Eternal Rain ~僕と彼の場合~

勇黄

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Eternal Rain ~僕と彼の場合~外伝

Eternal Rain ~俺と彼の場合~⑯

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5日後…。










俺と天士てんじは一緒に
役所から指定された場所へと足を運ぶ。












個室に通されて書類を提示したり
署名したりして淡々と手続きは
進められ30分ほどで
宣誓書と受領証をもらって滞りなく
パートナーシップ宣誓は終了した。













【き、緊張したね…。】
[あ、あぁ。]











【これで本当にパートナーだね…。】









天士てんじ…。これ。]










【ん?】










[俺…。まだ天士てんじ
借金返していかなきゃならない身で
本当に情けないというか…。
でも初めての給料でなにか
プレゼントをしたかったんだ。
ショボいけど…受け取って欲しい。]













かん…。開けていい?】











[ああ。]











ガサガサと袋を開ける天士てんじ











【あ!うわぁ!キーリング?
ん?イニシャル…?】












[…。めちゃ恥ずいんだけどさ。
K☆T…はイニシャルじゃなくて…。
ほら、俺も…。]












俺はポケットにいれていた
自分のキーリングも
取り出して見せる。












【え?…ん?かんとお揃い!
わぁ!嬉しい!…あれ?かん
なんでK☆T?】












かん、星、天士てんじ。だ。]












俺は顔が真っ赤だったろう。











【えっ…!?】











天士てんじは、イニシャルがKTだから
誰もおかしいと思わないよ。

………実はこれ、手作りなんだ。

施設の入所者さんがね。
革小物を趣味で作ってて。
仕事終わってから器具とか
使わせてもらって。
革とか買ってってさ…。

この刻印も俺がやったんだぜ…。
だからよく見たら歪んでるだろ?
でも世界にひとつ、だから。]











天士てんじの瞳から涙が流れる。











【か………んっ。】











[わっ!バカやめろっ!]











天士てんじが人目も憚らず抱きついてきた。












【俺、これ一生大切にする…。
どんな高いブランドものとかよりも
これが一番嬉しい…
宝物だよっ!かんありがとう…
ありがとう………本当に…。

俺みんなに自慢しまくるよ!
俺の旦那さんが作ってくれたんだ、って!】












道の真ん中でぎゅうぎゅうと
抱きついてくる天士てんじ
苦笑いして抱き返す。












[だ、旦那さん、って…。
そ、それはやめとけ…。
恋人、ぐらいにしとけよ…]













【ふふふ…。グズッ…。
………ね、キスする?】











[ばっ!ばかやろう!
するわけねぇだろっ!
…かっ…帰ってから、だっ!]











【あはは!うん…。
かん、早く帰ろう…。】











そう言って天士てんじ
妖艶な笑みをみせた。











[ぐっ…そ、そんな顔して…
煽んなっ!くそっ!]











俺は天士てんじの手をとって走り出した。











家に入るなりどちらからともなく
唇に吸いつく。










長い間飽くことなく唇を貪って
やっと離した時には
俺の唇はジンジンと痺れていた。












きっと天士てんじもそうだろう。
赤い蕩けた顔で荒い息をしている。












【はぁ…はぁ………かん
…………ふふ。
ねぇ…このキーリングの
星マークさ…。ハート、は
なかったの?】












[あ………あった…けど?
な、なんだ、よ…。]











【いや…?かんがハートの刻印を
手に持って真っ赤になって
迷ってるのが想像できたから…
ふふ。】











[ばっ!ばかやろう!
迷ってなんか………。]










【くくく…図星?】











[くそっ…なんでわかんだよ!
バカ!]










【!!…あはは!かん
大好きだよ!愛してる!】











力いっぱい抱きついてくる天士てんじ
抱きとめて俺も気づけば笑っていた。












[愛してる!天士てんじ!。ぐははっ!]



































----------------------------




『おめでとう!』
「おめでと~!」











パチパチパチパチ~と拍手の次に
クラッカーを鳴らされて面食らう。











【ありがとう!】









晴れやかな顔で天士てんじは答えて
俺のほうを振り返った。











しかたなく頭を下げて
戸惑いぎみにクラッカーを
鳴らした2人を見る。











星斗せいと咲鞍さきくらさんは
満面の笑顔だ。










それに天士てんじも余裕の
笑みを浮かべて俺を見る。











【俺のハニーはさ。
恥ずかしがりやさんだからね!】










そう言い俺を抱き寄せる。










ぐっ、とその腕をほどいて叫んだ。









[くそっ!誰がハニーだ!
ばかやろう!]









俺が真っ赤になって佇んでいる場所。










そこは咲鞍さきくら家のリビング。








ランチにお呼ばれしたのだ。









初めて来たけれど豪華で広い。








そして高い。
窓際にはあまり近寄れなかった。











星斗せいとはよく窓際のソファで
俺とLINEで話しているが…












高所恐怖症ではないんだな…。










天士てんじと一緒に外を覗きこみ
何やら指差して話している。









『おい、かん。よかったな。』










気がつくと咲鞍さきくらさんが
横にいて俺に話しかけてきた。










[…あ、りがとうございます。]









天士てんじを頼むよ?
あいつ本当にいいやつなんだから。』











[わかってます。
俺、大事にしますから。]












『お!素直になったな!
…ツンデレは残しといてやれよ?
あいつの大好物だ。』










[ぶっ…。…あの。咲鞍さきくらさんは…
天士てんじといつから?]










『幼稚園から高校まで一緒だったんだ。』










[そう、なんですか…。]










『なに?嫉妬?』












[ぐっ!そんなことはっ…。]










『…ふはは!おまえわかりやすいな!
可愛い…。天士てんじはそんなおまえだから
ここまでしたんだな。
パートナー宣誓して
家まで買うなんて。あっぱれだ!』











[か、可愛いなんて…
やめてくださいよっ!]










『ぐはは!ごめんごめん!』









天士てんじがびっくりしたように
こちらにやって来る。










【こら!栄醐えいご
俺のかんに変なこと
言ったんじゃないだろうな?】










『俺は、かんが可愛い、って
言っただけだぜ?』










[ばっ!さ、咲鞍さきくらさんっ!]










【!栄醐えいごやめろよ!】











天士てんじは俺を再び抱き寄せる。











[ちょっ、おまっ!離せっ!]











笑い合いながらふざけて
言い合う両者に
俺も苦笑しかけたその時
聞こえてきたのは…。











「え……ご…………っ。」










瞳にいっぱい涙を溜めて
泣き声でこっちを見ている
星斗せいとの姿。











「ぼっ…ぼくより…ヒック……
かんがグズッよく、なった、の……?」











今にもぽろっと涙が落ちそうに
泣き顔の星斗せいと
ぽつんと窓際に立っている。











『わぁぁ!ごめん!星斗せいと
そんなわけないじゃないか!
からかってふざけてただけなんだ!』











【ごめん!星斗せいとくん!
俺がそんなことさせやしないから!】










天士てんじも焦って
おろおろしてる。










星斗せいと!俺は咲鞍さきくらさんは
いらないんだ!]










『おい、かん
そこまで言うことないだろ…』










「わぁぁ!バカ栄醐えいご!」












『ごめんって!星斗せいと!』












咲鞍さきくらさんは星斗せいとを抱き込んで
窓際のソファで毛布にくるまって
宥めている。












[なんか悪いことしちまったな…]












【ふふ…きっとあれはあれで
2人のコミュニケーションなんだよ…。
ほら、もうイチャイチャしはじめてる。】











[…!!わ、わ…]










俺は大慌てで後ろを向く。











まさに深くキスをしようと
しているところだったから…。












【ね、俺たちもする?】











[このくそやろ!するわけないだろっ!]










なんでだよ~と唇を突きだして
拗ねている天士てんじを置いて
俺はキッチンに行き
手土産として持ってきたお菓子を
テーブルの上にのせた。













しばらくするとキッチンに
星斗せいとがやってきて
少しもじもじと恥ずかしそうに言う。










かん…。ごめんね…。
あ!かんに教えてもらった
パスタ作れるように用意してあるの!
味見してくれる?」












星斗せいと。大丈夫?]












コク、と頷いて少し顔を赤くした
星斗せいとは誤魔化すように
明太子がね!と話し始めた。












俺はパスタを茹でて
からめるだけになっている
明太子ソースを味見して
バッチリ、と親指をたてる。











星斗せいとは嬉しそうな顔をした。











パスタを茹でている間に
俺がパパっとサラダを作り
茹であがったパスタを絡め完成。











「じゃあ、いただきまーす!」











星斗せいとは嬉しそうに言う。









咲鞍さきくらさんも天士てんじ
いただきます!とパスタを頬張った。











『引っ越ししたらうちと
だいぶ近くなるな。
かん、また遊びに来てやってくれ。』












[わかりました。咲鞍さきくらさん。]











俺は微笑んで言う。












『おまえ笑うようになったな。
いい感じじゃん。よかったな。』











「なんか栄醐えいご
お父さんみたいになってない?
ふふふ!」











星斗せいとが笑う。











栄醐えいごはほんとだいぶ
オヤジ入ってきたな!くく…】












天士てんじも面白そうにからかった。













『おい!天士てんじ
おまえ、同い歳じゃないかよ!
なんでおまえだけ若いみたいな
顔してるんだ!』













【俺はそんなオヤジくさいこと
言わないもーん。ね、かん!】











[ああ。そうだな。]











俺はまた笑う。











「でもそんな栄醐えいご
僕は大好きだからね!」












星斗せいと…。』











おまえだけは俺の味方だ!と
大袈裟に抱きつく咲鞍さきくらさん。












リビングは笑いに包まれ
幸せが溢れた。
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