝心のリシャール様は連日お父様と一緒に王宮に伺候していますし、お休みの日も大事な用があると言って出かけてしまわれたのです。どこに…までは聞いていませんが…

「そこ、ちゃんと聞くところでしょう?」
「でも…あんまり束縛したら鬱陶しがられるかと思って…」

 そうなのです。私が無理を言って成した婚約で、私の事情で成った婚姻です。だからリシャール様の意思はあまり反映していないのが現状です。そりゃあ、婚姻の際にはリシャール様が私よりも先に是と仰って下さいましたが…

「まぁ…貴女の押しの強さは規格外だけど…でも、彼だって嫌がっている感じじゃなかったわよ」

 うう、やっぱり私、押しが強いのですね。いえ、自覚はありましたけど、改めて言われるとちょっとショックですわ…

「まぁ、そんなところも貴女らしいんじゃない?」
「そうでしょうか…」
「でも、新婚の新妻を放って外出は気になるわね」

 やっぱりそう思いますよね?そりゃあ、リシャール様にも個人的な交友はあるので、全て私優先でなんて言えませんし、報告しろと言うつもりなんてありませんが…

「まぁ、急に結婚が決まったし、彼も実家や親族への報告なんかもあるのではなくて?」
「確かに、そうですわね」

 そう言えばマルロー子爵家に連絡しましたが、まだご挨拶に行けていないのですよね。お父様とリシャール様がお忙しいのもありますし、マルロー子爵家も先日のエストレ国の対応をして頂いたせいで御多忙らしいですし、テオドール様の事もあります。中々訪問する日程が合わないのです。
 でも、リシャール様もご自身の商会の事もありますし、確かにお忙しいのは間違いないでしょう。商会もお店も人に任せているとはいえ、オーナーは今でもリシャール様なのですから。

「まぁ、気になるなら影に聞けばいいじゃない」
「でも…」

 確かにリシャール様には護衛として影を付けていますが…監視しているわけではありません。そこまで束縛するのは…どうかと思うのですよね。

「別に行き先くらいは把握していてもいいでしょう?影を持っている家はそうしているわよ」
「え?じゃベルティーユ様も?」
「私も一応ロイクには付けているわよ。どうせロイクも私に付けているでしょうしね」

 確かに高位貴族でも上の方や王家は、婚約者にも護りの影を付ける事は珍しくありませんが…い、行き先くらいなら…問題ないでしょうか。何をしているかまでは聞きませんし…

「まぁ、あの婚約者が貴女を裏切るなんて天地がひっくり返ってもあり得ないと思うけどね」

 ベルティーユ様は自信たっぷりにそう言いましたが…もしそんな風に見えているのなら…心配する必要はない、のでしょうか…




しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

処理中です...