2 / 47
第2話 白い炎に奪われた時間
しおりを挟む
ひどく混乱していた。
かがめという師匠の声と爆風、そして、血の匂い。
何もかもが一瞬だ。
現実味のない、どこかおかしな感覚と今まで感じたことのないレベルの恐怖が混在している。
師匠の片腕がない。
まだ思考が追い付いてこない理由は目の前に広がっている景色のせいだ。
ついぞさっきまであった木々がなくなっているどころか、まるで爆弾が投下された後のように、何の痕跡もなく、風景ごとえぐりとられている。
悪鬼だけを焼き尽くす私たちの炎とは性質が違いすぎる炎が今、目の前にある。
ただひたすらに白い炎。
粘稠性の高い泥のような、生コンクリートのような見たこともない形状の炎。
ゾッとする感覚の後、肺が締め付けられるような息苦しさを覚え、わずかに遅れてこの感覚が巧く唾が呑み込めないほどの圧倒的な恐怖なのだと理解した。
目がどうしても一点をみつめたきり、そらすことができない。
まるで金縛りだ。
駄目だとわかっていても動けない。
真っ白い異様な炎の中心には確かに人がいる。
その顔を確かめようとした瞬間、ただならぬ状況を察した師匠の声が縛りを切り裂くように夜闇に響き渡った。
見るんじゃないという師匠の声に、我に返った私はようやく視線を自分の意志で動かすことができた。口答えなどできる余裕などあるわけがなく、言われるがまま迷うことなく目を閉じた。
間髪入れず、腰が抜けたままの腑抜けなこの私の身体を、師匠が残った片腕で抱え上げてくれた。
「逃げ切るまで、絶対に目を開けるなよ」
師匠はそう言って、縦横無尽に走り出した。
まるで伊弉冉に追われる伊弉諾の物語のように、振り返ることなく走り抜ける。
汗をかくのが嫌いなくせに、獣道を器用に駆け下りていく。
息が上がってきている師匠の声に素直に従うも誰かがせせら笑うような気味の悪い声が幾度も耳に届いた。思念を飛ばしてきているようで、全身が総毛だつ。
『お前は大丈夫だ』
脳裏に突如として声が響く。それは師匠の声ではない。
だが嫌な気のしない声。
『お前がやるんだ』
また声がする。
その瞬間、ひどい頭痛がした。
『お前がやれ』
どこか懐かしい声の響きである気もするが、誰の声であるのかがわからない。
やれと言われてもと眉を顰める。
『悪いが、勝手にする』
何をと私が問うより早くに私の意識はそこでぷつりと途切れた。
※
規則正しい寝息が聞こえ、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
戦闘の気配のしないやけに平和な空間にいることはよくわかった。
目を覚ました時に視界に飛び込んできたのは白い炎ではなく、見慣れた古い杉板でできた天井だ。見慣れた傷だらけの柱があったからすぐに本家に戻されていたことがわかった。
すぐ隣からは治療を受けたらしい師匠の寝息がきこえた。
自分が何をしていたのか、よくわからずに、師匠の寝顔をみつめた。
何をしていたっけと首を傾げた瞬間、ぞっとするぐらいの恐怖が蘇ってきた。
「白い炎!」
ベッドから慌てて体を起こすと、自分の右腕に激痛が走り、夢ではないと悟った。
傷口に手で触れてみるとその痛みの激しさにたまらず、声を上げてしまった。
この私の声を聞きつけた母がものすごい勢いで部屋へ飛び込んできた。
良かったともみくちゃにされながら、疑問符だらけだ。
痛みの元凶に目をやると幾重にもまかれた包帯。指先までしびれが走るほどの傷があるのだろう。
腕を持ち上げようとするだけで声が漏れるほどの痛みがある。
私には怪我をした記憶などない。小さく疑問の言葉が無意識にこぼれおちた。
母の表情がわずかに曇り、だがすぐに、それを打ち消すように彼女はわずかに上ずった声でこう言った。
「あれだけ大変な山道を駆け下りてきたんだから傷くらいできる」
違和感だらけのこの回答に、今度ははっきりと疑いを口にした。
「こんなに痛いなら覚えてるはずだ!」
母は一瞬だけ目を見開いて、すぐにそらした。
そして、見事なまでに歯切れの悪い答えばかりをならべ、もう直接目を合わせようとしない。
年より若くみられがちで、豪快そのもの、竹を割ったような性格の母。
嘘のつけないこの人は確実に何かを隠そうとしている。
「もういいんだってば! 何もなかったと言ってるじゃないか!」
珍しく声を荒げる母の手から紅の仮面が滑り落ちた。
よくみると、母の髪は雨に濡れていたのか、汗なのかびっしょりだ。
それにマントも着たままだ。
仕事もそこそこに片づけ、慌ててこの場へ舞い戻ってきていたのだとようやくわかった。
このやりとりに片腕を失くし、とんでもなく痛いはずの師匠が目を覚まして、私の名前を呼んだ。もう追求するなというニュアンスがこめられている響きだ。
それが例えようもないほどに無性に悔しかった。
ふいに怒りがこみ上げてきたが、すっと視線をうつすと、そこには血を失いすぎたのか今や土気色の肌をした男の顔があり、私のチープな感情はあっさりと吹き飛んだ。
「お前が気を失うから悪いんだぞ。 俺なんぞ、腕持っていかれたんだからな」
あっけらかんと豪快に笑って見せる師匠の顔をまっすぐに見ることができなかった。自分をかばって失ったのだから余計にいたたまれない。
彼が単独であったならばひょっとしなくてもこんな怪我はしなかった。
自分の未熟さが生んだ現実がこれだ。
おそるおそるもう一度、ゆっくりと公介の方へ目をやると、彼は一つだけ頷いてみせた。
いつも飄々として、緊張感のない笑顔がトレードマークのはずの公介が眉間にしわを寄せている。
念を押すように、公介は目だけで頷いた。
あふれんばかりの言いたいことはもう封じられるしかない。
唇の内側をかんで、公介の言葉通りに飲み込むしかない。
公介はむかつくが、間違いは犯さない。
腐っても伯父なのだし、それに逆らう必要もない。
思う所はあっても今は待つのが正解なのだと言い聞かせた。
公介はそっと体を起こすと、無事だった方の腕をわざわざ伸ばしてくる。
今度は伸ばされた手から逃れることはせずに黙って撫でられることにした。
頭をなでられながら、今は飲み込むしかないのだと再度、言い聞かせ、目を閉じた。
身体は疲れ切っており、そこら中が筋肉痛や打ち身だらけだった。
公介になでられて、こうやって目を閉じていると、いくらでも眠れてしまう気がする。
身体が沈んでいくような感覚がして、私は不覚にも眠りに落ちてしまった。
その結果、伯父が何を思って、この部屋を出ていき、姿を消したのか、その意図するところを何一つ聞くことができなかった。
あの時、真実、何が起こったのかを知る唯一の人間が消え、私は成り行き上、たった一人で黄泉使いの大家である宗像家を背負うこととなった。
※
死後、人間はしばらく己の生の学びを得る旅に出る。
死して終わりでないというのはこのためだ。
「汝は何であるか?」
これが最後の問答となる。
天国と地獄のジャッジの問答と言うわけだ。
これを見事にクリアできた者、つまりは学びを悟り得た者から順に真実の死を許される。
死を許された者は冥府にある審判の門をくぐり、黄泉にあるとされる真実の泉で新たな名を与えられ、全ての苦痛が取り除かれ、魂の再生の場へ進むことが許されるというわけだ。
これが、俗に言う天国だ。
これとは逆に学びの得られない魂は人型を保ち、生前同様に様々な苦痛を感じ続けながら、現世にとどまることになる。
とどまればとどまるほどに、喜びや楽しみを司る正の感情は失われ、怒りと悲しみを司る負の感情に支配されることとなり、己の学びを遠ざけてしまう結果となる。
その上、運の悪いことに悪鬼はその負に傾いた魂を好んで食らう。断末魔の叫びをあげ、血を流す魂を悪鬼は食らい続ける。完全に食らわれつくすまで悪鬼の捕食は続き、最後の肉片一欠けになったとしてもあの世に行くことが許されない。これが、俗に言う地獄となる。
地獄にはさらなる地獄がある。
迷える魂の中には悪鬼に転成し、飢餓地獄に身を落す者もおり、魂を食い続けることだけが、飢えをしのぐ唯一の手段となる。悪鬼になった者に終わりは決して訪れることはなく、飢える感覚から永遠に逃れられず、狩られることだけが終わりを得る方法となる。
『悪しき者、死して許されることなし』
地獄に落ちる魂は、ごく稀な例を除き、己を知らない罪深い人間ばかりだ。
どうやら、肉体の死を迎えた後も、尚、学ばぬ者を徹底的に罰するというのが死後の世界の規定らしい。
故に、死んだら楽になるは違う。死んだら終わりになるというのも違うというわけだ。
だから、黄泉使いとして生きている性質上、自分自身に問いたくなる。
吾は何であるか。
吾は何者であるか。
まだ、答えは見つからない。このままじゃ、地獄まっしぐら。
くわばら、くわばらと話をそらしてみても、解決するわけじゃない。
だから、迷いながらも、自分の魂に与えられた教育期間である寿命を生き抜くしかないのだろうと受け入れるしかない。
