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王配への打診
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「セレスティーヌ王太子殿下、か…一体どうやって殿下と知り合いに?」
最初に衝撃から抜け出したのはお父様でした。やっぱりそこが気になりますわよね。お父様ですらセレスティーヌ様とのパイプはお持ちではないのですから。
「実は、セレスティーヌ王太子殿下と知り合ったのは偶然でして…」
お兄様とセレスティーヌ様が出会ったのは二年ほど前だそうです。お忍びで王都に出たセレスティーヌ様が、悪戯心で護衛を撒いて一人散策していたのですが…そこで運悪く質の悪い連中に絡まれてしまったそうです。連れ去られそうになった彼女を助けたのがお兄様とテオドール様で、そこから交流が始まったそうです。
セレスティーヌ様と言えば現国王陛下の長女で、公明正大で才女との誉れが高く、天才だと聞いた事もあります。一方で民へ心をお寄せになる慈愛に満ちた方で、国内では大変に高い人気を誇っていて、彼女が次期女王になる事を国民は心待ちにしているとも。
そんなセレスティーヌ様は聡い目をお持ちで、お兄様がただの商人の妻ではないと気が付いたそうです。お兄様とテオドール様もセレスティーヌ様なら信用出来ると、これまでの経緯を打ち明けたのだとか。それを聞いたセレスティーヌ様は、そういう事なら我が国で自由に過ごせるようにしましょうと仰って下さり、色々便宜を図って下さったそうです。
そうしている間に親しくなり、セレスティーヌ様の王配問題が上がってきました。そして内々に王配にならないかとの打診を頂いたそうです。確かに女王に即位されるのなら、王配は必要ですが…
王配の話はモラン様からも説明がありましたし、殿下からお父様宛の親書もあって、間違いなく殿下のご意向だと仰りました。
「それで…レアンドルはどうしたいのだ?」
王配にとの声がかかるとは意外でしたが、我が家には我が国だけでなくエストレ国やルクレール国の王家の血も引いているので、釣り合わない訳ではありません。リスナール国は我が国との交流はあまりありませんが、国力はあちらの方が上ですし、我が国の中でもリスナール国との関係強化を求める動きがあります。ただ、両国の間には山脈が横たわっているので、物理的に行き来が難しいという問題があってこれまでは関係が薄かったのです。
でも…もしお兄様が王配になれば、我が国としても願ったり叶ったりです。国力が小さく我儘で火種になりそうなエストレ国の王女を娶るよりも、ずっと益があると言えるでしょう。
「私は…出来ればこの話を受けしたいと思っています」
「王太子殿下の夫になると?」
「はい」
「王太子殿下とは…恋仲なのか?」
「それは…」
お父様が核心を問うとお兄様が言い淀みました。これは、何か深い事情があるようですわね。お父様はマルク以外の家令達を下がらせました。ここからは極めて内々の話、という事ですわね。
「それについて、私からご説明させて頂きます」
「お願いします。どうか真実を話して頂きたい」
「ただし、他言無用に願います」
「勿論です」
モラン様からの提案にお父様がそう答え、私達もそれに倣って頷きました。
「実は…王太子殿下には想う方がいらっしゃるのです」
「想う方…という事は…」
「はい、その方とはその…」
「何か障害があって王配にはなれないと?」
「仰る通りです。有体に言うなら身分が足りません。そこで殿下はレアンドル様を王配としてエストレ国から保護する替わりに、隠れ蓑になって欲しいとお望みなのです」
思いがけない話でしたが、お兄様と殿下が恋仲になっているよりは納得…そう感じたのは私だけではないでしょう。
最初に衝撃から抜け出したのはお父様でした。やっぱりそこが気になりますわよね。お父様ですらセレスティーヌ様とのパイプはお持ちではないのですから。
「実は、セレスティーヌ王太子殿下と知り合ったのは偶然でして…」
お兄様とセレスティーヌ様が出会ったのは二年ほど前だそうです。お忍びで王都に出たセレスティーヌ様が、悪戯心で護衛を撒いて一人散策していたのですが…そこで運悪く質の悪い連中に絡まれてしまったそうです。連れ去られそうになった彼女を助けたのがお兄様とテオドール様で、そこから交流が始まったそうです。
セレスティーヌ様と言えば現国王陛下の長女で、公明正大で才女との誉れが高く、天才だと聞いた事もあります。一方で民へ心をお寄せになる慈愛に満ちた方で、国内では大変に高い人気を誇っていて、彼女が次期女王になる事を国民は心待ちにしているとも。
そんなセレスティーヌ様は聡い目をお持ちで、お兄様がただの商人の妻ではないと気が付いたそうです。お兄様とテオドール様もセレスティーヌ様なら信用出来ると、これまでの経緯を打ち明けたのだとか。それを聞いたセレスティーヌ様は、そういう事なら我が国で自由に過ごせるようにしましょうと仰って下さり、色々便宜を図って下さったそうです。
そうしている間に親しくなり、セレスティーヌ様の王配問題が上がってきました。そして内々に王配にならないかとの打診を頂いたそうです。確かに女王に即位されるのなら、王配は必要ですが…
王配の話はモラン様からも説明がありましたし、殿下からお父様宛の親書もあって、間違いなく殿下のご意向だと仰りました。
「それで…レアンドルはどうしたいのだ?」
王配にとの声がかかるとは意外でしたが、我が家には我が国だけでなくエストレ国やルクレール国の王家の血も引いているので、釣り合わない訳ではありません。リスナール国は我が国との交流はあまりありませんが、国力はあちらの方が上ですし、我が国の中でもリスナール国との関係強化を求める動きがあります。ただ、両国の間には山脈が横たわっているので、物理的に行き来が難しいという問題があってこれまでは関係が薄かったのです。
でも…もしお兄様が王配になれば、我が国としても願ったり叶ったりです。国力が小さく我儘で火種になりそうなエストレ国の王女を娶るよりも、ずっと益があると言えるでしょう。
「私は…出来ればこの話を受けしたいと思っています」
「王太子殿下の夫になると?」
「はい」
「王太子殿下とは…恋仲なのか?」
「それは…」
お父様が核心を問うとお兄様が言い淀みました。これは、何か深い事情があるようですわね。お父様はマルク以外の家令達を下がらせました。ここからは極めて内々の話、という事ですわね。
「それについて、私からご説明させて頂きます」
「お願いします。どうか真実を話して頂きたい」
「ただし、他言無用に願います」
「勿論です」
モラン様からの提案にお父様がそう答え、私達もそれに倣って頷きました。
「実は…王太子殿下には想う方がいらっしゃるのです」
「想う方…という事は…」
「はい、その方とはその…」
「何か障害があって王配にはなれないと?」
「仰る通りです。有体に言うなら身分が足りません。そこで殿下はレアンドル様を王配としてエストレ国から保護する替わりに、隠れ蓑になって欲しいとお望みなのです」
思いがけない話でしたが、お兄様と殿下が恋仲になっているよりは納得…そう感じたのは私だけではないでしょう。
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