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嫌がらせ?
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(あれ?この引き出しに入れた筈なのに…)
私がグラネ伯爵夫人の事をリシャール様に警告してから後、商会に来るたびに文具がなくなる事が続きました。
「どうしたの、レアちゃん?」
「え、っと…ペーパーナイフがなくて…」
「ええっ?また?使ったら元の場所に戻せって口が酸っぱくなるほど言ってるのに…」
事務所の備品は共同で使うので、決まった場所に入れておくのがルールなのですが…最近、戻っていない事が多いように思います。
「そんな事言って、あなたが持って帰っているんじゃないの?」
急に横から入ってきた声は…セリアさんの物でした。入り口で同じ販売員のジャゾンさんも一緒です。お二人は一緒に居る時間が長いせいか仲がいいのですが…どうにも私には当たりが強いのですよね。
「セリアさん、そんな言い方はないんじゃない?」
「あら、だって。実家は貧乏男爵家なのでしょう?備品一つ買えないから店のを盗んだんじゃないの?」
貧乏男爵家って…男爵家の出でも貧乏という設定ではなかった筈ですが…
「何よ、その顔は」
私が相手にするのも馬鹿馬鹿しいと思ったのが顔に出てしまったでしょうか。セリアさんが睨みつけてきましたが…
「おーい、マリア~このペーパーナイフ、事務所のだろう?」
そう言ってペーパーナイフを手にやってきたのはダニエルさんでした。
「ダニエルさん、これ、どこに?」
「ああ、あっちの店の従業員用の控室にあったんだ。ほら、セリア、ちゃんと返しとけよ」
「なっ!わ、私じゃ…」
「何言ってんだよ、お前さっき、ペーパーナイフ持って歩いてたじゃないか」
「そ、それは…」
ダニエルさんに指摘されて、セリアさんが狼狽えていますわね。セリアは仕方ないなぁとダニエルさんは笑っていますが、マリアさんがじーっとセリアさんをジト目で見つめています。
「ふ、ふん…」
どうやら居たたまれなくなったらしいセリアさんが、忌々しそうな表情で出て行き、ジャゾンさんがそれに続きました。どうやら嫌がらせされたみたいですが、随分とわかりやすい方ですわね。
「あ、レアちゃん、お茶淹れてくれない?」
「あ、私も飲みたい!」
お二人のリクエストを受けてお茶の時間になりました。今日はリシャール様はご不在で、三人でのお茶会ですわね。
「そうそう、ラフォン侯爵令嬢の噂、知ってる?」
「ラフォン侯爵令嬢の?」
(ええっ?わ、私の噂?)
「ええ、何でもあちこちの店で、ラフォン侯爵令嬢に紹介されたって客が、横暴な事言っているらしいよ」
「まぁ、確かに高慢で王子様に愛想付かされたって噂だけど…」
「そうそう。店に無理難題吹っ掛けてるってんで、困っているらしいよ」
(ど、どうして…)
思いがけず全く心当たりのない自分の悪評に、私は追い詰められたような気持になりました。その話、リシャール様もご存じなのでしょうか…
- - - - -
誤字報告、ありがとうございます。
私がグラネ伯爵夫人の事をリシャール様に警告してから後、商会に来るたびに文具がなくなる事が続きました。
「どうしたの、レアちゃん?」
「え、っと…ペーパーナイフがなくて…」
「ええっ?また?使ったら元の場所に戻せって口が酸っぱくなるほど言ってるのに…」
事務所の備品は共同で使うので、決まった場所に入れておくのがルールなのですが…最近、戻っていない事が多いように思います。
「そんな事言って、あなたが持って帰っているんじゃないの?」
急に横から入ってきた声は…セリアさんの物でした。入り口で同じ販売員のジャゾンさんも一緒です。お二人は一緒に居る時間が長いせいか仲がいいのですが…どうにも私には当たりが強いのですよね。
「セリアさん、そんな言い方はないんじゃない?」
「あら、だって。実家は貧乏男爵家なのでしょう?備品一つ買えないから店のを盗んだんじゃないの?」
貧乏男爵家って…男爵家の出でも貧乏という設定ではなかった筈ですが…
「何よ、その顔は」
私が相手にするのも馬鹿馬鹿しいと思ったのが顔に出てしまったでしょうか。セリアさんが睨みつけてきましたが…
「おーい、マリア~このペーパーナイフ、事務所のだろう?」
そう言ってペーパーナイフを手にやってきたのはダニエルさんでした。
「ダニエルさん、これ、どこに?」
「ああ、あっちの店の従業員用の控室にあったんだ。ほら、セリア、ちゃんと返しとけよ」
「なっ!わ、私じゃ…」
「何言ってんだよ、お前さっき、ペーパーナイフ持って歩いてたじゃないか」
「そ、それは…」
ダニエルさんに指摘されて、セリアさんが狼狽えていますわね。セリアは仕方ないなぁとダニエルさんは笑っていますが、マリアさんがじーっとセリアさんをジト目で見つめています。
「ふ、ふん…」
どうやら居たたまれなくなったらしいセリアさんが、忌々しそうな表情で出て行き、ジャゾンさんがそれに続きました。どうやら嫌がらせされたみたいですが、随分とわかりやすい方ですわね。
「あ、レアちゃん、お茶淹れてくれない?」
「あ、私も飲みたい!」
お二人のリクエストを受けてお茶の時間になりました。今日はリシャール様はご不在で、三人でのお茶会ですわね。
「そうそう、ラフォン侯爵令嬢の噂、知ってる?」
「ラフォン侯爵令嬢の?」
(ええっ?わ、私の噂?)
「ええ、何でもあちこちの店で、ラフォン侯爵令嬢に紹介されたって客が、横暴な事言っているらしいよ」
「まぁ、確かに高慢で王子様に愛想付かされたって噂だけど…」
「そうそう。店に無理難題吹っ掛けてるってんで、困っているらしいよ」
(ど、どうして…)
思いがけず全く心当たりのない自分の悪評に、私は追い詰められたような気持になりました。その話、リシャール様もご存じなのでしょうか…
- - - - -
誤字報告、ありがとうございます。
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