君となら

紺色橙

文字の大きさ
上 下
41 / 41

おまけ

しおりを挟む
 アキラと共にやっているゲーム。オフ会には積極的に参加した。仲良くなった時彼は既に引きこもりを公表していて不参加表明をしていたけれど、もしかしたら気が変わるかもしれないと思ったから。

 自分は行く気がないというのに、ギルドチャットでオフ会の話がされるのに乗っていた。どんなところでやるのかとか酒が好きな人がいるから3次会まで行くんじゃないかとか、そんな話に茶々を入れていたから、もしかしたら直前になって出てくるかもしれないと期待した。
 もちろん遠方や時間的に参加できない人は他にもいて、彼は気を使ってかその人たちとも積極的に遊んでいた。疎外感を感じさせないようにだろう。

 長くやっていれば自然と仲良くなるもので、ギルド単位で次のゲームに行くことがあった。それは最終的には年単位の時間経過で解散となるのだけど、その時にアキラの写真を見せてもらったことがある。
 俺たちがパートナーになれたように、ギルドメンバーが結婚したのだ。結婚式に参加はしていないけれど、お祝いのオフ会が開かれた。アキラはゲームの中でお祝いを送り、やはりオフ会には来なかった。

「何がそんなにダメなんだろう」
「うーん。酒も飲まないし大人しい子ではあったよ」

 『ふわふわ』というゲーム名でプレイしているギルドマスターの女性。盾職をいつも選び、アキラのことを勧誘した人だ。結婚相手のギルメンはサブマスターだったわけではなく、そしてサブマスターに昇格されもしなかった。
 彼女が誘ったからだろう、アキラは過去に一度だけ誘いに乗ったという。

「すごく不細工だとか? そんなことを言ってるけど」
「そんなことないよー。いたって普通」
「見たことがないから」

 アキラはひきこもりだし、自分の顔はお見せするようなもんじゃないと言っていた。

「前の写真あるよ」
「見たい」
「アキラに言ったらだめだよ?」
「言わないよ」
「じゃあ後で、見せてあげる」

 現実からネットの世界に戻り、約束通りふわふわさんから写真を受け取った。保存するなよ、撒くなよ、アキラに言うなよと散々釘を刺された。強い意志で同意して、それを見る。写る5人は現役稼働中のメンバー。そのうちの一人がアキラだった。
 目にかかるような黒髪で、笑おうとしてうまく笑えていないような表情。皴のないTシャツを着た彼は、言っては何だが本当に普通の人だった。特徴のない顔だったけれどしいて言うならば、引きこもり故か子供っぽさが残っている気はした。
 アキラの顔を見たのはそれきりで、約束通り保存することも無かったから記憶は薄れていた。

 ギルドは解散しアキラと二人だけで色んなゲームに手を出してきた。MMORPGの数は減少し、新しいものがあれば片っ端からインストールしていく。
 どんなゲームをやろうとも俺たちは二人だった。新しいギルドに入ることもだんだんとなくなり、フレンドリストに名前が並ぶこともない。時折古いゲームに戻り、無くなったギルドを新しく立ち上げることもせず二人で遊ぶ。それで十分。――なんて、十分だと思っていたのならゲームなんか作りはしない。




 目を閉じたままログアウトして、そのまま現実に帰ってきた。ゲームの中とまったく同じようにベッドで仰向けになる彼は、静かに呼吸をしている。その服を脱がせ、ゲームと同じように肌に触れる。
 首にキスすれば喉仏が上下する。指先で胸先を摘まめば体が反る。太ももを内側から外側へ向けて撫でればそっと足が開く。見た目が変われど女の子の時と同じ反応。

 アキラは美少女でいなければとこだわっていたけれど、中身は同じだ。あの美少女を踊らせるのも、恐怖に体を縮こまらせるのも、気持ちよくなって声を上げるのも結局はアキラがやっていること。見た目は大事だけれど、何十と着せ替えてきた美少女の中身はただ一つ。

 ――アキラが言う通り本当に不細工だったら違っていたかな。
 答えはない。

 ――ものすごい男前なのに謙遜しているだけだったなら違っていたかな。
 やっぱり答えはない。

 俺が知っているのは一目では記憶できないようなどこにでもいそうな男だけ。
 伏せた瞼、薄っすらとした二重のライン。笑おうとしてすぐに引き締められる口角。前髪に隠れた広い眉間。そのせいで優しく子供っぽく見える顔。そのどれもがこうしてとても近くまで寄らなければわからなかった。

「んぅ」

 ゆっくり彼の中に指を入れれば、唇がむっと閉じられる。内壁を擦り、指先で引っ掻く。開かれた足の間には美少女にはないペニスがあって、体の動きに合わせて揺れる。

「は、……っあ」

 漏れているのが女の子の声ではないことに彼は気付いているだろうか。目を閉じたままきっと俺の指にだけ意識がいっているだろう。窄まりを押すようにして中に入り、また戻して、次はもっと奥まで。中指の限界まで奥を突いて、ふにふにと動かす。

「ぁ……あっ、ん」

 空いている指が男である彼を刺激しているのにも、もしかしたら気付いていないのかも。
 シーツを掴む手を撫でて、浮いた腰の下に枕を差し込んだ。曲がった膝を抱え折りたたむ。

「ぅ」

 圧迫感からか息が漏れ、薄っすらと目が開かれた。

「入れるね」
「あ」

 がちがちになった俺を当てて、太ももに抱き着くようにして押し入る。

「あ゛あ゛あ゛……、っあ――」

 指で緩めた穴はそれでも狭い。指で辿ったところをすべて擦り、その体を開いていく。
 開いた目が俺を見て、助けを求めるように手を伸ばす。熱を持った手のひらが腹から背中へと回る。爪を立てるように一生懸命求めてくれるから、キスしたくてそのまま奥へと腰を進めた。

「ぅ、ああ」

 体を折りたたみ息のかかるほど顔を寄せれば、アキラのペニスが彼の体に当たる。

「あ、あ……」
「アキラが好きだよ」
「いま、オレ」
「してることは同じだよ?」

 ちゅっとキスをして引いた体を叩きつける。離れないようにしっかり太ももを抑え込んで、アキラに俺を馴染ませる。。

「んんっ、」
「アキラの中気持ちいいよ。ほら、アキラも気持ちよくなってるのわかるよ」

 硬くなった彼のペニスを指先で弾くと中がキュッと締まった。

「仁!」

 彼が息を吐けば少しだけ緩み、それに合わせてまた動く。攻めようなんて意識しなくても腰が勝手に動き、狭い腹の中を俺のものにしていく。きゅっきゅっと誘うように中が締まり、波打つように奥へと導かれる。

「美少女でセックスするのもいいけど、その後はこうして現実のアキラとさせてね」
「んな、――あ、あ、きもちいい……」
「俺性欲強いから、VRでやったくらいじゃ余裕だよ」

 すりすりとアキラのペニスを撫でてやればぴくぴくと動く。それが可愛くてついついいじくりまわしてしまう。

「あ、うぅっ。いきそ……」

 汗ばんだ肌に張り付く前髪をどかしてやれば、耐えるように眉がしかめられていた。
 アキラはまっすぐに俺を見ている。美少女のアバターではない現実の彼が、目をそらさず俺を見ている。絶頂を求める力のない指先が俺を引っ掻く。

「奥、きもち……あっ、いく、いく……っ!」

 ベッドに手をつき体を支え、ぐいぐいと奥に打ち付ける。肌がぶつかり汗でぺたぺとした音を立てた。
 荒い呼吸を目の前の体に吐き出す。

「あああ……」

 その下半身へと伸びてきた手を抑えつければ、アキラはペニスに触らないまま射精した。どくりどくりと脈打つのに合わせ中が締まる。

「ほら、女の子の時と変わらないでしょ」
「あ……うそ……」

 最後の時にはお尻だけでいけたのだ。
 肌にべったり張り付いたものを見て、アキラは覗き込んでいた頭を落とした。

「……仁は?」
「出したよ? 大丈夫ちゃんとゴムは付けてるから」
「いつのまに……」

 アキラが一度いってもまだ入れたままにしたかったんだけれども、残念ながら耐えられなかった。ひくひくと痙攣する締め付けに搾り取られてしまった。

「あ゛ー」

 柔らかくなったものをずるりと引き抜けば、アキラはまた声を漏らした。



 現実ではほうっておいても綺麗にならない。汗はかいたままで嫌な感じだし、拭いてやらねばアキラの腹にはとぷりと出されたものが残ったまま。
 だけれど心地よさがあった。ぐったりと起き上がれずにいるその体を拭き、撫でて、上がったままの体温を絡める。指先はぴくりと動いただけで握り返してはこないけれど、重なった手のひらは熱い。
 薄く開いた唇に吸い付けば、ゲームの中の美少女のように歯を見せて笑ってくれた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

花雨
2021.08.12 花雨

作品登録しときますね(^^)

解除

あなたにおすすめの小説

底なし沼を覗けば

wannai
BL
 昼間はスポーツジム、夜は趣味で風俗で働く受けが高校の頃の顔見知りの超絶美形なサド野郎に再び付き纏われてるうちにラブになりそうでならない事を選んだ話 ※ 受け本人はハッピーなメリバです ※ 後日談の同人誌(Kindleにあります)にてラブになります

だいきちの拙作ごった煮短編集

だいきち
BL
過去作品の番外編やらを置いていくブックです! 初めましての方は、こちらを試し読みだと思って活用して頂けたら嬉しいです😆 なんだか泣きたくなってきたに関しては単品で零れ話集があるので、こちらはそれ以外のお話置き場になります。 男性妊娠、小スカ、エログロ描写など、本編では書ききれなかったマニアック濡れ場なお話もちまちま載せていきます。こればっかりは好みが分かれると思うので、✳︎の数を気にして読んでいただけるとうれいいです。 ✴︎ 挿入手前まで ✴︎✴︎ 挿入から小スカまで ✴︎✴︎✴︎ 小スカから複数、野外、変態性癖まで 作者思いつきパロディやら、クロスオーバーなんかも書いていければなあと思っています。 リクエスト鋭意受付中、よろしければ感想欄に作品名とリクエストを書いていただければ、ちまちまと更新していきます。 もしかしたらここから生まれる新たなお話もあるかもしれないなあと思いつつ、よければお付き合いいただければ幸いです。 過去作 なんだか泣きたくなってきた(別途こぼれ話集を更新) これは百貨店での俺の話なんだが 名無しの龍は愛されたい ヤンキー、お山の総大将に拾われる、~理不尽が俺に婚姻届押し付けてきた件について~ こっち向いて、運命 アイデンティティは奪われましたが、勇者とその弟に愛されてそれなりに幸せです(更新停止中) ヤンキー、お山の総大将に拾われる2~お騒がせ若天狗は白兎にご執心~ 改稿版これは百貨店で働く俺の話なんだけど 名無しの龍は愛されたい-鱗の記憶が眠る海- 飲み屋の外国人ヤンデレ男と童貞男が人生で初めてのセックスをする話(短編) 守り人は化け物の腕の中 友人の恋が難儀すぎる話(短編) 油彩の箱庭(短編)

もふもふすんすん

まめ
恋愛
チィは獣化出来ない小さな娘 犬獣人ラルフがある日突然連れて来て共に暮らしている チィは大のもふもふ好き 二人はいつも共に居た いつまでも小さいチィ だがある日ラルフが出会った森に行こうと言う ずっとチィには秘密にしていたチィの秘密 チィの本当の名前 ラルフ自身にも秘密が有った ずっとお互い一緒に居ると思っていた だがある事が二人の気持ちにすれ違いを起こし… 第三章に入るまで一旦完結とさせていただきます 気長にお付き合いください R-18です

