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彼女が死んだ、そんな世界の物語。
彼女が死んだ、そんな世界の物語。
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夢を見ていた。詩織と僕は真っ暗な空間に閉じ込められていた。詩織は明るい方に歩いていく。僕は詩織に追いつこうとするけど、追いつけない。どれだけ走っても、手を伸ばしても、髪の毛一本にも触れることができない。あの言葉が蘇る。
「嘘つき。」
彼女が最後に遺した言葉。今にも泣き出しそうな、でもどこか優しさが混じっているような…そんな声で。そうだ。僕は嘘をついたんだ。あそこで本当のこと、「気にしないわけないだろ!」と、言っていたら詩織は橋から落ちなかったのか?僕に何か相談してくれたんじゃないのか?僕のあの一言で殺してしまったのではないのか?だったら僕は人殺しだ。何が「嘘は人を幸せにする」だ。嘘で僕は詩織を殺してしまった。僕は前を行く詩織の背中に向かって叫んだ。
「ごめん!嘘なんかついてごめん!本当は心配してたんだよ…!今からでも僕に話してよ!僕が絶対解決させる!何をしてでも!だから…お願い…こっちを見てよ…」
僕は涙で顔をぐちゃぐちゃにしていった。こんな顔なんか見られたくない。でも、僕を、僕の目を見て欲しかった。詩織は足の歩みを止めた。そして出口の方を見ながら、
「私、嘘が一番嫌いなんだよ。」
それは詩織の幼い頃の声だった。そうだ。なんでこんな大事なことを忘れてしまっていたんだ。僕と詩織は幼稚園からの幼馴染だった。詩織と初めて会った時、そう言ったのだ。
「……」
僕は言い返すことが出来なかった。どうしようもない不安、後悔、罪悪感…それに僕が溺れかけた時、目が覚めた。見るとそこは病院だった。僕は誰もいないベットで一人泣くのだった。
学校には行きたくはなかった。心がもう持ちそうになかった。詩織のいない席を見たら折れそうだったから。でも、いかなければいけないのだ。日常を、取り戻すために。教室に入ると、彼女の席に花が置かれてあった。彼女の席の周りには詩織の友達がいて、みんな泣いていた。詩織は誰にでも明るかったから、友達もたくさんいた。そんな友達が、僕を睨めつけているのに僕は気づいた。
「…お前が、殺したのか…!」
「この人殺し!」
「お前が死ねばよかったのに!」
「詩織ちゃんを返せ!」
沢山の罵声が僕に向かって飛んできた。疑われるのも無理はない。だって僕の隣で自殺したんだから。動機は僕にもわからない。僕が殺していないと言う証拠もない。でも、僕が殺したも同然だった。僕が嘘をついてしまったから、詩織は死んだ。夢のこともあり、僕は言い返すことが出来なかった。
それからとはいうもの、僕の日常は帰ってこない。学校ではいじめられ、警察からの明らかに誘導している質問、ストレスが溜まり、今までののんびりとした僕はもういなかった。冷静になった僕は考えた。どうしたら楽になれるのか。どうしたら日常を取り戻せるのか。必死に考えた。そして、ある考えに至った。それは詩織と同じ道、自殺である。もう、うんざりだ。何もかも嫌いだ。俺をいじめるあいつらも、親を傷つける自分自身も。もう、おさらばしよう。生まれ変わりたいのだ。詩織も同じ気持ちだったのだろうか。でも同じじゃなくても僕は詩織と同じ道をいくことで少し安心していた。場所は詩織が自殺した場所に決めた。明日の夜、あの橋でおさらばだ。
橋に着いた。たい焼きを買った。10個買った。でも美味しいとは思わなかった。風が吹く。冷たい、肌に刺さる寒さだ。空は…雪が舞っていた。詩織が死んで、まだ1週間も経っていない。警察からは家にいるように言われている。でも死ぬから問題ない。橋の下をみる。ブルーシートが引かれてあった。死ぬ。その恐怖はなかった。これで、楽になれる。周りを見る。誰にも見られてはいない。そして詩織がいた方をみる。そこには、少女が石の壁の上に立っていた。靴を脱いで。
「嘘つき。」
彼女が最後に遺した言葉。今にも泣き出しそうな、でもどこか優しさが混じっているような…そんな声で。そうだ。僕は嘘をついたんだ。あそこで本当のこと、「気にしないわけないだろ!」と、言っていたら詩織は橋から落ちなかったのか?僕に何か相談してくれたんじゃないのか?僕のあの一言で殺してしまったのではないのか?だったら僕は人殺しだ。何が「嘘は人を幸せにする」だ。嘘で僕は詩織を殺してしまった。僕は前を行く詩織の背中に向かって叫んだ。
「ごめん!嘘なんかついてごめん!本当は心配してたんだよ…!今からでも僕に話してよ!僕が絶対解決させる!何をしてでも!だから…お願い…こっちを見てよ…」
僕は涙で顔をぐちゃぐちゃにしていった。こんな顔なんか見られたくない。でも、僕を、僕の目を見て欲しかった。詩織は足の歩みを止めた。そして出口の方を見ながら、
「私、嘘が一番嫌いなんだよ。」
それは詩織の幼い頃の声だった。そうだ。なんでこんな大事なことを忘れてしまっていたんだ。僕と詩織は幼稚園からの幼馴染だった。詩織と初めて会った時、そう言ったのだ。
「……」
僕は言い返すことが出来なかった。どうしようもない不安、後悔、罪悪感…それに僕が溺れかけた時、目が覚めた。見るとそこは病院だった。僕は誰もいないベットで一人泣くのだった。
学校には行きたくはなかった。心がもう持ちそうになかった。詩織のいない席を見たら折れそうだったから。でも、いかなければいけないのだ。日常を、取り戻すために。教室に入ると、彼女の席に花が置かれてあった。彼女の席の周りには詩織の友達がいて、みんな泣いていた。詩織は誰にでも明るかったから、友達もたくさんいた。そんな友達が、僕を睨めつけているのに僕は気づいた。
「…お前が、殺したのか…!」
「この人殺し!」
「お前が死ねばよかったのに!」
「詩織ちゃんを返せ!」
沢山の罵声が僕に向かって飛んできた。疑われるのも無理はない。だって僕の隣で自殺したんだから。動機は僕にもわからない。僕が殺していないと言う証拠もない。でも、僕が殺したも同然だった。僕が嘘をついてしまったから、詩織は死んだ。夢のこともあり、僕は言い返すことが出来なかった。
それからとはいうもの、僕の日常は帰ってこない。学校ではいじめられ、警察からの明らかに誘導している質問、ストレスが溜まり、今までののんびりとした僕はもういなかった。冷静になった僕は考えた。どうしたら楽になれるのか。どうしたら日常を取り戻せるのか。必死に考えた。そして、ある考えに至った。それは詩織と同じ道、自殺である。もう、うんざりだ。何もかも嫌いだ。俺をいじめるあいつらも、親を傷つける自分自身も。もう、おさらばしよう。生まれ変わりたいのだ。詩織も同じ気持ちだったのだろうか。でも同じじゃなくても僕は詩織と同じ道をいくことで少し安心していた。場所は詩織が自殺した場所に決めた。明日の夜、あの橋でおさらばだ。
橋に着いた。たい焼きを買った。10個買った。でも美味しいとは思わなかった。風が吹く。冷たい、肌に刺さる寒さだ。空は…雪が舞っていた。詩織が死んで、まだ1週間も経っていない。警察からは家にいるように言われている。でも死ぬから問題ない。橋の下をみる。ブルーシートが引かれてあった。死ぬ。その恐怖はなかった。これで、楽になれる。周りを見る。誰にも見られてはいない。そして詩織がいた方をみる。そこには、少女が石の壁の上に立っていた。靴を脱いで。
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