134 / 238
見つからない婚約者
しおりを挟む
リシャール様が行方知れずになって一日が経ちました。我が家総出でリシャール様の行方を追っているにも関わらず、未だにその行方は掴めません。我が家の影は王家のそれよりもずっと優秀だと言われているのに、です。
(どうしよう…もしリシャール様の身に何かあったら…)
私は一睡も出来ず、あれからずっとリシャール様の手掛かりを求めてあらゆる手を打ちましたが、その髪の毛一筋の行方も掴めない事にこれまで経験した事のない恐怖を感じていました。そう思うほどの方がいなかったのもありますが、ラフォン家の力を使ってもわからないという事に恐怖を感じていたのです。我が家の力であれば人一人の行方など容易に知れると思っていたからです。なのに…
(連絡がないのはお怪我をして動けないせいかも…それとも、どこかに囚われていて逃げられない…?)
私自ら探しに行こうと思いましたが、それはお父様に厳しく止められました。これは私を誘き出すための罠かもしれないからと。もしそうであれば、私が相手の手に落ちればリシャール様は直ぐにでも殺されてしまうかもしれない、そう言われてしまえば動く事も出来ません。それは頭では理解しているのですが…何もしないでいると悪い想像ばかりが膨れ上がり、待つ事がこんなに苦しいものだとは思いませんでした。
部屋の外が騒がしくなり、お父様がお帰りになったとコレットがいうので、私は直ぐにお父様の執務室に向かいました。
「お父様、何か手掛かりはございましたか?!」
お父様はいつも通りに王宮に伺候し、いつも通りにお戻りになりました。こういう時はいつも通りに振舞い、敵に動揺していると悟られてはならないと言うのがお父様のお考えです。その通りではあるのですが…私にはまだそのように割り切る事が出来そうにありません。
「これと言った有力な情報はない。だが、色々と気になる話はあった」
お父様は王宮にいる間も影を使って情報を集めてくれていました。一日経っても身代金などの要求がないので誘拐の線は極めて薄くなり、こうなると誰かに連れ去られた可能性が高いだろうとの事でした。
「一体誰が、何のために…」
「まだ何とも言えん。婿入りを快く思わない者、彼を手に入れたいと思う者、我が家に恨みを持つ者、理由はいくらでもあるだろう」
「そんな…」
「それでも我が家を欺くのは簡単ではないし、発覚すれば待っているのは破滅だ。失敗すれば一族路頭に迷う可能性だってある。あえてその一線を越えようとする者は滅多にいない」
お父様の仰る通りですが、それでは犯人もその目的も漠然としたままです。
「攫うのは手間もかかるし、人目に付いて失敗する可能性が格段に上がる。となれば、犯人は生かしておく必要があると考えているのだろう。だから今すぐに命の危険があるとは思えないよ」
「そう、ですわね…」
お父様の仰る通りですが、半分は私への気遣いなのでしょう。でも、子供ならまだしも、成人した男性一人を攫うのは確かに簡単ではありません。となれば、直ぐに命の危機にはならないでしょうか…でも…
(…こんなに見つからないのは、もしかしてご自身の意思でお隠れになっているから?)
考えないようにしていたそれが、急速に私の中で膨れ上がりました。もしリシャール様が私との婚約を厭い、自ら身を隠していると言うのであれば、見つからないのも納得です。リシャール様がその気になれば、用意周到に計画されていたでしょうから…
(どうしよう…もしリシャール様の身に何かあったら…)
私は一睡も出来ず、あれからずっとリシャール様の手掛かりを求めてあらゆる手を打ちましたが、その髪の毛一筋の行方も掴めない事にこれまで経験した事のない恐怖を感じていました。そう思うほどの方がいなかったのもありますが、ラフォン家の力を使ってもわからないという事に恐怖を感じていたのです。我が家の力であれば人一人の行方など容易に知れると思っていたからです。なのに…
(連絡がないのはお怪我をして動けないせいかも…それとも、どこかに囚われていて逃げられない…?)
私自ら探しに行こうと思いましたが、それはお父様に厳しく止められました。これは私を誘き出すための罠かもしれないからと。もしそうであれば、私が相手の手に落ちればリシャール様は直ぐにでも殺されてしまうかもしれない、そう言われてしまえば動く事も出来ません。それは頭では理解しているのですが…何もしないでいると悪い想像ばかりが膨れ上がり、待つ事がこんなに苦しいものだとは思いませんでした。
部屋の外が騒がしくなり、お父様がお帰りになったとコレットがいうので、私は直ぐにお父様の執務室に向かいました。
「お父様、何か手掛かりはございましたか?!」
お父様はいつも通りに王宮に伺候し、いつも通りにお戻りになりました。こういう時はいつも通りに振舞い、敵に動揺していると悟られてはならないと言うのがお父様のお考えです。その通りではあるのですが…私にはまだそのように割り切る事が出来そうにありません。
「これと言った有力な情報はない。だが、色々と気になる話はあった」
お父様は王宮にいる間も影を使って情報を集めてくれていました。一日経っても身代金などの要求がないので誘拐の線は極めて薄くなり、こうなると誰かに連れ去られた可能性が高いだろうとの事でした。
「一体誰が、何のために…」
「まだ何とも言えん。婿入りを快く思わない者、彼を手に入れたいと思う者、我が家に恨みを持つ者、理由はいくらでもあるだろう」
「そんな…」
「それでも我が家を欺くのは簡単ではないし、発覚すれば待っているのは破滅だ。失敗すれば一族路頭に迷う可能性だってある。あえてその一線を越えようとする者は滅多にいない」
お父様の仰る通りですが、それでは犯人もその目的も漠然としたままです。
「攫うのは手間もかかるし、人目に付いて失敗する可能性が格段に上がる。となれば、犯人は生かしておく必要があると考えているのだろう。だから今すぐに命の危険があるとは思えないよ」
「そう、ですわね…」
お父様の仰る通りですが、半分は私への気遣いなのでしょう。でも、子供ならまだしも、成人した男性一人を攫うのは確かに簡単ではありません。となれば、直ぐに命の危機にはならないでしょうか…でも…
(…こんなに見つからないのは、もしかしてご自身の意思でお隠れになっているから?)
考えないようにしていたそれが、急速に私の中で膨れ上がりました。もしリシャール様が私との婚約を厭い、自ら身を隠していると言うのであれば、見つからないのも納得です。リシャール様がその気になれば、用意周到に計画されていたでしょうから…
65
お気に入りに追加
3,530
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる