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王女への対抗策
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お父様がお帰りになって、私達は再び集まりました。今度は両親と私とリシャール様、お兄様とお兄様の従者のマルクにテオドール様、そしてリスナール国から一緒にいらしたエルゾ=モラン様です。モラン様は王太子殿下の側近のお一人で、今回は殿下の内々の使者として同行されたそうです。
今のお兄様は男性の普段着ですし、長い髪は後ろで一つ結びになっています。かつらかと思っていましたが…地毛だったのですね。まぁ、我が国では男性も髪を伸ばす方が多いので違和感はありませんが。でも、こうしてみると…やっぱり男性という感じはしませんわね。どちからというと…男装している女性、の方がしっくりくるかもしれません。
「よく戻ってきたな、レアンドル」
「父上、今までご迷惑をおかけしました」
「いや…相手を思えば致し方あるまい。それよりも無事に戻ってきてくれたのが何よりも嬉しいよ」
「それに関しては、こちらのテオドール殿のお陰です。彼が私達を拾ってくれなければ、今頃は…」
そう言ってお兄様がテオドール様に視線を向けました。テオドール様は少し驚いたようでしたが、直ぐに厳めしいお顔に素朴な笑みを浮かべました。
「いえ、大した事はしておりません。たまたまです」
「たまたまでも、息子にとっては命の恩人だ。礼を言う、ありがとう」
そう言ってお父様が頭を下げると、テオドール様が慌てて頭を上げて下さい!と仰いました。筆頭侯爵家の当主が頭を下げるなんて滅多にありませんし、お父様は氷の宰相と呼ばれているので余計に驚かれたのかもしれませんね。その様子からもお兄様の事は偶然で、多分他の方であってもお助けになったのだろうという事が伺えました。
その後はお兄様がエストレ国を出奔した経緯や、その後リスナール国に渡った後の説明がお兄様からありました。お兄様はテオドール様の妻としてエストレ国を出たため、リスナール国でも女性として過ごしていたそうです。
というのもお兄様が一緒に居ると、テオドール様の行動が我がラフォン家の意向だと勘違いされる可能性があったからです。そうなるとただの行商ではなく外交問題になってしまうため、その意味でもお兄様の身分は隠しておいたかったそうです。
「それで…戻ってきたという事は、あの馬鹿王女への対抗策が見つかったという事か?」
一通り話が終わると、お父様がそうお兄様に尋ねました。そうです、お兄様はあのアドリエンヌ様から身を隠すために帰国を控えていたのです。もしお兄様が帰国なさったとなれば、あの王女は直ぐに求婚してくるでしょうし、そうなれば王家は我が家の意向など無視して承諾してしまう可能性もあります。それを避けるための行方不明だったのですから当然ですわね。
「はい。その点に関しては、リスナール国の協力を確約頂きました」
「ほぉ、リスナール国だと?」
「ええ、セレスティーヌ王太子殿下から、王配にならないかとのお声を頂きました」
「何だと…」
「まぁ…!」
「はぁっ?お、王配?!」
一体どういう経緯で、王配などという話になったのでしょうか…いえ、リスナール国は女性でも王位継承を認めていますし、先々代の王は女王陛下でした。そして現王には王女しかいないので、王太子はセレスティーヌ第一王女殿下だとは伺っていますが…
(お兄様…女性が苦手だと仰っていたのに…王女殿下と恋仲になっていたの?)
さすがにこの展開はお父様も想定外だったようで、室内は暫く時間が止まった様に静寂に包まれました。
今のお兄様は男性の普段着ですし、長い髪は後ろで一つ結びになっています。かつらかと思っていましたが…地毛だったのですね。まぁ、我が国では男性も髪を伸ばす方が多いので違和感はありませんが。でも、こうしてみると…やっぱり男性という感じはしませんわね。どちからというと…男装している女性、の方がしっくりくるかもしれません。
「よく戻ってきたな、レアンドル」
「父上、今までご迷惑をおかけしました」
「いや…相手を思えば致し方あるまい。それよりも無事に戻ってきてくれたのが何よりも嬉しいよ」
「それに関しては、こちらのテオドール殿のお陰です。彼が私達を拾ってくれなければ、今頃は…」
そう言ってお兄様がテオドール様に視線を向けました。テオドール様は少し驚いたようでしたが、直ぐに厳めしいお顔に素朴な笑みを浮かべました。
「いえ、大した事はしておりません。たまたまです」
「たまたまでも、息子にとっては命の恩人だ。礼を言う、ありがとう」
そう言ってお父様が頭を下げると、テオドール様が慌てて頭を上げて下さい!と仰いました。筆頭侯爵家の当主が頭を下げるなんて滅多にありませんし、お父様は氷の宰相と呼ばれているので余計に驚かれたのかもしれませんね。その様子からもお兄様の事は偶然で、多分他の方であってもお助けになったのだろうという事が伺えました。
その後はお兄様がエストレ国を出奔した経緯や、その後リスナール国に渡った後の説明がお兄様からありました。お兄様はテオドール様の妻としてエストレ国を出たため、リスナール国でも女性として過ごしていたそうです。
というのもお兄様が一緒に居ると、テオドール様の行動が我がラフォン家の意向だと勘違いされる可能性があったからです。そうなるとただの行商ではなく外交問題になってしまうため、その意味でもお兄様の身分は隠しておいたかったそうです。
「それで…戻ってきたという事は、あの馬鹿王女への対抗策が見つかったという事か?」
一通り話が終わると、お父様がそうお兄様に尋ねました。そうです、お兄様はあのアドリエンヌ様から身を隠すために帰国を控えていたのです。もしお兄様が帰国なさったとなれば、あの王女は直ぐに求婚してくるでしょうし、そうなれば王家は我が家の意向など無視して承諾してしまう可能性もあります。それを避けるための行方不明だったのですから当然ですわね。
「はい。その点に関しては、リスナール国の協力を確約頂きました」
「ほぉ、リスナール国だと?」
「ええ、セレスティーヌ王太子殿下から、王配にならないかとのお声を頂きました」
「何だと…」
「まぁ…!」
「はぁっ?お、王配?!」
一体どういう経緯で、王配などという話になったのでしょうか…いえ、リスナール国は女性でも王位継承を認めていますし、先々代の王は女王陛下でした。そして現王には王女しかいないので、王太子はセレスティーヌ第一王女殿下だとは伺っていますが…
(お兄様…女性が苦手だと仰っていたのに…王女殿下と恋仲になっていたの?)
さすがにこの展開はお父様も想定外だったようで、室内は暫く時間が止まった様に静寂に包まれました。
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