かがめという師匠の声と爆風、そして、血の匂い。
何もかもが一瞬だ。
現実味のない、どこかおかしな感覚と今まで感じたことのないレベルの恐怖が混在している。
師匠の片腕がない。
まだ思考が追い付いてこない理由は目の前に広がっている景色のせいだ。
ついぞさっきまであった木々がなくなっているどころか、まるで爆弾が投下された後のように、何の痕跡もなく、風景ごとえぐりとられている。
悪鬼だけを焼き尽くす私たちの炎とは性質が違いすぎる炎が今、目の前にある。
ただひたすらに白い炎。
粘稠性の高い泥のような、生コンクリートのような見たこともない形状の炎。
ゾッとする感覚の後、肺が締め付けられるような息苦しさを覚え、わずかに遅れてこの感覚が巧く唾が呑み込めないほどの圧倒的な恐怖なのだと理解した。
目がどうしても一点をみつめたきり、そらすことができない。
まるで金縛りだ。
駄目だとわかっていても動けない。
真っ白い異様な炎の中心には確かに人がいる。
その顔を確かめようとした瞬間、ただならぬ状況を察した師匠の声が縛りを切り裂くように夜闇に響き渡った。
見るんじゃないという師匠の声に、我に返った私はようやく視線を自分の意志で動かすことができた。口答えなどできる余裕などあるわけがなく、言われるがまま迷うことなく目を閉じた。
間髪入れず、腰が抜けたままの腑抜けなこの私の身体を、師匠が残った片腕で抱え上げてくれた。
「逃げ切るまで、絶対に目を開けるなよ」
師匠はそう言って、縦横無尽に走り出した。
まるで伊弉冉に追われる伊弉諾の物語のように、振り返ることなく走り抜ける。
汗をかくのが嫌いなくせに、獣道を器用に駆け下りていく。
息が上がってきている師匠の声に素直に従うも誰かがせせら笑うような気味の悪い声が幾度も耳に届いた。思念を飛ばしてきているようで、全身が総毛だつ。
『お前は大丈夫だ』
脳裏に突如として声が響く。それは師匠の声ではない。
だが嫌な気のしない声。
『お前がやるんだ』
また声がする。
その瞬間、ひどい頭痛がした。
『お前がやれ』
どこか懐かしい声の響きである気もするが、誰の声であるのかがわからない。
やれと言われてもと眉を顰める。
『悪いが、勝手にする』
何をと私が問うより早くに私の意識はそこでぷつりと途切れた。
※
規則正しい寝息が聞こえ、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
戦闘の気配のしないやけに平和な空間にいることはよくわかった。
目を覚ました時に視界に飛び込んできたのは白い炎ではなく、見慣れた古い杉板でできた天井だ。見慣れた傷だらけの柱があったからすぐに本家に戻されていたことがわかった。
すぐ隣からは治療を受けたらしい師匠の寝息がきこえた。
自分が何をしていたのか、よくわからずに、師匠の寝顔をみつめた。
何をしていたっけと首を傾げた瞬間、ぞっとするぐらいの恐怖が蘇ってきた。
「白い炎!」
ベッドから慌てて体を起こすと、自分の右腕に激痛が走り、夢ではないと悟った。
傷口に手で触れてみるとその痛みの激しさにたまらず、声を上げてしまった。
この私の声を聞きつけた母がものすごい勢いで部屋へ飛び込んできた。
良かったともみくちゃにされながら、疑問符だらけだ。
痛みの元凶に目をやると幾重にもまかれた包帯。指先までしびれが走るほどの傷があるのだろう。
腕を持ち上げようとするだけで声が漏れるほどの痛みがある。
私には怪我をした記憶などない。小さく疑問の言葉が無意識にこぼれおちた。
母の表情がわずかに曇り、だがすぐに、それを打ち消すように彼女はわずかに上ずった声でこう言った。
「あれだけ大変な山道を駆け下りてきたんだから傷くらいできる」
違和感だらけのこの回答に、今度ははっきりと疑いを口にした。
「こんなに痛いなら覚えてるはずだ!」
母は一瞬だけ目を見開いて、すぐにそらした。
そして、見事なまでに歯切れの悪い答えばかりをならべ、もう直接目を合わせようとしない。
年より若くみられがちで、豪快そのもの、竹を割ったような性格の母。
嘘のつけないこの人は確実に何かを隠そうとしている。
「もういいんだってば! 何もなかったと言ってるじゃないか!」
珍しく声を荒げる母の手から紅の仮面が滑り落ちた。
よくみると、母の髪は雨に濡れていたのか、汗なのかびっしょりだ。
それにマントも着たままだ。
仕事もそこそこに片づけ、慌ててこの場へ舞い戻ってきていたのだとようやくわかった。
このやりとりに片腕を失くし、とんでもなく痛いはずの師匠が目を覚まして、私の名前を呼んだ。もう追求するなというニュアンスがこめられている響きだ。
それが例えようもないほどに無性に悔しかった。
ふいに怒りがこみ上げてきたが、すっと視線をうつすと、そこには血を失いすぎたのか今や土気色の肌をした男の顔があり、私のチープな感情はあっさりと吹き飛んだ。
「お前が気を失うから悪いんだぞ。 俺なんぞ、腕持っていかれたんだからな」
あっけらかんと豪快に笑って見せる師匠の顔をまっすぐに見ることができなかった。自分をかばって失ったのだから余計にいたたまれない。
彼が単独であったならばひょっとしなくてもこんな怪我はしなかった。
自分の未熟さが生んだ現実がこれだ。
おそるおそるもう一度、ゆっくりと公介の方へ目をやると、彼は一つだけ頷いてみせた。
いつも飄々として、緊張感のない笑顔がトレードマークのはずの公介が眉間にしわを寄せている。
念を押すように、公介は目だけで頷いた。
あふれんばかりの言いたいことはもう封じられるしかない。
唇の内側をかんで、公介の言葉通りに飲み込むしかない。
公介はむかつくが、間違いは犯さない。
腐っても伯父なのだし、それに逆らう必要もない。
思う所はあっても今は待つのが正解なのだと言い聞かせた。
公介はそっと体を起こすと、無事だった方の腕をわざわざ伸ばしてくる。
今度は伸ばされた手から逃れることはせずに黙って撫でられることにした。
頭をなでられながら、今は飲み込むしかないのだと再度、言い聞かせ、目を閉じた。
身体は疲れ切っており、そこら中が筋肉痛や打ち身だらけだった。
公介になでられて、こうやって目を閉じていると、いくらでも眠れてしまう気がする。
身体が沈んでいくような感覚がして、私は不覚にも眠りに落ちてしまった。
その結果、伯父が何を思って、この部屋を出ていき、姿を消したのか、その意図するところを何一つ聞くことができなかった。
あの時、真実、何が起こったのかを知る唯一の人間が消え、私は成り行き上、たった一人で黄泉使いの大家である宗像家を背負うこととなった。
※
死後、人間はしばらく己の生の学びを得る旅に出る。
死して終わりでないというのはこのためだ。
「汝は何であるか?」
これが最後の問答となる。
天国と地獄のジャッジの問答と言うわけだ。
これを見事にクリアできた者、つまりは学びを悟り得た者から順に真実の死を許される。
死を許された者は冥府にある審判の門をくぐり、黄泉にあるとされる真実の泉で新たな名を与えられ、全ての苦痛が取り除かれ、魂の再生の場へ進むことが許されるというわけだ。
これが、俗に言う天国だ。
これとは逆に学びの得られない魂は人型を保ち、生前同様に様々な苦痛を感じ続けながら、現世にとどまることになる。
とどまればとどまるほどに、喜びや楽しみを司る正の感情は失われ、怒りと悲しみを司る負の感情に支配されることとなり、己の学びを遠ざけてしまう結果となる。
その上、運の悪いことに悪鬼はその負に傾いた魂を好んで食らう。断末魔の叫びをあげ、血を流す魂を悪鬼は食らい続ける。完全に食らわれつくすまで悪鬼の捕食は続き、最後の肉片一欠けになったとしてもあの世に行くことが許されない。これが、俗に言う地獄となる。
地獄にはさらなる地獄がある。
迷える魂の中には悪鬼に転成し、飢餓地獄に身を落す者もおり、魂を食い続けることだけが、飢えをしのぐ唯一の手段となる。悪鬼になった者に終わりは決して訪れることはなく、飢える感覚から永遠に逃れられず、狩られることだけが終わりを得る方法となる。
『悪しき者、死して許されることなし』
地獄に落ちる魂は、ごく稀な例を除き、己を知らない罪深い人間ばかりだ。
どうやら、肉体の死を迎えた後も、尚、学ばぬ者を徹底的に罰するというのが死後の世界の規定らしい。
故に、死んだら楽になるは違う。死んだら終わりになるというのも違うというわけだ。
だから、黄泉使いとして生きている性質上、自分自身に問いたくなる。
吾は何であるか。
吾は何者であるか。
まだ、答えは見つからない。このままじゃ、地獄まっしぐら。
くわばら、くわばらと話をそらしてみても、解決するわけじゃない。
だから、迷いながらも、自分の魂に与えられた教育期間である寿命を生き抜くしかないのだろうと受け入れるしかない。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる