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気持ち悪いのですが…
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「君が…レ、レティシア…」
私の前に跪いた殿下が気持ち悪くて、私はさりげなく三歩下がって距離を取りました。正直言って急な態度の変化が不気味でしかなく、もう嫌な予感しかしません。ベルティーユ様の予言が現実になりそうな事も、私の警戒心を大きく煽りました。全く、今更何だと言うのでしょうか。
「う、嘘でしょう?レティシア様だなんて…別人じゃない!」
「そんな…こんなに可愛かったのか…」
「信じられない…めっちゃ美人じゃねえか」
アネット様の悲鳴のような声に続いて、殿下のご友人たちも声をあげましたが…じろじろと人を見るなんて感じが悪いしマナー違反ですわ。でも、彼らは高位貴族とは名ばかりで、成績もあまりよくないと聞いています。殿下の横のアネット様が愛らしいお顔に驚きを目いっぱい乗せていますが…こうしてみるとマナーが出来ていなくて品がありませんわ。王子妃教育は始まっていると聞きましたが、今の様子を見ると身についているとも思えませんし。
「ほ、本当にレティシアなのか?」
「そうですが。どこにそんな嘘をつく理由が?」
「嘘だろう…お前、どうしてあんなブスになるメイクしていたんだ?!!」
…今更、それを聞きますか?一体誰のせいだと思っているのでしょうか。
「あの衣装やメイクはすべて、王妃様のご指示です」
「な…は、母上の…?」
「ええ。王妃様がお遣わしになった侍女たちが、王妃様の指示でしていた事です。殿下のお好みに合わせるようにとの仰せで、そこに私の好みや希望は一切入っておりませんでした」
「そ、そんな…」
一切のところ、ちょっとだけ強調してみましたが…どうやら殿下は自分の母親があんなセンスの悪いメイクを指示していたとは思わなかったようですわね。殿下は驚きに目を大きく見開いています。まぁ、私にとっては今更どうでもいい事ですが。
「それで、ご用件は何でしょうか?私達の婚約は既に破棄されていますので、関わりはもうない筈ですが。そうそう、婚約者でもなんでもないのですから、今後は家名でお呼びください」
「な…そ、それは…」
「御用がないのでしたら失礼しますわ。もうすぐ授業が始まりますので」
さすがにもう先生がいらっしゃる時間ですし、要件を言わないのでしたらこれ以上相手をする必要はないでしょう。王子と言ってもいずれ臣籍降下する方ですし、我がラフォン家に喧嘩を売ってきたのです。優しくする必要などありませんわね。私は背を向けて教室に戻ろうと背を向けました。
「ま、待ってくれ!は、話を聞いてくれ!」
尚も追いすがろうと私の腕を掴んだ殿下の手を、私は咄嗟に振り払いました。殿下が驚きの表情を浮かべていますが、婚約者でもないのに触れてくるなんて失礼極まりないですわね。少し大げさにため息をついてから彼らに向き合いました。
「…ご用件は何ですの。時間がないので早く仰ってください」
私は王子妃教育で身に付けた無表情の仮面を纏い、冷たくそう問いかけました。
私の前に跪いた殿下が気持ち悪くて、私はさりげなく三歩下がって距離を取りました。正直言って急な態度の変化が不気味でしかなく、もう嫌な予感しかしません。ベルティーユ様の予言が現実になりそうな事も、私の警戒心を大きく煽りました。全く、今更何だと言うのでしょうか。
「う、嘘でしょう?レティシア様だなんて…別人じゃない!」
「そんな…こんなに可愛かったのか…」
「信じられない…めっちゃ美人じゃねえか」
アネット様の悲鳴のような声に続いて、殿下のご友人たちも声をあげましたが…じろじろと人を見るなんて感じが悪いしマナー違反ですわ。でも、彼らは高位貴族とは名ばかりで、成績もあまりよくないと聞いています。殿下の横のアネット様が愛らしいお顔に驚きを目いっぱい乗せていますが…こうしてみるとマナーが出来ていなくて品がありませんわ。王子妃教育は始まっていると聞きましたが、今の様子を見ると身についているとも思えませんし。
「ほ、本当にレティシアなのか?」
「そうですが。どこにそんな嘘をつく理由が?」
「嘘だろう…お前、どうしてあんなブスになるメイクしていたんだ?!!」
…今更、それを聞きますか?一体誰のせいだと思っているのでしょうか。
「あの衣装やメイクはすべて、王妃様のご指示です」
「な…は、母上の…?」
「ええ。王妃様がお遣わしになった侍女たちが、王妃様の指示でしていた事です。殿下のお好みに合わせるようにとの仰せで、そこに私の好みや希望は一切入っておりませんでした」
「そ、そんな…」
一切のところ、ちょっとだけ強調してみましたが…どうやら殿下は自分の母親があんなセンスの悪いメイクを指示していたとは思わなかったようですわね。殿下は驚きに目を大きく見開いています。まぁ、私にとっては今更どうでもいい事ですが。
「それで、ご用件は何でしょうか?私達の婚約は既に破棄されていますので、関わりはもうない筈ですが。そうそう、婚約者でもなんでもないのですから、今後は家名でお呼びください」
「な…そ、それは…」
「御用がないのでしたら失礼しますわ。もうすぐ授業が始まりますので」
さすがにもう先生がいらっしゃる時間ですし、要件を言わないのでしたらこれ以上相手をする必要はないでしょう。王子と言ってもいずれ臣籍降下する方ですし、我がラフォン家に喧嘩を売ってきたのです。優しくする必要などありませんわね。私は背を向けて教室に戻ろうと背を向けました。
「ま、待ってくれ!は、話を聞いてくれ!」
尚も追いすがろうと私の腕を掴んだ殿下の手を、私は咄嗟に振り払いました。殿下が驚きの表情を浮かべていますが、婚約者でもないのに触れてくるなんて失礼極まりないですわね。少し大げさにため息をついてから彼らに向き合いました。
「…ご用件は何ですの。時間がないので早く仰ってください」
私は王子妃教育で身に付けた無表情の仮面を纏い、冷たくそう問いかけました。
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読んで下さってありがとうございます。
また、お気に入り登録やエール、感想もとっても励みになります。
本編完結しました。
今後は番外編の更新になります。
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