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あり得ない計画
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「あの方が…」
アネット様の話は、私の想定内でもあり、想定外でもありました。と言うのも、アネット様はお兄様の部屋と枕元の水差しに媚薬を盛るというものだったからです。想定内だったのは使われたのが媚薬だった事で、想定外だったのはそれを命じたのが王妃様だった事です。てっきりアドリエンヌ様がお兄様を嵌めようとして…の展開になるとばかり思っていましたが…まさかここで王妃様が出てくるとは思いま
せんでした。
「どうして王妃様はこんな事を?」
「そ、それが…」
どうやら見つかってしまった事と、黙っていては家族も同罪と見なされると理解したアネット様は、洗いざらい話してくれました。彼女は意外にも家族思いで、今回の事も暗に家族を害すると言われたために逆らえなかったそうです。それで私が協力するなら王妃様から守ると言うと、自分はどうなってもいいから家族だけは助けて欲しいと言ってこれまでの経緯を話してくれたのです。
王妃様はエルネスト様の将来を案じすぎて、どうやら冷静さを失ってしまわれたようです。お兄様を手に入れたいアドリエンヌ様は王妃様に、エルネスト様をセレスティーヌ様の王配にする事を提案したそうです。エルネスト様の身の振り方に明るい兆しが全くない中、王妃様は大国の王配になれるのなら…とアドリエンヌ様に協力する事にしたそうです。
「それにしても…エルネスト様を王配にって…」
「王妃様が言っていたわ。ラフォン侯爵家の嫡男に媚薬を盛って、アドリエンヌ様と既成事実を作らせると。相手がいなくなったリスナールの王女様にはエルネスト様をって」
「媚薬で…」
それってエストレ国でやった事をそのまんま…ですのね。失敗したのにまだその方法に拘るなんて、アドリエンヌ様は随分と破廉恥な方なのですね。でも…
「それでどうやってエルネスト様を王配にするのかしら?仮にお兄様との話が破談になっても、エルネスト様が王配になる話にはならないのに…」
「それも、既成事実を作ってしまえばいいと言ってたわ」
「何だって?」
「何て、事を…」
よりにも寄って大国の王太子に媚薬を盛ろうと計画するとは…一歩間違ったら戦争にもなりかねない程の暴挙です。王太子殿下が男性の場合、そのような方法で純潔を奪った責任を取って…と言う話は過去にありましたが、リスナール国の王太子殿下は女性です。媚薬を盛って女性を襲おうだなんて、そんな事を王妃が企んでいると知られたら我が国は破滅です。
それに…相手がエルネスト様というのも無理な話です。王配の話には事情があるので、相手を交換して済む話ではないのですから。
「第一、エルネスト様はそれを望んでいらっしゃるのかしら?」
そうです、あのプライドの高いエルネスト様の事です。いくら大国とは言え王配になりたがるとは思えません。私もそうですが、自分よりも成績のいい女子生徒を頭でっかちで可愛げがないといつも見下していたのですから。
「女王の夫になれば国王になれるし、あっちの方が大国だから見返してやれるって…」
「国王って…それはあり得ませんわ」
「でも、エルネスト様はその気だったけど…」
一体どうしてそんな勘違いになったのか、理解に苦しみますが…あのエルネスト様ですからね。そう考える可能性はある、のでしょう。
「…それで、貴女はいいの?エルネスト様の事、お慕いしていたのでしょう?」
「そ、それは…」
さすがに私にそれを聞かれると気まずく思ったのか、アネット様は俯いてしまいました。でも…
「前は好きだったけど…今は…」
「もう好きではないと?」
「だって…最近は馬鹿にするし怒鳴るし、時には叩いたりもしてくるから…」
「ええっ?」
あんなに真実の愛と叫んでいたのに、そんな事になっていたなんて意外でした。しかも女性に手を上げるなんて…あり得ませんわ。
アネット様の話は、私の想定内でもあり、想定外でもありました。と言うのも、アネット様はお兄様の部屋と枕元の水差しに媚薬を盛るというものだったからです。想定内だったのは使われたのが媚薬だった事で、想定外だったのはそれを命じたのが王妃様だった事です。てっきりアドリエンヌ様がお兄様を嵌めようとして…の展開になるとばかり思っていましたが…まさかここで王妃様が出てくるとは思いま
せんでした。
「どうして王妃様はこんな事を?」
「そ、それが…」
どうやら見つかってしまった事と、黙っていては家族も同罪と見なされると理解したアネット様は、洗いざらい話してくれました。彼女は意外にも家族思いで、今回の事も暗に家族を害すると言われたために逆らえなかったそうです。それで私が協力するなら王妃様から守ると言うと、自分はどうなってもいいから家族だけは助けて欲しいと言ってこれまでの経緯を話してくれたのです。
王妃様はエルネスト様の将来を案じすぎて、どうやら冷静さを失ってしまわれたようです。お兄様を手に入れたいアドリエンヌ様は王妃様に、エルネスト様をセレスティーヌ様の王配にする事を提案したそうです。エルネスト様の身の振り方に明るい兆しが全くない中、王妃様は大国の王配になれるのなら…とアドリエンヌ様に協力する事にしたそうです。
「それにしても…エルネスト様を王配にって…」
「王妃様が言っていたわ。ラフォン侯爵家の嫡男に媚薬を盛って、アドリエンヌ様と既成事実を作らせると。相手がいなくなったリスナールの王女様にはエルネスト様をって」
「媚薬で…」
それってエストレ国でやった事をそのまんま…ですのね。失敗したのにまだその方法に拘るなんて、アドリエンヌ様は随分と破廉恥な方なのですね。でも…
「それでどうやってエルネスト様を王配にするのかしら?仮にお兄様との話が破談になっても、エルネスト様が王配になる話にはならないのに…」
「それも、既成事実を作ってしまえばいいと言ってたわ」
「何だって?」
「何て、事を…」
よりにも寄って大国の王太子に媚薬を盛ろうと計画するとは…一歩間違ったら戦争にもなりかねない程の暴挙です。王太子殿下が男性の場合、そのような方法で純潔を奪った責任を取って…と言う話は過去にありましたが、リスナール国の王太子殿下は女性です。媚薬を盛って女性を襲おうだなんて、そんな事を王妃が企んでいると知られたら我が国は破滅です。
それに…相手がエルネスト様というのも無理な話です。王配の話には事情があるので、相手を交換して済む話ではないのですから。
「第一、エルネスト様はそれを望んでいらっしゃるのかしら?」
そうです、あのプライドの高いエルネスト様の事です。いくら大国とは言え王配になりたがるとは思えません。私もそうですが、自分よりも成績のいい女子生徒を頭でっかちで可愛げがないといつも見下していたのですから。
「女王の夫になれば国王になれるし、あっちの方が大国だから見返してやれるって…」
「国王って…それはあり得ませんわ」
「でも、エルネスト様はその気だったけど…」
一体どうしてそんな勘違いになったのか、理解に苦しみますが…あのエルネスト様ですからね。そう考える可能性はある、のでしょう。
「…それで、貴女はいいの?エルネスト様の事、お慕いしていたのでしょう?」
「そ、それは…」
さすがに私にそれを聞かれると気まずく思ったのか、アネット様は俯いてしまいました。でも…
「前は好きだったけど…今は…」
「もう好きではないと?」
「だって…最近は馬鹿にするし怒鳴るし、時には叩いたりもしてくるから…」
「ええっ?」
あんなに真実の愛と叫んでいたのに、そんな事になっていたなんて意外でした。しかも女性に手を上げるなんて…あり得ませんわ。
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