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鶯を炙る(翠嵐回想)
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翠嵐は一人取り残されたが声を上げず、じっと様子を窺っていた。自分の恥ずかしい状況を他に知られたくなかった。飯室の僧正は踵を返すと人の気配を感じるのかしばらくキョロキョロとしていた。
「あ!あぶない!」
飯室の僧正の袖が灯された蝋燭の火に炙られそうになり、思わず翠嵐が声を上げる。
「?まだ誰かいるのですか?」
不思議そうな声に、仕方なく応えた
「はい…先日稚児として迎えられました翠嵐と申します」
乱された着物を手早く治すと台から降りた。
「部屋までお連れしましょうか?お坊様」
「これはこれはありがたい」
翠嵐が手を引き離れまで案内する。
「君はここに来て何年になる?」
「まだ来たばかりです。10日ほどになるでしょうか」
「ほう、来て10日で部屋の場所を覚えてしまうとは…」
「書庫のすぐ近くですから、その周りは…」
「勉強熱心だね」
「書物が好きなのです…亡くなった父は様々な事を口伝で伝えてくれましたが、家に詳しい書物がなくて…」
翠嵐は陰陽師の家系に生まれたが彼の祖父が既に財産を食い潰していて、家には巻物の一巻もなかった。
寺に引き取られると決まって書物が読めると喜んでいたが…。先ほどの一件で自分がなぜここに引き取られたのかはっきりした。自分は性欲を持て余した僧侶達の慰み者のとして売り飛ばされてきたのだ。
あの様な事をずっとされ続けるのだろうと思うと胸が塞いだ。
「翠嵐と言ったね。私の部屋仏典があるんだ。もし読めるのなら私に読み聞かせてくれないか?」
「え!本当に??良いのですか?こんな夜更けに訪ねてはご迷惑では?」
「ああ、いいよ。もう夜も遅いから、私の部屋に泊まっていくといい」
寝所に戻ればまた竜田の僧正達に何かされるのではないかと恐れていた翠嵐にとってこれ以上の話はなかった。
その晩は夜明け近くまで飯室の僧正と話した。僧正は翠嵐の出会ったどの大人よりも博識で、話も面白かった。
「君と話していると楽しい。また明日の夜おいで」
その日以来毎晩飯室の僧正の元に通う様になった翠嵐は寺の中でも「飯室の僧正の贔屓」と噂が立ち、手を出そうとするものはいなくなった。
「寺の歴史の中でも抜きん出て容貌の良い美しい稚児を愛でるのが目の見えぬお方とは…」と竜田の僧正は陰で悔し気に罵っていた。
「あ!あぶない!」
飯室の僧正の袖が灯された蝋燭の火に炙られそうになり、思わず翠嵐が声を上げる。
「?まだ誰かいるのですか?」
不思議そうな声に、仕方なく応えた
「はい…先日稚児として迎えられました翠嵐と申します」
乱された着物を手早く治すと台から降りた。
「部屋までお連れしましょうか?お坊様」
「これはこれはありがたい」
翠嵐が手を引き離れまで案内する。
「君はここに来て何年になる?」
「まだ来たばかりです。10日ほどになるでしょうか」
「ほう、来て10日で部屋の場所を覚えてしまうとは…」
「書庫のすぐ近くですから、その周りは…」
「勉強熱心だね」
「書物が好きなのです…亡くなった父は様々な事を口伝で伝えてくれましたが、家に詳しい書物がなくて…」
翠嵐は陰陽師の家系に生まれたが彼の祖父が既に財産を食い潰していて、家には巻物の一巻もなかった。
寺に引き取られると決まって書物が読めると喜んでいたが…。先ほどの一件で自分がなぜここに引き取られたのかはっきりした。自分は性欲を持て余した僧侶達の慰み者のとして売り飛ばされてきたのだ。
あの様な事をずっとされ続けるのだろうと思うと胸が塞いだ。
「翠嵐と言ったね。私の部屋仏典があるんだ。もし読めるのなら私に読み聞かせてくれないか?」
「え!本当に??良いのですか?こんな夜更けに訪ねてはご迷惑では?」
「ああ、いいよ。もう夜も遅いから、私の部屋に泊まっていくといい」
寝所に戻ればまた竜田の僧正達に何かされるのではないかと恐れていた翠嵐にとってこれ以上の話はなかった。
その晩は夜明け近くまで飯室の僧正と話した。僧正は翠嵐の出会ったどの大人よりも博識で、話も面白かった。
「君と話していると楽しい。また明日の夜おいで」
その日以来毎晩飯室の僧正の元に通う様になった翠嵐は寺の中でも「飯室の僧正の贔屓」と噂が立ち、手を出そうとするものはいなくなった。
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