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今ここで婚姻?
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(リ、リシャール様との婚姻を、今、ここで…?)
陛下の言葉に私は、まじまじと陛下を見つめてしまいました。目が合うと陛下は少しだけ表情を和らげて、その眼に悪戯っぽい光を浮かべたようにも見えます。で、でも…
「陛下、さすがにそれは先走り過ぎではありませんか?」
すかさずお父様が止めに入ってしまい、私はわずかに落胆を感じてしまいました。リシャール様に視線を向けると、リシャール様も驚きの表情を浮かべていましたが、私の視線に気が付くと僅かに目を瞠った後に微笑んで下さいました。その笑みは…どう受け止めたらいいのでしょうか。
「だが侯爵。エストレ国の王太子の要求を突っぱねるにはこれが一番だぞ?」
「それはそうですが…」
お父様としても、エストレ国の王太子殿下の態度に思うところがおありなのでしょうか。完全に否定されないという事は、それだけしつこい…と思った方がよさそうですのね。
「…レティはどうしたい?リシャールも」
不意にお父様がそうお尋ねになりました。これって…
「エストレ国の王太子はあの王女の兄だけはあるぞ」
「それって…」
もうこうなると、悪い予感は確定なのですわね。王太子まで奇天烈だなんて…あの国の未来が心配ですわ。そして、そんなところに嫁いだ自分の未来も…
でも、ここで是と答えていいのでしょうか。急すぎる話ですし、リシャール様だって心の準備と言いますか、ご都合がおありでしょう。元より私のごり押しで結んだ婚約なのです。そしてリシャール様は強引な女性が苦手だと伺っていますわ…
(私としては今すぐでも構いませんわ。むしろウエルカムですけれど…)
そうは思いますが、身分も立場も上の私が答えるのは、ある意味命令です。それはさすがに…そう思って答えられなかった私でしたが…
「私は、謹んでお受けいたします」
「ええっ?!」
な、何とリシャール様が先にお受けすると仰いました。ちょ…待ってください、リシャール様!一生の事をこんなにあっさり了承しちゃっていいのですか?そりゃあ、私としては嬉しい限りですし、もう土下座してでもお願いしたい案件ではありますが…
私だけでなく、お父様達も驚きの表情でリシャール様を見ていますわ。ああでも、お兄様だけは何だかにやけた表情ですわね。これ、絶対に面白がっていますわ。
「どうしました、レティ?もしかして…お嫌でしたか?」
私が答えなかったせいか、リシャール様が不安そうに瞳を揺らしてそう尋ねられました。そ、そんな表情は反則ですわ…!胸に強矢が刺さったような衝撃を感じたのは…気のせいでしょうか…
「と…、とんでもありませんわ!嫌だなんて、そんな事は永遠にあり得ません!むしろ大歓迎です!お願いしたいのは私の方ですもの!」
思わず立ち上がってそう力説してしまいました。し、失敗しましたわ、陛下と殿下がいる前で立ち上がってしまうなんて…恥ずかしさに逃げ出したくなる想いで座り直しましたが…皆さん、視線が生暖かくて却って居た堪れないのですが…
「ほほう、レティシア嬢は素直で情熱的じゃのう」
「私の娘ですから」
「ああ、まさにラフォンじゃのう。よいよい、二人がそう言うのであればそうしようではないか」
そう言うと陛下は、侍従に何やらお命じになり、暫くするとトレイに書類を乗せて現れました。テーブルに示されたそれは…婚姻の書類、ですわね…見るのは初めてですが…
「さぁ、レティシア嬢、サインを」
そう言って陛下に促されるままサインしました。その後でリシャール様とお父様、そして陛下のサインが淀みなく記されていきます。そして…あっという間に婚姻を承認する書類が出来上がってしまいました。
「ここにラフォン侯爵令嬢レティシアと、ファリエール伯爵令息リシャールの婚姻を認める」
