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表舞台から去る王女達
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イネス様の告白を聞いて、お二人は呆けたようにイネス様を見上げていましたが、騎士たちがお二人を拘束しようとすると、アドリエンヌ様が騒ぎだしました。
「レアンドル様!助けて下さいっ!」
尚もお兄様に手を伸ばして助けを乞う姿に、私は呆れよりも憐れみを感じました。こうも嫌われているのに理解出来ないのはどういう事でしょうか。
「貴女様は私に何をしてくれましたか?」
「え?」
意外にも、お兄様がアドリエンヌ様に静かに問いかけました。
「私がもう放っておいて欲しいと、お気持ちには応えられないと何度も申し上げましたが、貴女様は何をなさいましたか?」
「な、何って…」
「私が困っていても、貴女様は一切聞き入れなかった。そんな貴女様を私が助けると、何故思われるのでしょうか?
「……」
お兄様の言葉に、アドリエンヌ様が目を見開いて立ち尽くしました。
「私は国にも戻れず、身を隠すしかなかった。そのために家族や友人に多大な心配を掛けました。そんな私を匿い、手を差し伸べて下さったのがセレスティーヌ様です」
「あ、あの女が…」
「大恩あるセレスティーヌ様を襲う計画を立てた貴女を、私は一生許す事はありません」
「…あ……」
これ以上ない、静かな拒絶に、とうとうアドリエンヌ様は伸ばした手を所在なく下ろすしか出来なかったようです。今度こそ二人は静かに騎士たちに囲まれて連行されていきました。
「ロアール国王陛下と王太子殿下、そしてラフォン侯爵家の皆様。この場にお立会い下さり、ありがとうございました」
二人がドアの向こうに消えた後、イネス様が深々と頭を下げて謝罪されました。
「いや、イネス殿とて被害者の一人。そのような謝罪は不要だ」
「いいえ、そう言うわけには参りません。私もエストレ国の王族であり、仮とは言え彼らの母。彼らの罪の責任は私にもございます」
そうきっぱりと仰るイネス様ですが…何となくですが、彼女は全てを飲み込んだ上で膿を出し切るため、ご自身をも利用するおつもりのような気がしてきました。そんな事はあってはならないと思いますが、他国の事に口を出すのも憚られます。そして、ここで温情を我が国が下す事もまた、両国にとっては長い目で見ればマイナスになるのです。国力の差をはっきりさせる事は、周辺国との関係も絡んで疎かには出来ないのですから。
彼女がお慕いする方がどなたかは存じませんが、きっと彼女に似た立派な方なのでしょうね。その方との未来が繋がるといいのですが…
「王太子殿下、そしてラフォンの若いお方々。どうか私達のような愚を繰り返しませんよう、心よりお願い申し上げます」
「勿論です、イネス様。今後も両国のためにご尽力頂ける事を願っています」
「…ありがとうございます」
王太子殿下の言葉にイネス様は一瞬目を瞠りました。今後があるとはお考えではなかったのでしょう。ですがこれまでの経緯を知り、単身我が国を訪れたイネス様なら両国間の発展にきっとその能力を発揮して、より良い関係を望めるような気がします。
「王太子の言う通りじゃ。我が国としてもイネス殿の貢献は十分に存じている。どうか今後も若い者達を導いてやって欲しい」
「ご厚情、心より感謝いたします」
こうして、我が国だけでなくリスナール国にも暗雲をもたらした王女達の裁きは終わりました。後は帰国後に正式な処分が下りる事になるそうですが、どんなに軽く見積もっても生涯幽閉、場合によっては処刑もあり得るそうです。
新しく王位に就いたヴィクトル国王陛下は公明正大で、傾きつつあるエストレ国を支えてきた御仁です。リスナール国でもその手腕は評価されていたと聞きますので、きっとこれからはいい方向に向かうでしょう。私達の代になる頃には、両国の関係が明るくなることを願うばかりです。
「レアンドル様!助けて下さいっ!」
尚もお兄様に手を伸ばして助けを乞う姿に、私は呆れよりも憐れみを感じました。こうも嫌われているのに理解出来ないのはどういう事でしょうか。
「貴女様は私に何をしてくれましたか?」
「え?」
意外にも、お兄様がアドリエンヌ様に静かに問いかけました。
「私がもう放っておいて欲しいと、お気持ちには応えられないと何度も申し上げましたが、貴女様は何をなさいましたか?」
「な、何って…」
「私が困っていても、貴女様は一切聞き入れなかった。そんな貴女様を私が助けると、何故思われるのでしょうか?
「……」
お兄様の言葉に、アドリエンヌ様が目を見開いて立ち尽くしました。
「私は国にも戻れず、身を隠すしかなかった。そのために家族や友人に多大な心配を掛けました。そんな私を匿い、手を差し伸べて下さったのがセレスティーヌ様です」
「あ、あの女が…」
「大恩あるセレスティーヌ様を襲う計画を立てた貴女を、私は一生許す事はありません」
「…あ……」
これ以上ない、静かな拒絶に、とうとうアドリエンヌ様は伸ばした手を所在なく下ろすしか出来なかったようです。今度こそ二人は静かに騎士たちに囲まれて連行されていきました。
「ロアール国王陛下と王太子殿下、そしてラフォン侯爵家の皆様。この場にお立会い下さり、ありがとうございました」
二人がドアの向こうに消えた後、イネス様が深々と頭を下げて謝罪されました。
「いや、イネス殿とて被害者の一人。そのような謝罪は不要だ」
「いいえ、そう言うわけには参りません。私もエストレ国の王族であり、仮とは言え彼らの母。彼らの罪の責任は私にもございます」
そうきっぱりと仰るイネス様ですが…何となくですが、彼女は全てを飲み込んだ上で膿を出し切るため、ご自身をも利用するおつもりのような気がしてきました。そんな事はあってはならないと思いますが、他国の事に口を出すのも憚られます。そして、ここで温情を我が国が下す事もまた、両国にとっては長い目で見ればマイナスになるのです。国力の差をはっきりさせる事は、周辺国との関係も絡んで疎かには出来ないのですから。
彼女がお慕いする方がどなたかは存じませんが、きっと彼女に似た立派な方なのでしょうね。その方との未来が繋がるといいのですが…
「王太子殿下、そしてラフォンの若いお方々。どうか私達のような愚を繰り返しませんよう、心よりお願い申し上げます」
「勿論です、イネス様。今後も両国のためにご尽力頂ける事を願っています」
「…ありがとうございます」
王太子殿下の言葉にイネス様は一瞬目を瞠りました。今後があるとはお考えではなかったのでしょう。ですがこれまでの経緯を知り、単身我が国を訪れたイネス様なら両国間の発展にきっとその能力を発揮して、より良い関係を望めるような気がします。
「王太子の言う通りじゃ。我が国としてもイネス殿の貢献は十分に存じている。どうか今後も若い者達を導いてやって欲しい」
「ご厚情、心より感謝いたします」
こうして、我が国だけでなくリスナール国にも暗雲をもたらした王女達の裁きは終わりました。後は帰国後に正式な処分が下りる事になるそうですが、どんなに軽く見積もっても生涯幽閉、場合によっては処刑もあり得るそうです。
新しく王位に就いたヴィクトル国王陛下は公明正大で、傾きつつあるエストレ国を支えてきた御仁です。リスナール国でもその手腕は評価されていたと聞きますので、きっとこれからはいい方向に向かうでしょう。私達の代になる頃には、両国の関係が明るくなることを願うばかりです。
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