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名古屋に帰り、プロジェクトは本格的に進んでいった。当初予定していたよりも予算が増えたことで、人員や資材の確保などが急ピッチで行われることになったのだ。それに伴い、東京出張の機会も増えることになったが、幸いなことに曽宮と顔を合わせる機会はなかった。曽宮自身が別プロジェクトの方で忙しくなり、こちらには本格的に参加しなくなったからだ。チャットソフトで時折全体に向けてメンションすると、いち早く反応して丁寧に返信してくれるが、それ以外の接点はほとんどなかった。
そんなある日、今日の目標分を午前中で終わらせると、午後からは資料の作成を始めた。作業に没頭しているとあっという間に時間が過ぎていった。気がつくと時計の針は19時を指している。そろそろ帰ろうかと思った時だった。不意にドアがノックされたので返事をすると、そこに立っていた人物に驚くことになる。
「・・・曽宮さん?」
彼はペコリと頭を下げた。
「すみません、お仕事中でしたか?」
申し訳なさそうに言う姿を見て首を振ると言った。
「いえ、ちょうど終わったところですから大丈夫ですよ」
勤めて笑顔で答えた。内心ドキドキしていたが平静を装っていた。何しろ久しぶりに会うのだから緊張してしまうのも無理はないだろう。すると、曽宮は少し恥ずかしそうにしながら言った。
「浜松で商談があったから、こっちに宿を取ったんですが、予約がちゃんと取れてなかったんですよ」
「え、それは大変ですね。」
「明日東京支社で会議があるので名古屋で泊まれるとよかったんですけど。まあ、まだ新幹線もあるし帰って朝イチかなあって途方に暮れていて」
「・・・もしよければ、僕の部屋に来ますか?」
曽宮が顔を上げる。その表情は驚いていたものの嬉しそうでもあった。
「もちろん無理にとは言いませんけど」
すると彼は首を横に振った。
「いえ、助かります。いいんですか?」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろす。断られたらどうしようと思っていたからだ。
田中の家は郊外にある一軒家で元々は両親が住んでいたが両親が引退して父の実家の長野に移り住んでからは一人で使っていた。余っている部屋ならたくさんある。もし気まずくなっても別の部屋で寝ればいい。
「商品の在庫もあってあまり綺麗ではないですがそれでもよければどうぞ」
自分の住んでいる家に曽宮を案内する。その間は他愛もない会話をしながら歩いていたのだが、それが楽しいと思った。リビングに曽宮を通すと、考えてみれば二人きりなのだということを改めて意識してしまった。途端に緊張感が高まるのを感じる。心臓の音がうるさいくらいに鳴っていて、今にも破裂してしまいそうだった。
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そんなある日、今日の目標分を午前中で終わらせると、午後からは資料の作成を始めた。作業に没頭しているとあっという間に時間が過ぎていった。気がつくと時計の針は19時を指している。そろそろ帰ろうかと思った時だった。不意にドアがノックされたので返事をすると、そこに立っていた人物に驚くことになる。
「・・・曽宮さん?」
彼はペコリと頭を下げた。
「すみません、お仕事中でしたか?」
申し訳なさそうに言う姿を見て首を振ると言った。
「いえ、ちょうど終わったところですから大丈夫ですよ」
勤めて笑顔で答えた。内心ドキドキしていたが平静を装っていた。何しろ久しぶりに会うのだから緊張してしまうのも無理はないだろう。すると、曽宮は少し恥ずかしそうにしながら言った。
「浜松で商談があったから、こっちに宿を取ったんですが、予約がちゃんと取れてなかったんですよ」
「え、それは大変ですね。」
「明日東京支社で会議があるので名古屋で泊まれるとよかったんですけど。まあ、まだ新幹線もあるし帰って朝イチかなあって途方に暮れていて」
「・・・もしよければ、僕の部屋に来ますか?」
曽宮が顔を上げる。その表情は驚いていたものの嬉しそうでもあった。
「もちろん無理にとは言いませんけど」
すると彼は首を横に振った。
「いえ、助かります。いいんですか?」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろす。断られたらどうしようと思っていたからだ。
田中の家は郊外にある一軒家で元々は両親が住んでいたが両親が引退して父の実家の長野に移り住んでからは一人で使っていた。余っている部屋ならたくさんある。もし気まずくなっても別の部屋で寝ればいい。
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自分の住んでいる家に曽宮を案内する。その間は他愛もない会話をしながら歩いていたのだが、それが楽しいと思った。リビングに曽宮を通すと、考えてみれば二人きりなのだということを改めて意識してしまった。途端に緊張感が高まるのを感じる。心臓の音がうるさいくらいに鳴っていて、今にも破裂してしまいそうだった。
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