陛下が重々しくそう宣言し、私達は深々と頭を下げたのでした。
陛下の言葉に私は、まじまじと陛下を見つめてしまいました。目が合うと陛下は少しだけ表情を和らげて、その眼に悪戯っぽい光を浮かべたようにも見えます。で、でも…
「陛下、さすがにそれは先走り過ぎではありませんか?」
すかさずお父様が止めに入ってしまい、私はわずかに落胆を感じてしまいました。リシャール様に視線を向けると、リシャール様も驚きの表情を浮かべていましたが、私の視線に気が付くと僅かに目を瞠った後に微笑んで下さいました。その笑みは…どう受け止めたらいいのでしょうか。
「だが侯爵。エストレ国の王太子の要求を突っぱねるにはこれが一番だぞ?」
「それはそうですが…」
お父様としても、エストレ国の王太子殿下の態度に思うところがおありなのでしょうか。完全に否定されないという事は、それだけしつこい…と思った方がよさそうですのね。
「…レティはどうしたい?リシャールも」
不意にお父様がそうお尋ねになりました。これって…
「エストレ国の王太子はあの王女の兄だけはあるぞ」
「それって…」
もうこうなると、悪い予感は確定なのですわね。王太子まで奇天烈だなんて…あの国の未来が心配ですわ。そして、そんなところに嫁いだ自分の未来も…
でも、ここで是と答えていいのでしょうか。急すぎる話ですし、リシャール様だって心の準備と言いますか、ご都合がおありでしょう。元より私のごり押しで結んだ婚約なのです。そしてリシャール様は強引な女性が苦手だと伺っていますわ…
(私としては今すぐでも構いませんわ。むしろウエルカムですけれど…)
そうは思いますが、身分も立場も上の私が答えるのは、ある意味命令です。それはさすがに…そう思って答えられなかった私でしたが…
「私は、謹んでお受けいたします」
「ええっ?!」
な、何とリシャール様が先にお受けすると仰いました。ちょ…待ってください、リシャール様!一生の事をこんなにあっさり了承しちゃっていいのですか?そりゃあ、私としては嬉しい限りですし、もう土下座してでもお願いしたい案件ではありますが…
私だけでなく、お父様達も驚きの表情でリシャール様を見ていますわ。ああでも、お兄様だけは何だかにやけた表情ですわね。これ、絶対に面白がっていますわ。
「どうしました、レティ?もしかして…お嫌でしたか?」
私が答えなかったせいか、リシャール様が不安そうに瞳を揺らしてそう尋ねられました。そ、そんな表情は反則ですわ…!胸に強矢が刺さったような衝撃を感じたのは…気のせいでしょうか…
「と…、とんでもありませんわ!嫌だなんて、そんな事は永遠にあり得ません!むしろ大歓迎です!お願いしたいのは私の方ですもの!」
思わず立ち上がってそう力説してしまいました。し、失敗しましたわ、陛下と殿下がいる前で立ち上がってしまうなんて…恥ずかしさに逃げ出したくなる想いで座り直しましたが…皆さん、視線が生暖かくて却って居た堪れないのですが…
「ほほう、レティシア嬢は素直で情熱的じゃのう」
「私の娘ですから」
「ああ、まさにラフォンじゃのう。よいよい、二人がそう言うのであればそうしようではないか」
そう言うと陛下は、侍従に何やらお命じになり、暫くするとトレイに書類を乗せて現れました。テーブルに示されたそれは…婚姻の書類、ですわね…見るのは初めてですが…
「さぁ、レティシア嬢、サインを」
そう言って陛下に促されるままサインしました。その後でリシャール様とお父様、そして陛下のサインが淀みなく記されていきます。そして…あっという間に婚姻を承認する書類が出来上がってしまいました。
「ここにラフォン侯爵令嬢レティシアと、ファリエール伯爵令息リシャールの婚姻を認める」
陛下が重々しくそう宣言し、私達は深々と頭を下げたのでした。
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