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消えた王女
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アドリエンヌ様が行方不明になった事で、私達の屋敷の警備が一層強化されました。アドリエンヌ様がお兄様に長年執着していた事、そのお兄様をセレスティーヌ様が王配にすると内示されている事から、お二人が狙われる可能性が高いと見られるからです。
『奇天烈姫』や『狂犬姫』との二つ名はこれまでの行動からも大袈裟とは言い難く、大丈夫だなどとは言えそうもありません。それに相手は一国の王女、よっぽどの上位貴族でなければ制止する事も難しいでしょう。
「セレスティーヌ様の周辺の警備は倍にしたが…」
「出入りする者や料理人などのチェックも強化しましょう」
「そうだな。後は…」
私もこの件の対応の手伝いに入りました。我が家は他国の王族や上位貴族を招く事もあります。いずれは侯爵家を継ぐ私が中心となってその対応をするので、その時に向けての予行練習のようなものです。あ、実際はリシャール様も手伝って頂くのでご一緒です。最近は一緒に過ごす時間が殆どなかったので、仕事と言えど側にいられるだけで顔がにやけてしまいそうです。
「それで…アドリエンヌ様はどうやって姿を?」
まずはここから聞いておかないと、対策も出来ません。お父様にその経緯を教えて貰う事にしました。
「それが、夜にベッドに入ったところまでは侍女も護衛騎士も確認していたんだが…」
「でも、朝になったら…ですか?」
「ああ。侍女がいつものように起こしに行ったらもぬけの殻だったそうだ」
「では、夜の間に…」
「そうなるな。ドアの前には寝ずの番の護衛がいる。どうやら窓から抜け出したらしい」
「窓…ですか?」
それは、何とも行動的ですわね…この寒い中、窓から抜け出すなんて…まぁ、あの王女ですからと言われるとそうかとしか思えませんが…
「でも、窓の下にも警備の者はいた筈では…」
「それが、昨夜はちょっとした騒ぎがあってな」
「騒ぎ、ですか?ではそれが…」
「いや、その騒ぎの主は第二王子殿下ご夫妻が可愛がっている犬だったんだ。昨夕から姿が見えなくてな、探していたんだ」
「まぁ」
そう言えば第二王子殿下は犬好きで、何匹かお手元に置かれていましたわね。
「そのせいで、ほんの僅かな時間だが窓の下の護衛が離れていた時間があったらしい」
「じゃ、その隙に…」
「多分な」
なるほど、その隙に乗じて…の可能性は高いですわね。でも、アドリエンヌ様が軟禁されていた棟は彼女も初めての場所で、逃げるにしてもどちらに向かえばいいのかなどわからないでしょうに…しかも夜で、しかもあちこちに警備の騎士がいるのです。協力者がいたとしても、彼らの目をかいくぐって逃げ出すのは簡単ではないでしょうに…
正直言って、逃げたのか、それとも攫われたのか、その理由は何なのか、判らない事ばかりです。今はエストレ国の王族がこちらに向かっている状態なので、逃げ出す理由もない筈です。待っていれば相応の後ろ盾となる人物が来るのですから、彼女の不利にはならないでしょうに。
(となれば…やはりお兄様を?)
お兄様に異常な執着心を持っていた彼女の事です。お兄様に会いに、というだけで脱走しても…不思議じゃありませんわね。
(あんなに嫌われて、女性不信にまでしたのに、どうして…)
いくら好きでたまらないと言っても、嫌われたら元も子もないでしょうに。想う気持ちはわかりますが、それでもやっぱり彼女の暴走は理解出来そうもありませんでした。
「ええっ?!アドリエンヌ様が見つかった?」
それから四日が過ぎた夕方、我が家にアドリエンヌ様が見つかったとの連絡が届き、我が家もまた驚きに包まれるのでした。
『奇天烈姫』や『狂犬姫』との二つ名はこれまでの行動からも大袈裟とは言い難く、大丈夫だなどとは言えそうもありません。それに相手は一国の王女、よっぽどの上位貴族でなければ制止する事も難しいでしょう。
「セレスティーヌ様の周辺の警備は倍にしたが…」
「出入りする者や料理人などのチェックも強化しましょう」
「そうだな。後は…」
私もこの件の対応の手伝いに入りました。我が家は他国の王族や上位貴族を招く事もあります。いずれは侯爵家を継ぐ私が中心となってその対応をするので、その時に向けての予行練習のようなものです。あ、実際はリシャール様も手伝って頂くのでご一緒です。最近は一緒に過ごす時間が殆どなかったので、仕事と言えど側にいられるだけで顔がにやけてしまいそうです。
「それで…アドリエンヌ様はどうやって姿を?」
まずはここから聞いておかないと、対策も出来ません。お父様にその経緯を教えて貰う事にしました。
「それが、夜にベッドに入ったところまでは侍女も護衛騎士も確認していたんだが…」
「でも、朝になったら…ですか?」
「ああ。侍女がいつものように起こしに行ったらもぬけの殻だったそうだ」
「では、夜の間に…」
「そうなるな。ドアの前には寝ずの番の護衛がいる。どうやら窓から抜け出したらしい」
「窓…ですか?」
それは、何とも行動的ですわね…この寒い中、窓から抜け出すなんて…まぁ、あの王女ですからと言われるとそうかとしか思えませんが…
「でも、窓の下にも警備の者はいた筈では…」
「それが、昨夜はちょっとした騒ぎがあってな」
「騒ぎ、ですか?ではそれが…」
「いや、その騒ぎの主は第二王子殿下ご夫妻が可愛がっている犬だったんだ。昨夕から姿が見えなくてな、探していたんだ」
「まぁ」
そう言えば第二王子殿下は犬好きで、何匹かお手元に置かれていましたわね。
「そのせいで、ほんの僅かな時間だが窓の下の護衛が離れていた時間があったらしい」
「じゃ、その隙に…」
「多分な」
なるほど、その隙に乗じて…の可能性は高いですわね。でも、アドリエンヌ様が軟禁されていた棟は彼女も初めての場所で、逃げるにしてもどちらに向かえばいいのかなどわからないでしょうに…しかも夜で、しかもあちこちに警備の騎士がいるのです。協力者がいたとしても、彼らの目をかいくぐって逃げ出すのは簡単ではないでしょうに…
正直言って、逃げたのか、それとも攫われたのか、その理由は何なのか、判らない事ばかりです。今はエストレ国の王族がこちらに向かっている状態なので、逃げ出す理由もない筈です。待っていれば相応の後ろ盾となる人物が来るのですから、彼女の不利にはならないでしょうに。
(となれば…やはりお兄様を?)
お兄様に異常な執着心を持っていた彼女の事です。お兄様に会いに、というだけで脱走しても…不思議じゃありませんわね。
(あんなに嫌われて、女性不信にまでしたのに、どうして…)
いくら好きでたまらないと言っても、嫌われたら元も子もないでしょうに。想う気持ちはわかりますが、それでもやっぱり彼女の暴走は理解出来そうもありませんでした。
「ええっ?!アドリエンヌ様が見つかった?」
それから四日が過ぎた夕方、我が家にアドリエンヌ様が見つかったとの連絡が届き、我が家もまた驚きに包まれるのでした。
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