君となら

紺色橙

文字の大きさ
上 下
11 / 41

11 年齢制限*

しおりを挟む
 前に立っていた仁が腰をかがめ、目線を合わせてくれる。理解できているのに動けもしないオレの目を見て、それから指先で唇をなぞられた。

 現実と同じ姿の仁は、現実にはないような冒険者らしい服を着ている。ファンタジーの世界。

 ゆっくりと唇が合わせられた。誓いのキスとは違い、一瞬では終わらない。あの時は何だったのかもよくわからなかった。目を閉じていたものだから、それが本当にキスだったのかすら怪しい。
 でも今オレは目を開けていて、迫ってくる仁の顔を見ていた。二重のラインを、睫毛を、瞳に映るオレの白い影を見た。

 呼吸を止めて、目を閉じる。
 唇が柔らかく食まれている。心臓がどくどくと唸り、耳まで過剰なほどに血が巡る。後ろに倒れそうになる肩をそっと支えられ、反射で仁の服を掴んだ。
 近くにいる。
 
 息を止めていられなくて、下を向くようにして離れた。はぁはぁとそっと呼吸をする。
 服を掴んでいた腕を掴まれ、仁が隣に座った。横から抱きしめられて俯いて、自分の白い服を見る。スカートから出ている細い足。

「脱がせてもいい?」
「え、あ、待って」

 視界の端にツインテールが揺れている。肩から落ちて、腕を撫でた。
 装備欄のボタン一つで服を脱いだ。レースやフリルなんかついていない、ほんとに簡素な下着姿になる。

「なんというかずいぶん」
「あーごめん、この脱ぎ方じゃダメだったか」

 笑う仁に理解した。脱がせると言ったのに、突然目の前の女の子が裸同然になってしまえば魅力半減だと思う。それでも彼は良いよと笑って、もう一度オレにキスをした。


 オレは今美少女アキラだから、変な行動をしても大丈夫。どんなだって可愛い女の子がするならば、可愛く見える。


 実体験が無くとも、山ほど二次元と三次元の女の子を見てきた。画面越し、可愛い女の子たちが触られて気持ちよさそうに喘ぐ姿に興奮する、そういうどこにでもいる男だから。
 今オレは見てきた女の子になっている。
 スーツの似合う、ファンタジーな冒険者の服だって似合う男が目の前にいる。キスされて、可愛いねと言われて、その気になる。

 自分だけど自分じゃない。可愛い女の子が襲われそうな状況にドキドキした。

 風呂に入った時に自分で触れた白い肌に、仁が触る。作り物だから毛の一本も生えていない太ももを撫でられ、この体にはついていないはずのモノが反応している気さえする。

 抵抗なんかする気はないけれど、どうしていいか分からなかった。山ほど見てきた女の子たちがしていた可愛い反応を、受け入れるやり方を、オレはそこまで真剣には見ていなかった。
 あの子たちはどうやって動いていたんだっけ。触られたいと思うけれど、誘い方を知らない。
 オレは童貞なものだから、女の子たちの演技と本気の区別がつかない。そうしてぼんやりとただ全体を見ていたそれに、自分を落とし込めるわけもなかった。
 でも今のオレは反応している。多少の演技をして相手を喜ばせるのは大事だろうと思うけれど、そんな事せずともここにいる美少女は既にその気になっていた。

 とりあえず脱げばいいのかとブラジャーに手をかけてみる。けれど背中にある金具の引っ掛かりがわからない。伸びてきた手に任せた。
 心臓はずっとドキドキしている。守られなくなった胸をそっと触った。触られた感覚は自分にあるのに、他人のものだと意識している。頭が混乱する。薄ピンク色の乳首と、片手に収まる膨らみ。だけど柔らかい。

「女の子の体ってえろい」
「アキラの体だよ、それ」

 仁に笑われる。素直な感想だから仕方ない。映像で見ていたものと同じ、大きさや形は個人差があるだろうけど、それでも女の子の体に感動すら覚える。

 まじまじと自分のであり他人のものである胸を触り見ていると、肩にかかっていたブラジャーの紐を腕から外され、そのまま押し倒された。

「可愛いなぁ」

 可愛い自信はある。初日に動く自分を見て可愛いと思ったし、他人の目から見ても美少女で間違いないはずだ。
 白い肌も薄いピンクみを帯びた金髪も紫っぽい宝石のような瞳も、それこそ人形のように可愛くできている。明るい風呂場では誰にか申し訳なくて自分の身体をあちこちまさぐり鏡で直視することは出来なかったけれど、どこもかしこも完璧と言っていいはず。

 優しく胸を触られた。乳首を撫で擦るように動く指先、それに反応する体。

「うにゃ」

 なんだか変な声が出てしまう。リアルのオレはこんなところを触られたこともないし、自分で洗ったところで気持ちよさなんかないのに。
 だけど仁が触ればそうじゃない。意識が胸に集中している。腹の中がモヤモヤする。

「うー」

 くすぐったくて、気持ちがいい。オレを見下ろす仁に手を伸ばせば、せがんでいると思われたのかまたキスされた。
 優しいキスに力を抜けば、舌がそっと割り込んでくる。目を開き見れば、視線が合った。仁の目が笑う。舌はあくまでも優しくオレを舐めてくる。
 嫌じゃない。ただドキドキだけが増えていく。体温が上がっている。合わせてくれた体の少しの重みとぬくもりを感じた。

 オレより大きな、美少女アキラを包み込めてしまうような男の体。現実のアキラ自分とも違う筋肉のついた仁の腕。腰からするりと下半身に回ってきた手に、何も考えず足を開いた。

「んっ」

 ――言ってはいけないことが口から出てしまいそう。
 
 美少女の体は、中の人であるオレが望んでいるから開かれている。
 下着の上から撫でられるのがもどかしくて、お尻を上げて自分から脱ごうとすれば脱がせてもらえた。

「触ってもいいの?」

 問いに頷いて答える。

「ぅあ」

 毛も生えていない女の子の体に沿っていた手が指先を伸ばす。体の中、きっと1センチほどだって入っていないだろうに、自分の身体が開かれるのが分かる。思ったよりもスムーズに、それでも気を使われながら仁の指が入ってくる。
 耳元で何度も可愛いと囁かれ、息を止めそうになるのを促すようにキスされた。

「あっ、あ……」

 胸を突き出すようにして腰が自然と浮いてしまう。
 ゆっくり抜き差しされる仁の指に煽られる。足の爪先に力が入り、思わずぎゅうっとオレを覆う体を抱き寄せた。

「アキラ可愛い。嫌なら言ってね」
「やじゃない……きもちぃ。いいから……」

 やめてほしくない。
 止まった指を欲すように腰が動いた。仁はそれをわかってくれて、オレの反応を見ながら気持ちいいところを探ってくれる。
 指の根本、体の深くまで刺激されて、どうしたって声が漏れた。口から出るのは可愛い女の子の声で、自分のだとは信じられなくて、人の行為を盗み聞きしているようだと思った。

「な、ダメなこと言っていい?」
「ん?」
「出ちゃいそう」
「おしっこ?」
「違う。違う? と思う。あの……、ちんこ付いてないのにそっち……」

 ずっと射精感があった。気持ちよくなればなるほど、それは知らない感覚と同時に知っている感覚を呼び起こす。体の奥が刺激されてむずむずして、それは知らない感覚。でもそこから吐き出したいというのは知っている男の感覚。
 今は美少女アキラがえっちしてるんだから言っちゃいけないんだろうけど、この体にはついてないはずのものがめちゃめちゃに主張しているようで訳が分からなかった。

「したら?」

 仁はあっさりそんなことを言う。

「気持ち良いのに任せて。そのまま」

 出てしまうものが何でも良いと言うのか。いや女の子だから出るわけがないのか。はたまた尿意の錯覚なのか。とにかく仁は気にしないと笑う。

「ダメっしょ。ね、ダメだと思う」

 非現実ゲームだからといっても粗相をしたくはない。でも訴えても止めてもらえない。やばいと思うまま体は快楽を受け入れる。

「あ、っ、出ちゃう」
「いく、の間違いじゃない?」

 やんわり訂正されるけれどそれがどちらなのか分からない。けどもうどっちでもいいかも。
 指の動きが激しくなって、中を擦られて、への字に閉じた口をついに堪えきれなくなった。

「ダメ、あ、あっ……」

 腹の中から駆け上る気持ちよさ。かすれた声を形なく吐き出し、ぎゅうっと仁に抱き付いた。同じように抱きしめ返され、その力強さに安心した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

君と踏み出す

西沢きさと
BL
そうだ、外出しよう。 ブラック企業のせいで心身ともに擦り切れ、ひきこもりになってしまった詠月《よつき》。そんな彼が突然、外に出ることを決意した。 しかし、思い立った理由はひどく後ろ向きなもので……。 ◆ 酔って一線を越えてしまった友達同士による翌朝のやり取りと、それがきっかけで前を向こうとするひきこもりの話です。 明るい友人×ひきこもり。 ブラック企業は滅びれば良いと思います。

あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお
BL
『あの日、北京の街角で』続編。 先に『あの日、北京の街角で』をご覧くださいm(__)m https://www.alphapolis.co.jp/novel/28475021/523219176 大連で始まる孝弘と祐樹の駐在員生活。 2人のラブラブな日常をお楽しみください。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか

柚ノ木 碧/柚木 彗
BL
夏休み中に家族で田舎の祖母の家に帰省中、突如Ωになりヒートをおこした僕。 そして豹変したように僕に暴言を吐き、荒れ狂う祖母。 呆然とする父。 何も言わなくなった母。 そして、僕は今、田舎の小さな無人駅で一人立ち尽くしている。 こんな僕だけど、ある日突然Ωになってしまったけど、僕の人生はハッピーエンドになれるでしょうか。 初BL&オメガバース連載で、オメガバースは三ヶ月前に知った、超が付く初心者です。 そのため、ふんわり設定です。

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

処理中です...