109 / 155
俺だけ見てろ
4
しおりを挟む手首を引っ張るついでにずっと握っていたコーンスープの缶も取られてポールの上に置かれる。
良くも悪くもタイミングぴったりに登場した、超不機嫌顔の類くんが、私を捕まえたまま優斗を睨んだ。
「…何してんだよ、お前ら」
普段よりも声のトーンがさらに低くくぐもっている。
私はそのキレ具合にゾクっとしながらも、手首が痛過ぎて喚いた。
「ちょっと類くん!手首痛い!離して!」
「うっさいな!あんたが馬鹿みたいに困った顔してるから助けてやったんだろうが!むしろ感謝しろ!」
もう助けたとかこの態度で一体なんなのこの人ーっ!
むっとして言い返してやろうとすると、今度は優斗に腕を引かれて私はよろけた。
「明子に乱暴するな」
「お前が先にしてたことだろ」
「中途半端な気持ちであんたが明子を振り回すからだろ。俺は明子に好きだって伝えた」
それを聞くと類くんは一瞬ピクッと眉を動かしたが、息を深く吸って優斗を睨みつける。
「で?なに?こいつから返事聞いたの?」
「それは、…」
「てかちょっと2人とも落ち着いて?引っ張るのやめて?もう人の目ってもんがあるんだから…」
全く私の話を聞いていない彼ら。
そして優斗が一瞬怯んだ隙に、類くんは再び私を引っ張って胸にしまって私の肩を抱く。
「誰に何言われようが俺のことは俺が決める。そんでこいつが好きなのは俺だから」
堂々と、自信満々に言われてしまって私は一瞬で顔が赤くなった。
類くんもしかしてお酒でも飲んでるの?と思ったがアルコールの匂いはしない。
そして優斗は私だけを見て言った。
「…俺、もう幼馴染としてじゃなく、明子を好きな女として接するから」
聞き慣れた声、見慣れた顔、安心できる優斗の香り。
全部、それが今日で変わってしまったみたい。
なんだか優斗が違う人に見えてくる。
私がその言葉に複雑な気持ちを抱いている中、類くんは私を引っ張って駅へと歩き出した。
「えっと、類くん、私ん家向こうなんだけど…」
「このまま普通に家に帰すと思う?」
あ、これ結構キレてますねー…。
にしても、どうしてもっと優しく連れてってくれないの!
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話
赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。
前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
エクササイズマシン発表会
リビドー360
恋愛
ひょんなことから新型のエクササイズマシンのプレゼンをすることになった女子大生のリホと、リホの幼馴染でちょっとエッチな発明家のワタル。 プレゼン会場では大勢の観衆が見守る中、ワタルがマシンに細工した数々のエロエロな仕掛けがリホを襲う。 80年代のちょっとエッチな少年漫画をオマージュし、そこに少し過激度を加えたお話です。 パクリじゃないよ!インスパイアだよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる