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第1章…可愛い後輩
滝川竜と桐生美希
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野球、野球、野球。
とにかくオレは野球が好きだ。昔から野球が好きで好きでたまらなかった。
そしてその野球に負けないくらい、もう一つ好きなものがある。
オレの名は滝川竜。
高校3年生の男だ。
今オレには好きな女の子がいる。
その女の子は一つ年下の後輩で名前は桐生美希。
桐生美希はものすごく可愛い。
栗色のサラサラしていて、少しだけウェーブのかかった腰の上ぐらいまで伸びた長い髪。
とても柔らかそうなでかい胸。
スタイルも抜群。
白くてキレイな肌。
パッチリとした優しい瞳。
オレと同じ人間とは思えないくらい整った顔。
身長は155㎝くらい。
……完璧だ。今までいろんな女の子を見てきたが、ここまでオレの好みにぴったりと当てはまったのは美希、お前だけだ。
初めて会ったときから一目惚れだった。ドストライクだった。
美希と初めて出会ったのは去年の春、ちょうど美希がウチの高校に入学してきた頃だ。
オレは野球部に所属している。ポジションはピッチャーだ。……補欠だけどな。
新1年生も入部してきて、甲子園を目指して黙々と練習していたところにマネージャー希望として2人の女の子がやって来た。そのうちの1人が美希だった。
美希を一目見た瞬間、何かがオレの心臓を撃ち抜いた。
……これがオレの初めての恋になった。
「よし、マネージャーが2人入ってきたから紹介するぞー」
練習が終わり、部員全員が集合して、監督が話し始めた。
「じゃあ、吉崎さんと桐生さん、自己紹介して」
監督がそう言うと、マネージャーの2人が前に出てきた。
「1年E組の吉崎吉江です。中学のときは帰宅部でした。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」
吉崎さんの自己紹介が終わると、部員全員が拍手で歓迎した。
吉崎さんは黒髪のおかっぱで丸い眼鏡をかけた一見地味な女子だ。ちょっと痩せすぎでちゃんと食ってんのかって心配になる。
そして、オレが一目惚れした超美少女、桐生美希が自己紹介を始めた。
「1年B組の桐生美希です。中学のときは美術部でした。野球部の皆さんが練習に打ち込めるようにサポートしていきたいと思っています。よろしくお願いします」
自己紹介が終わると、部員全員が大歓声をあげ、大喜びした。
「やべえ……めっちゃくちゃ可愛い……」
「野球部にこんなに可愛い女の子が来てくれるなんて、なんて幸せなんだろオレたち! 超テンション上がってきたぜ!」
部員のみんなが美希を大絶賛した。
おいおい、吉崎さんのときと全然リアクションが違うじゃないか。これじゃ吉崎さんに失礼だろ。
まあ、無理もない。美希は本当に可愛いからな。
入部してすぐに男子部員全員をメロメロにした美希。ある意味兵器だ。
―――
―――で、美希が入部して1年が過ぎた。
オレは高3、美希は高2になった。
同じ部にいるのだからすぐに仲良くなれると思っていた。
ところが、もう1年も同じ部にいるのにオレは美希と一度も話したことはない。
一度たりとも、だ。
なぜだ? なぜ話す機会がないのだ。お互いに意識していなくても、普通会話ぐらいするだろう。
でも、話したことはない。話したけりゃ話しかければいいじゃないか、と思ってる人もいると思う。オレもそう思う。
だが、オレは恥ずかしがり屋でチキンだから話しかけることができない。
こんなんじゃ仲良くなれるわけないというのはわかっている。本当に自分がイヤになる。
ちなみに美希は野球部のエース武井進一と仲がいい。
武井はイケメンで野球の実力もずば抜けているから女の子にすごくモテる。だから美希が好意を持ってもおかしくない。
学校では、美希と武井は付き合っているのではないか、という噂まで出ている。もしその噂が本当だったら、オレは大ショックを受ける。絶対に。
オレと武井はポジションがかぶっていて野球の実力では完全にオレが負けている。
野球で勝てなくて、その上好きな女の子まで取られたら、死ぬほど悔しい。
噂が本当かどうか、武井に聞いて確かめてみようと思う。
練習が終わった後、武井に声をかけた。
「なあ武井、ちょっといいか?」
「ん? なんだ滝川。言っとくけどレギュラーの座を譲るつもりはねーぞ」
「いやそうじゃなくて、実は桐生のことなんだけどさ。お前……その……」
「? 何だよ? はっきり言えよ」
「お前もしかして桐生と付き合っているのか?」
「……」
おい、なんで黙るんだよ武井。死ぬほど気になるんだよ答えてくれ。
「……付き合ってねーよ」
「……本当か?」
「本当だよ」
…………
よかった!! 噂はガセだったか。
……が、喜ぶのも束の間。
「桐生は他校に彼氏いるって聞いたけど」
…………
そ……そんな……
「まあ、他校に彼氏がいるってのもあくまで噂だから気にしなくていいと思うぞ」
また噂かよ。美希っていろんな噂あるんだな。それほど注目を浴びているってことか。この噂もガセであることを祈る。
「……なあ、滝川」
「ん?」
「お前……もしかして桐生のこと好きなのか?」
「!!!!!!」
!?!?!?
なんでわかった!?
「ちっ……ちげえよ!! そんなんじゃねーよ!!」
オレは顔が真っ赤になり、あわてて否定した。
「ほう……その反応……図星か……」
武井はニヤリと笑った。
ダメだ、完全に見抜かれてる。オレってそんなにわかりやすい男なのか。
「あ、ああ……好きだよ。オレは桐生のことがすごく好きだ」
仕方ないから武井に自分の気持ちを正直に言った。
……恥ずかしすぎる。
「そーかー。滝川は桐生のこと好きなのか。まあ、実際のところ桐生に彼氏がいるかどうかってのは不明なんだ。だから、お前にもチャンスはある。頑張れ。応援してるぜ」
てっきり「お前には無理だ、諦めろ」とか言われるものと思っていたが、武井はオレにエールを送ってくれた。
「武井は桐生のこと好きじゃないのか? 最近仲良いみたいだけど、狙ってないのか?」
「オレか? 好きか嫌いかって言われたらもちろん好きだぞ。桐生すげー可愛いもんな。
でも、オレにはちゃんと彼女がいるんだ。桐生と付き合いたいという気持ちがないわけではないんだけど、浮気するわけにはいかねーだろ」
……それを聞いて安心した。
とりあえず武井は恋のライバルではないようだ。
「そうか、わかった。くだらないこと聞いて悪かったな、武井」
「いいってことよ。桐生は競争率高いだろうから、できるだけ早く告白した方がいいぞ。じゃ、オレはこれで」
…………
早く告白した方がいい、か……
オレはやっぱりチキンだ。フラれるのが怖くて告れない……
―――
―――というわけで、美希と仲良くなれないまま時間だけが過ぎていき、最後の夏の大会まであと1ヶ月となった。
もう一度でも負けたら引退。
引退するまでに美希と仲良くなりたい。
できれば連絡先もゲットしたい。せめて会話だけでもしたい。どんなに些細なことでもいい。
このままオレの初恋が終わるのは嫌だ。
練習終了後、オレは自主練で投げ込みをしていた。
キャッチャーを努める飯山のミットを目掛けて、黙々と投げ込んでいく。
オレは球速には自信があり、最速で146キロのストレートを投げられる。
しかし、オレはコントロールが殺人レベルに悪い。
この前の練習試合でもフォアボールやデッドボールを10個以上与えてしまい7失点でKOされてしまった。
監督には「これでは野球にならん」と言われてしまった。
ボールの勢いは武井よりオレの方が上だ。だからコントロールが良くなればレギュラーの座を奪えるかもしれない。だから制球力を磨かなくてははならない。
100球以上投げ、そろそろ自主練習を切り上げようとしたその時。
「竜先輩って、すごく速い球を投げるんですね」
…………え?
この声は……まさか。
オレは後ろを振り向いた。
とにかくオレは野球が好きだ。昔から野球が好きで好きでたまらなかった。
そしてその野球に負けないくらい、もう一つ好きなものがある。
オレの名は滝川竜。
高校3年生の男だ。
今オレには好きな女の子がいる。
その女の子は一つ年下の後輩で名前は桐生美希。
桐生美希はものすごく可愛い。
栗色のサラサラしていて、少しだけウェーブのかかった腰の上ぐらいまで伸びた長い髪。
とても柔らかそうなでかい胸。
スタイルも抜群。
白くてキレイな肌。
パッチリとした優しい瞳。
オレと同じ人間とは思えないくらい整った顔。
身長は155㎝くらい。
……完璧だ。今までいろんな女の子を見てきたが、ここまでオレの好みにぴったりと当てはまったのは美希、お前だけだ。
初めて会ったときから一目惚れだった。ドストライクだった。
美希と初めて出会ったのは去年の春、ちょうど美希がウチの高校に入学してきた頃だ。
オレは野球部に所属している。ポジションはピッチャーだ。……補欠だけどな。
新1年生も入部してきて、甲子園を目指して黙々と練習していたところにマネージャー希望として2人の女の子がやって来た。そのうちの1人が美希だった。
美希を一目見た瞬間、何かがオレの心臓を撃ち抜いた。
……これがオレの初めての恋になった。
「よし、マネージャーが2人入ってきたから紹介するぞー」
練習が終わり、部員全員が集合して、監督が話し始めた。
「じゃあ、吉崎さんと桐生さん、自己紹介して」
監督がそう言うと、マネージャーの2人が前に出てきた。
「1年E組の吉崎吉江です。中学のときは帰宅部でした。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」
吉崎さんの自己紹介が終わると、部員全員が拍手で歓迎した。
吉崎さんは黒髪のおかっぱで丸い眼鏡をかけた一見地味な女子だ。ちょっと痩せすぎでちゃんと食ってんのかって心配になる。
そして、オレが一目惚れした超美少女、桐生美希が自己紹介を始めた。
「1年B組の桐生美希です。中学のときは美術部でした。野球部の皆さんが練習に打ち込めるようにサポートしていきたいと思っています。よろしくお願いします」
自己紹介が終わると、部員全員が大歓声をあげ、大喜びした。
「やべえ……めっちゃくちゃ可愛い……」
「野球部にこんなに可愛い女の子が来てくれるなんて、なんて幸せなんだろオレたち! 超テンション上がってきたぜ!」
部員のみんなが美希を大絶賛した。
おいおい、吉崎さんのときと全然リアクションが違うじゃないか。これじゃ吉崎さんに失礼だろ。
まあ、無理もない。美希は本当に可愛いからな。
入部してすぐに男子部員全員をメロメロにした美希。ある意味兵器だ。
―――
―――で、美希が入部して1年が過ぎた。
オレは高3、美希は高2になった。
同じ部にいるのだからすぐに仲良くなれると思っていた。
ところが、もう1年も同じ部にいるのにオレは美希と一度も話したことはない。
一度たりとも、だ。
なぜだ? なぜ話す機会がないのだ。お互いに意識していなくても、普通会話ぐらいするだろう。
でも、話したことはない。話したけりゃ話しかければいいじゃないか、と思ってる人もいると思う。オレもそう思う。
だが、オレは恥ずかしがり屋でチキンだから話しかけることができない。
こんなんじゃ仲良くなれるわけないというのはわかっている。本当に自分がイヤになる。
ちなみに美希は野球部のエース武井進一と仲がいい。
武井はイケメンで野球の実力もずば抜けているから女の子にすごくモテる。だから美希が好意を持ってもおかしくない。
学校では、美希と武井は付き合っているのではないか、という噂まで出ている。もしその噂が本当だったら、オレは大ショックを受ける。絶対に。
オレと武井はポジションがかぶっていて野球の実力では完全にオレが負けている。
野球で勝てなくて、その上好きな女の子まで取られたら、死ぬほど悔しい。
噂が本当かどうか、武井に聞いて確かめてみようと思う。
練習が終わった後、武井に声をかけた。
「なあ武井、ちょっといいか?」
「ん? なんだ滝川。言っとくけどレギュラーの座を譲るつもりはねーぞ」
「いやそうじゃなくて、実は桐生のことなんだけどさ。お前……その……」
「? 何だよ? はっきり言えよ」
「お前もしかして桐生と付き合っているのか?」
「……」
おい、なんで黙るんだよ武井。死ぬほど気になるんだよ答えてくれ。
「……付き合ってねーよ」
「……本当か?」
「本当だよ」
…………
よかった!! 噂はガセだったか。
……が、喜ぶのも束の間。
「桐生は他校に彼氏いるって聞いたけど」
…………
そ……そんな……
「まあ、他校に彼氏がいるってのもあくまで噂だから気にしなくていいと思うぞ」
また噂かよ。美希っていろんな噂あるんだな。それほど注目を浴びているってことか。この噂もガセであることを祈る。
「……なあ、滝川」
「ん?」
「お前……もしかして桐生のこと好きなのか?」
「!!!!!!」
!?!?!?
なんでわかった!?
「ちっ……ちげえよ!! そんなんじゃねーよ!!」
オレは顔が真っ赤になり、あわてて否定した。
「ほう……その反応……図星か……」
武井はニヤリと笑った。
ダメだ、完全に見抜かれてる。オレってそんなにわかりやすい男なのか。
「あ、ああ……好きだよ。オレは桐生のことがすごく好きだ」
仕方ないから武井に自分の気持ちを正直に言った。
……恥ずかしすぎる。
「そーかー。滝川は桐生のこと好きなのか。まあ、実際のところ桐生に彼氏がいるかどうかってのは不明なんだ。だから、お前にもチャンスはある。頑張れ。応援してるぜ」
てっきり「お前には無理だ、諦めろ」とか言われるものと思っていたが、武井はオレにエールを送ってくれた。
「武井は桐生のこと好きじゃないのか? 最近仲良いみたいだけど、狙ってないのか?」
「オレか? 好きか嫌いかって言われたらもちろん好きだぞ。桐生すげー可愛いもんな。
でも、オレにはちゃんと彼女がいるんだ。桐生と付き合いたいという気持ちがないわけではないんだけど、浮気するわけにはいかねーだろ」
……それを聞いて安心した。
とりあえず武井は恋のライバルではないようだ。
「そうか、わかった。くだらないこと聞いて悪かったな、武井」
「いいってことよ。桐生は競争率高いだろうから、できるだけ早く告白した方がいいぞ。じゃ、オレはこれで」
…………
早く告白した方がいい、か……
オレはやっぱりチキンだ。フラれるのが怖くて告れない……
―――
―――というわけで、美希と仲良くなれないまま時間だけが過ぎていき、最後の夏の大会まであと1ヶ月となった。
もう一度でも負けたら引退。
引退するまでに美希と仲良くなりたい。
できれば連絡先もゲットしたい。せめて会話だけでもしたい。どんなに些細なことでもいい。
このままオレの初恋が終わるのは嫌だ。
練習終了後、オレは自主練で投げ込みをしていた。
キャッチャーを努める飯山のミットを目掛けて、黙々と投げ込んでいく。
オレは球速には自信があり、最速で146キロのストレートを投げられる。
しかし、オレはコントロールが殺人レベルに悪い。
この前の練習試合でもフォアボールやデッドボールを10個以上与えてしまい7失点でKOされてしまった。
監督には「これでは野球にならん」と言われてしまった。
ボールの勢いは武井よりオレの方が上だ。だからコントロールが良くなればレギュラーの座を奪えるかもしれない。だから制球力を磨かなくてははならない。
100球以上投げ、そろそろ自主練習を切り上げようとしたその時。
「竜先輩って、すごく速い球を投げるんですね」
…………え?
この声は……まさか。
オレは後ろを振り向いた。
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