巻き戻り令息の脱・悪役計画

日村透
BL
※本編完結済。現在は番外後日談を連載中。 日本人男性だった『俺』は、目覚めたら赤い髪の美少年になっていた。 記憶を辿り、どうやらこれは乙女ゲームのキャラクターの子供時代だと気付く。 それも、自分が仕事で製作に関わっていたゲームの、個人的な不憫ランキングナンバー1に輝いていた悪役令息オルフェオ=ロッソだ。  しかしこの悪役、本当に悪だったのか? なんか違わない?  巻き戻って明らかになる真実に『俺』は激怒する。 表に出なかった裏設定の記憶を駆使し、ヒロインと元凶から何もかもを奪うべく、生まれ変わったオルフェオの脱・悪役計画が始まった。

狼王の贄神子様

だいきち
BL
 男性でありながら妊娠できる体。神が作り出した愛し子であるティティアは、その命を返さんとする生贄としての運命に抗うべく、側仕えである鬼族の青年、ロクとともにアキレイアスへ亡命した。  そこは、神話でしか存在しないといわれた獣人達の国。 「どうせ生贄になるなら、生きている神様の生贄になりたい。」  はじめて己の意思で切り開いた亡命は、獣人の王カエレスの番いという形で居場所を得る。  この国では何をしても構わない。獣頭の神、アテルニクスと同じ姿をもつカエレスは、穏やかな声色でティティアに一つの約束をさせた。  それは、必ずカエレスの子を産むこと。  神話でしか存在しないと言われていた獣人の国で、王の番いとして生きることを許された。  環境の違いに戸惑い疲弊しながらも、ティティアの心を気にかける。穏やかな優しさに、次第にカエレスへと心が惹かれていく。  この人の為に、俺は生きたい。  気がつけば、そう望んで横顔を見つめていた。  しかし、神の番いであるティティアへと、悪意は人知れずその背後まで忍び寄っていた。  神の呪いを身に受ける狼獣人カエレス×生贄として育てられてきた神の愛し子ティティア  お互いを大切にしすぎるせいで視野が狭くなった二人が、周りを巻き込んで幸せな家族になるお話。 ※男性妊娠描写有り ※獣頭攻め ※流血、残酷描写有り ⭐︎20240124 番外編含め本編完結しました⭐︎

からっぽ

明石家秀夫
青春
普通の人って、どんな人だろう。 障がい者じゃない人? 常識がある人? 何をもって、普通というのだろう。 これは、ちょっと変わった男の子が、普通の中学校で、普通の日常を送るだけの物語。 7割実話、3割フィクション。 「事実は小説よりも奇なり」 小説家になろう、カクムヨでも公開中!

LOVE THEME 愛の曲が流れる時

行原荒野
BL
【愛の物語のそばにはいつも、愛の曲が寄り添っている――】 10年以上片恋を引きずっている脚本家の高岡勇士郎は、初めての大きな仕事を前にしたある日、色々と様子がおかしい高身長の(よく見るとイケメン)青年、栗原温人と事故のような出逢いを果たす。 行きがかり上、宿無しの温人を自宅に住まわせることにした勇士郎だったが、寡黙ながらも誠実で包容力のある温人のそばは思いのほか心地よく、戸惑いながらも少しずつ惹かれてゆく。 そんな時、長年の片思いの相手、辻野から結婚式の招待状が届き――。 欠けたピースがピタリとはまる。そんな相手に出逢えた、ちょっとおかしなふたりの優しい恋をお楽しみください。 ※ムーンライトノベルズに掲載していたものに微修正を加えたものです。 ※表紙は画像生成AIとイラスト加工アプリを利用して作成したものです。 いいねやエール、お気に入り、ご感想などありがとうございます!!

【完結】婚約破棄された悪役令嬢は聖女となって竜族と趣味を満喫する

恋愛
 婚約発表のパーティで悪役令嬢にされ、婚約破棄を叩きつけられたセリーヌ。しかし、それはセリーヌが自由になるための策略だった。  予定通り家を追い出され、自由となったセリーヌは目的のためカバン1つで山の中へ。そこで会ったのは、浅黒い肌をした筋肉質なイケメン。  その人こそセリーヌが弟子入りしたいと望んだガラス職人のニアだった。  なんとか弟子入りして理想のガラスを作っていると、婚約破棄した王子が兵士を連れてやってくるという情報が……  策士な公爵令嬢が頑張る話です。 ※小説家になろうにも掲載

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。