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婚約者の所在
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リシャール様に恩を感じているという方は貧民街の出身で、昔の悪い仲間の誘いでとある屋敷の護衛に就いたそうです。その方は三日前に屋敷に運び込まれるリシャール様の姿を見つけ、慌てて貧民街の仲間に相談したのだとか。でもその仲間もこの事を誰に伝えたらいいのかわからずに困り果て、リシャール様の知り合いで仕事の紹介をして貰った事のあるヒューゴ様を頼ったそうです。ヒューゴ様は人材派遣ギルドにお勤めで、以前彼らに仕事を紹介したことがあったため顔見知りだったそうです。
「リシャールが拘束されているのは間違いないようですが…相当に警備が厳しいそうです。その者は護衛として屋敷の警備をしていますが、中には入れて貰えないそうです」
「そう、ですか…」
中に入る事が出来ないので、リシャール様がどこにいるのか、どのような扱いを受けているのかまではわからないそうです。それでも人身売買だと商品として扱われるので、身体を傷つける可能性は低いだろうとの事でした。傷がつけば価値が落ちてしまうからだそうで、売られるまではそれなりに大事に扱われるそうです。僅かですが安心に繋がる話に緊張が少しだけ解けた気がしました。でも、まだ本当にそこにいると確定した訳じゃないのですよね。
「ヒューゴ様、ありがとうございます。私も調べてみます」
「よろしくお願いいたします。リシャールは私にとって大切な友人です。非力な身ですがご協力出来る事がございましたらお声をおかけ下さい」
「ありがとうございます。その時にはまたご連絡差し上げます」
ヒューゴ様のお陰でリシャール様のいらっしゃる場所がわかりそうです。私は直ぐにお父様に連絡し、お父様はその廃墟を直ぐに影に探らせてくれました。ようやく得た手掛かりと、リシャール様が私との婚約を厭い姿を消したのではない事に、私は少しだけ気が軽く感じました。
「リシャール君の居場所が分かった」
翌日、お父様が影からの報告の内容を教えてくれました。ヒューゴ様が教えてくれた通り、リシャール様は王都から馬車で一時間ほどの場所にある古い屋敷の地下に閉じ込められている事がわかりました。 そこは人身売買の根城らしく、他にもその建物に人らしい姿が運びこまれる様子が見られたそうです。どうやら時折開かれる競りと呼ばれるオークションが行われる日まで、攫ってきた者を閉じ込めているようだとの事でした。
私の影もそこにいて、リシャール様を見守りながら脱出の機会を狙いつつ、内部の状況を調べてくれていました。
「それなら、直ぐに救出に…」
「待て、レティ」
「ですが…!」
どうしてお父様は止めるのでしょうか?私がどれほどリシャール様を心配しているかご存じのはずですのに…
「リシャール君を拘束しているのは、最近王都を騒がせている人身売買組織だ」
「ですから、直ぐにお助けしないとっ!」
「だから待てと言っている。あの組織は騎士団もずっと探りを入れていたが、中々尻尾を掴めなくて難儀していたんだ」
「それじゃ…もしかして…」
「ああ、このまま泳がせてあの組織を一気に潰す」
「そんなっ!それではリシャール様が…!」
「あの組織は定期的に攫ってきた者を競りにかけると言う。その瞬間を抑える。これは決定事項だ」
確かに競りの現場を押さえれば、他の攫われた方達も助けることが出来ますが…今のお父様の顔は冷徹な宰相のもので、反論は許さないと言外に告げていました。
「リシャールが拘束されているのは間違いないようですが…相当に警備が厳しいそうです。その者は護衛として屋敷の警備をしていますが、中には入れて貰えないそうです」
「そう、ですか…」
中に入る事が出来ないので、リシャール様がどこにいるのか、どのような扱いを受けているのかまではわからないそうです。それでも人身売買だと商品として扱われるので、身体を傷つける可能性は低いだろうとの事でした。傷がつけば価値が落ちてしまうからだそうで、売られるまではそれなりに大事に扱われるそうです。僅かですが安心に繋がる話に緊張が少しだけ解けた気がしました。でも、まだ本当にそこにいると確定した訳じゃないのですよね。
「ヒューゴ様、ありがとうございます。私も調べてみます」
「よろしくお願いいたします。リシャールは私にとって大切な友人です。非力な身ですがご協力出来る事がございましたらお声をおかけ下さい」
「ありがとうございます。その時にはまたご連絡差し上げます」
ヒューゴ様のお陰でリシャール様のいらっしゃる場所がわかりそうです。私は直ぐにお父様に連絡し、お父様はその廃墟を直ぐに影に探らせてくれました。ようやく得た手掛かりと、リシャール様が私との婚約を厭い姿を消したのではない事に、私は少しだけ気が軽く感じました。
「リシャール君の居場所が分かった」
翌日、お父様が影からの報告の内容を教えてくれました。ヒューゴ様が教えてくれた通り、リシャール様は王都から馬車で一時間ほどの場所にある古い屋敷の地下に閉じ込められている事がわかりました。 そこは人身売買の根城らしく、他にもその建物に人らしい姿が運びこまれる様子が見られたそうです。どうやら時折開かれる競りと呼ばれるオークションが行われる日まで、攫ってきた者を閉じ込めているようだとの事でした。
私の影もそこにいて、リシャール様を見守りながら脱出の機会を狙いつつ、内部の状況を調べてくれていました。
「それなら、直ぐに救出に…」
「待て、レティ」
「ですが…!」
どうしてお父様は止めるのでしょうか?私がどれほどリシャール様を心配しているかご存じのはずですのに…
「リシャール君を拘束しているのは、最近王都を騒がせている人身売買組織だ」
「ですから、直ぐにお助けしないとっ!」
「だから待てと言っている。あの組織は騎士団もずっと探りを入れていたが、中々尻尾を掴めなくて難儀していたんだ」
「それじゃ…もしかして…」
「ああ、このまま泳がせてあの組織を一気に潰す」
「そんなっ!それではリシャール様が…!」
「あの組織は定期的に攫ってきた者を競りにかけると言う。その瞬間を抑える。これは決定事項だ」
確かに競りの現場を押さえれば、他の攫われた方達も助けることが出来ますが…今のお父様の顔は冷徹な宰相のもので、反論は許さないと言外に告げていました。
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