114 / 238
お父様の個人秘書
しおりを挟む
建国祭が終わりました。今年は舞踏会にリシャール様と一緒に出席し、これまでに味わった事がないほど楽しい時間を過ごすことが出来ました。しかもアデライド様のアクセサリーが大変好評だったため、リシャール様の評判も一気に上がったのです。それだけでも今年の建国祭は記念すべき素晴らしいものだったと言えるでしょう。
そしてこの建国祭が終わった後、ちょっとした変化がありました。まずはリシャール様ですが…
(何と、お父様の個人秘書におなりになったのよね!)
そうなのです、あの舞踏会の後でリシャール様はお父様と話し合い、ご自身の商会はお店の方に任せてお父様の私的な秘書になったのです。リシャール様は商会をとても大切にしていましたし、お父様も商会を最優先でと仰っていたので、どうしてそうなったのかとても不思議でした。リシャール様に尋ねると、
「今の自分では色々足りないところがあるからです」
とそう仰っていましたが…リシャール様は今のままでも完璧です。ファリエール伯爵家の後継としての教育だって、マルセル叔父様はまだまだお元気なので急ぐ必要はありません。そもそも商会に生まれ、ご自身の商会も立ち上げているリシャール様なのですから、我が一門の商会の運営も問題ない筈です。
「彼にも意地があるのだろう」
「いいじゃないの。レティとの将来を真剣に考えてくれている証拠よ」
私との将来を真剣に考えているという言葉に、私の胸が高まりました。これまでは私が一方的にお慕いしていて、リシャール様はお優しいから私を受け入れて下さったのだと思っていましたし、それで十分だと思っていました。家の事は私がやればいいし、リシャール様には出来る限りご自身の商会を…と思っていたのです。
リシャール様の話では、商会は当面ダニエルさんを代理に立て、従業員も倍に増やしたそうです。その中には数字に強いプロの方も何人かいて、まずは経営の土台を強固にされるのだそうです。その上でアクセサリーのデザインが出来る人と、それを形に出来る職人を育てているのだとか。手始めに工房を丸ごと一軒買い取って、そこで人材を育てるのだそうです。
お父様の秘書になった事で、リシャール様は我が家に住む事になりました。とは言っても秘書としてなので他の秘書達と同じ場所で、私達家族が住むのとは別棟になります。
そうは言っても…同じ敷地内なので、私としては何かのついでにお姿が見えるのではないか…とウキウキしてしまいました。今まではリシャール様が来て下さらないとお会い出来なかったのですよね。これだけ近ければ、自ずと期待も高まるというものです。
そんな新しい変化に心時めかせていた私の望みに反して、リシャール様の姿を見る事は殆ど叶いませんでした。お父様は多忙ですし、王城にいる時間も長いので仕方ありませんが…
それでも嬉しい事もあり、週に一度、半日は必ずリシャール様との時間を持てるようになりました。今は同じ敷地内にいるので、お会いするのに移動時間がほぼゼロで、半日を丸っと一緒に過ごせるようになったのです。これまでは週に一度あるかないか…な頻度だったのを思えば夢のようです。
その日もリシャール様とサロンで、お茶を頂きながら楽しい時間を過ごしていました。寒くなってきたのでさすがに庭でのお茶は暫くお預けです。
(それでも、一緒に過ごせるのなら…場所なんかどうでもいいですわ)
かっこよくて素敵で優しいリシャール様との幸せな時間を過ごしていたその時です。
「お嬢様、レアンドル様が…!」
コレットが珍しく血相を変えてやってきました。
そしてこの建国祭が終わった後、ちょっとした変化がありました。まずはリシャール様ですが…
(何と、お父様の個人秘書におなりになったのよね!)
そうなのです、あの舞踏会の後でリシャール様はお父様と話し合い、ご自身の商会はお店の方に任せてお父様の私的な秘書になったのです。リシャール様は商会をとても大切にしていましたし、お父様も商会を最優先でと仰っていたので、どうしてそうなったのかとても不思議でした。リシャール様に尋ねると、
「今の自分では色々足りないところがあるからです」
とそう仰っていましたが…リシャール様は今のままでも完璧です。ファリエール伯爵家の後継としての教育だって、マルセル叔父様はまだまだお元気なので急ぐ必要はありません。そもそも商会に生まれ、ご自身の商会も立ち上げているリシャール様なのですから、我が一門の商会の運営も問題ない筈です。
「彼にも意地があるのだろう」
「いいじゃないの。レティとの将来を真剣に考えてくれている証拠よ」
私との将来を真剣に考えているという言葉に、私の胸が高まりました。これまでは私が一方的にお慕いしていて、リシャール様はお優しいから私を受け入れて下さったのだと思っていましたし、それで十分だと思っていました。家の事は私がやればいいし、リシャール様には出来る限りご自身の商会を…と思っていたのです。
リシャール様の話では、商会は当面ダニエルさんを代理に立て、従業員も倍に増やしたそうです。その中には数字に強いプロの方も何人かいて、まずは経営の土台を強固にされるのだそうです。その上でアクセサリーのデザインが出来る人と、それを形に出来る職人を育てているのだとか。手始めに工房を丸ごと一軒買い取って、そこで人材を育てるのだそうです。
お父様の秘書になった事で、リシャール様は我が家に住む事になりました。とは言っても秘書としてなので他の秘書達と同じ場所で、私達家族が住むのとは別棟になります。
そうは言っても…同じ敷地内なので、私としては何かのついでにお姿が見えるのではないか…とウキウキしてしまいました。今まではリシャール様が来て下さらないとお会い出来なかったのですよね。これだけ近ければ、自ずと期待も高まるというものです。
そんな新しい変化に心時めかせていた私の望みに反して、リシャール様の姿を見る事は殆ど叶いませんでした。お父様は多忙ですし、王城にいる時間も長いので仕方ありませんが…
それでも嬉しい事もあり、週に一度、半日は必ずリシャール様との時間を持てるようになりました。今は同じ敷地内にいるので、お会いするのに移動時間がほぼゼロで、半日を丸っと一緒に過ごせるようになったのです。これまでは週に一度あるかないか…な頻度だったのを思えば夢のようです。
その日もリシャール様とサロンで、お茶を頂きながら楽しい時間を過ごしていました。寒くなってきたのでさすがに庭でのお茶は暫くお預けです。
(それでも、一緒に過ごせるのなら…場所なんかどうでもいいですわ)
かっこよくて素敵で優しいリシャール様との幸せな時間を過ごしていたその時です。
「お嬢様、レアンドル様が…!」
コレットが珍しく血相を変えてやってきました。
69
お気に入りに追加
3,530
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる