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Eternal Rain ~僕と彼の場合~外伝
Eternal Rain ~俺と彼の場合~⑤
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昼になってタブレットが鳴った。
天士からのLINEには
お昼食べたか?と、ある。
俺のことなんて気にしなくていいのに…。
俺は食べた、とだけ返した。
本当は食べてないけど。
するとガチャ、と玄関が開く音がして
寛~?と声がする。
は?と振り向くと手にたくさん
ビニール袋を抱えた天士が
立っていた。
【もう~!寛お昼食べるの
早いよ!おなかすいたの?】
[あ…いや………。]
【え?あれ?食べてないんじゃ?】
[め、めんどかった、んだよ…。]
【もう~!適当に返事するの
やめてよ~。でもよかった!
いろいろ買って来たから
一緒に食べよう。
ほら、これ冷蔵庫入れて。】
俺は憮然と食材を冷蔵庫に入れる。
[こんなに買って来て
どうすんだ…バカじゃねぇか?]
悪態をつきつつ嬉しそうに
ピザを出している天士の顔を
盗み見る。
【ピザ、好き?】
満面の笑みで聞いてくる
天士にああ、と答え
下を向いた。
顔が熱い。
食卓につくと天士は
俺のぶんのピザを差し出した。
笑顔でこちらを見ている
天士から目を反らすように
ひたすらモグモグ、と
ピザを咀嚼する。
よかった、と笑って
コッチも食べる?とフライドチキンを
出してくる天士。
[いや、もういい。]
【意外と少食だね?】
[…腹六分を心がけてんだ。
食い過ぎると頭が働かねぇし
体も動かないからな。]
【へぇー…お、俺も見習おう…。】
そう言いチキンを箱に戻すあいつは
俺を見て嬉しそうに微笑む。
[こ、んなふうに昼に
帰れたり、する、のか?]
【あ~。今日は特別!
このあとの依頼者さんとの
打ち合わせがたまたま
うちの近くだったからさ。
寛とお昼食べられる~って思って。】
[…っ。………時間大丈夫なのか?]
【……わっ!もう行かないと!
じゃあね、寛!】
慌てて出ていく姿を
俺は知らずに微笑んで見ていて…。
それに気づいた自分を
何考えてんだ、アホ!と
罵倒し後片付けを始めた。
あいつがたくさんのものを
買ってきたおかげで
冷蔵庫がいっぱいだ。
それにお菓子がたくさん。
誰がこんなに食うんだ?
アイスも山ほど。
俺、そんなに子供に見えるのか?
確かにあいつからしたら
下だろうけどさ…。
つらつらと考えつつ
晩御飯、なにしよう…。と悩む。
(昼に食べなかったチキンを
酢豚ならぬ酢鶏にして…
レタスとトマトのサラダと
豆腐の味噌汁。これでいいかな。)
冷凍できるものは冷凍したし…。
うん。大丈夫。
って…俺なにやってんだ…。
はぁ、と溜息をつき
またベッドに寝転がる。
[夢、かぁ…]
遠い昔。夢見た職業は医者だった。
兄を診てくれていた医師は
とても優しくかっこいい人で
俺のこともいつも
気にかけてくれていて…
だからあんな大人になりたい、と
思っていた。けど俺の頭じゃ
医者なんてとても無理だったし
そんな環境にもなかった。
もし。できるなら。
人の役に立つ仕事がしたい。
こんな俺に何かできることが
あるんだろうか。
今、こうして天士に
世話になっている。
俺はこのままでいいんだろうか…。
あいつはあんなふうに
言ってくれるけど俺は…
あいつをどう思っているのだろう…。
俺は…恋、とか愛、とかが
わからない。そんな気持ちに
今までなったこともないし
誰かに好き、とか言われたことも
なかった。
生理現象としての
精通と呼ばれるものはあったけど
そういう欲もあまりなくて…
仲間にエロい、というDVDを
見せられてもなにも思わなかった。
むしろあるのは嫌悪感で…。
女が喘いでいる声に
序盤で辟易しもういらない、と
言ったら不思議がられたっけ…。
夕方になり俺は米を洗って
ご飯を炊き味噌汁とサラダを
作って下ごしらえをしてから
なんとなくタブレットを
眺めていると天士から
LINEが入りもう帰るというので
慌てて酢鶏の準備を進めた。
思えば小学3年生頃からずっと
家族のごはんを作ってきた。
お金に困ることはなかったけど
みんな食べる時間はバラバラ。
兄が家にいる時は兄にあわせた食事。
俺が兄に食べさせてあげることも
多々あった。
兄が入院中は両親に弁当を届けたり
温めて食べられるように、と
食卓に置いておいたりしていた。
いろいろと回想しながら作っていると
玄関が開く音と共に俺を呼ぶ声。
思わず俺は走り寄った。
[おか、え…リ。]
【寛!ただいまっ!
いい匂い~!何作ってくれたの?】
[す…酢鶏……。]
【なに?それ?酢豚じゃなくて?】
[あ、ああ。おまえが
無駄に買ってきたチキンを
豚の代わりに使った、んだ。]
【寛って…すごいな!】
[すごかぁ、ない。
ただ必要に迫られて
するようになっただけだ。]
【必要に迫られて?】
[ああ。………とりあえず
熱い間に食べよう。
おまえ手ぇ洗って着替えてこいよ。
汚いな!]
はぁい~と笑って天士は
部屋着に着替えて戻ってきた。
【おいしそう~!】
そう言うと天士は
椅子に座り箸を持ったまま
じっ、と待っている。
俺は自分の味噌汁を入れるのに
立っていたのでその天士の行動を
不思議に思った。
[おい、先、食えよ?
何ぼーっとしてんだ?]
【え?だって一緒に食べ始めたほうが
美味しいし嬉しいでしょ?
ほら、早く座って。】
[は?なんだそりゃ?]
【早く早く。】
俺が戸惑いぎみに座ると
じっと食べ始めるのを
見つめてくる天士。
しかたなくごはんを一口
口に入れると満面の笑みを浮かべて
天士も食べ始めた。
【うんま!なにこれ!】
すごい勢いで食べ進める天士に
苦笑しているとやっぱり、と
あいつは声をあげる。
[……なん、だ?]
【寛は笑っているほうがいい、よ。
人のよさが出る。】
[っつ!バカか?
俺が人がいいわけないだろうが…]
【いいや。寛はいい子だよ。】
[子、って…!馬鹿野郎!
子供じゃねえ!昼もそうだ!
お菓子やアイス大量に
買ってきやがって!
年下だからって子供扱いすんな!]
【くくく!ごめん…お菓子やアイス
嫌いだった?コーヒー飲まないって
言うからさぁ…甘いののほうが
好きかなぁ、と思ったんだけど…
食べないなら俺が食べるから
いいよ。寛は何が好きなの?】
[俺がコーヒー飲まねぇって
言ったからなのか…
水で十分だよ、俺は。]
【ストイックだねぇ…】
感心したように見つめてくる天士に
そんないいもんじゃねぇ!、と叫んだ。
俺は乱暴に食べ終わった食器を
集め洗い物をする。
【ねぇ。寛はどうして
家のことこんなにできるの?
さっきの必要に迫られて、って
いうのと関係、ある?】
俺は背を向け食器を洗い
片付けながら生い立ちを
手短に話した。
[だから、家のことは
一通りできんだ……っ!わぁ!
なにすんだ!]
天士が泣いて俺の背中に
抱きついてくる。
【寛…。寛…。】
[ちょ!もう!離せ!
同情すんなっつってんだろうが!]
【同情なんかじゃ、ない…。
俺は寛が愛おしくて
愛おしくて…。】
[なんだよ!意味わかんねぇ!離せ!]
【少しだけ…1分でいいから
こうしていさせて…】
[んぐっ…………………。]
しばらくの間そうして
キッチンのシンクのところで
おとなしくバックハグされていた
俺はだんだんと体が熱くなってきた。
[も、もういいだろっ!]
そう言い逃げるように部屋に戻る。
頭が混乱して熱くて…
この熱はなんなんだろう、と
わけがわからなくなって
俺は窓を開けた。
夜の匂いと涼しい空気が
流れ込んでくる。
どのくらいそうしていただろう。
ドアがノックされ
天士の声が聞こえる。
【寛~?お風呂、入って?
俺もう入ったからさ。
………寝る、ね。おやすみ~】
俺は返事をできずに
天士の足音が遠ざかるのを
聞いていた。
天士からのLINEには
お昼食べたか?と、ある。
俺のことなんて気にしなくていいのに…。
俺は食べた、とだけ返した。
本当は食べてないけど。
するとガチャ、と玄関が開く音がして
寛~?と声がする。
は?と振り向くと手にたくさん
ビニール袋を抱えた天士が
立っていた。
【もう~!寛お昼食べるの
早いよ!おなかすいたの?】
[あ…いや………。]
【え?あれ?食べてないんじゃ?】
[め、めんどかった、んだよ…。]
【もう~!適当に返事するの
やめてよ~。でもよかった!
いろいろ買って来たから
一緒に食べよう。
ほら、これ冷蔵庫入れて。】
俺は憮然と食材を冷蔵庫に入れる。
[こんなに買って来て
どうすんだ…バカじゃねぇか?]
悪態をつきつつ嬉しそうに
ピザを出している天士の顔を
盗み見る。
【ピザ、好き?】
満面の笑みで聞いてくる
天士にああ、と答え
下を向いた。
顔が熱い。
食卓につくと天士は
俺のぶんのピザを差し出した。
笑顔でこちらを見ている
天士から目を反らすように
ひたすらモグモグ、と
ピザを咀嚼する。
よかった、と笑って
コッチも食べる?とフライドチキンを
出してくる天士。
[いや、もういい。]
【意外と少食だね?】
[…腹六分を心がけてんだ。
食い過ぎると頭が働かねぇし
体も動かないからな。]
【へぇー…お、俺も見習おう…。】
そう言いチキンを箱に戻すあいつは
俺を見て嬉しそうに微笑む。
[こ、んなふうに昼に
帰れたり、する、のか?]
【あ~。今日は特別!
このあとの依頼者さんとの
打ち合わせがたまたま
うちの近くだったからさ。
寛とお昼食べられる~って思って。】
[…っ。………時間大丈夫なのか?]
【……わっ!もう行かないと!
じゃあね、寛!】
慌てて出ていく姿を
俺は知らずに微笑んで見ていて…。
それに気づいた自分を
何考えてんだ、アホ!と
罵倒し後片付けを始めた。
あいつがたくさんのものを
買ってきたおかげで
冷蔵庫がいっぱいだ。
それにお菓子がたくさん。
誰がこんなに食うんだ?
アイスも山ほど。
俺、そんなに子供に見えるのか?
確かにあいつからしたら
下だろうけどさ…。
つらつらと考えつつ
晩御飯、なにしよう…。と悩む。
(昼に食べなかったチキンを
酢豚ならぬ酢鶏にして…
レタスとトマトのサラダと
豆腐の味噌汁。これでいいかな。)
冷凍できるものは冷凍したし…。
うん。大丈夫。
って…俺なにやってんだ…。
はぁ、と溜息をつき
またベッドに寝転がる。
[夢、かぁ…]
遠い昔。夢見た職業は医者だった。
兄を診てくれていた医師は
とても優しくかっこいい人で
俺のこともいつも
気にかけてくれていて…
だからあんな大人になりたい、と
思っていた。けど俺の頭じゃ
医者なんてとても無理だったし
そんな環境にもなかった。
もし。できるなら。
人の役に立つ仕事がしたい。
こんな俺に何かできることが
あるんだろうか。
今、こうして天士に
世話になっている。
俺はこのままでいいんだろうか…。
あいつはあんなふうに
言ってくれるけど俺は…
あいつをどう思っているのだろう…。
俺は…恋、とか愛、とかが
わからない。そんな気持ちに
今までなったこともないし
誰かに好き、とか言われたことも
なかった。
生理現象としての
精通と呼ばれるものはあったけど
そういう欲もあまりなくて…
仲間にエロい、というDVDを
見せられてもなにも思わなかった。
むしろあるのは嫌悪感で…。
女が喘いでいる声に
序盤で辟易しもういらない、と
言ったら不思議がられたっけ…。
夕方になり俺は米を洗って
ご飯を炊き味噌汁とサラダを
作って下ごしらえをしてから
なんとなくタブレットを
眺めていると天士から
LINEが入りもう帰るというので
慌てて酢鶏の準備を進めた。
思えば小学3年生頃からずっと
家族のごはんを作ってきた。
お金に困ることはなかったけど
みんな食べる時間はバラバラ。
兄が家にいる時は兄にあわせた食事。
俺が兄に食べさせてあげることも
多々あった。
兄が入院中は両親に弁当を届けたり
温めて食べられるように、と
食卓に置いておいたりしていた。
いろいろと回想しながら作っていると
玄関が開く音と共に俺を呼ぶ声。
思わず俺は走り寄った。
[おか、え…リ。]
【寛!ただいまっ!
いい匂い~!何作ってくれたの?】
[す…酢鶏……。]
【なに?それ?酢豚じゃなくて?】
[あ、ああ。おまえが
無駄に買ってきたチキンを
豚の代わりに使った、んだ。]
【寛って…すごいな!】
[すごかぁ、ない。
ただ必要に迫られて
するようになっただけだ。]
【必要に迫られて?】
[ああ。………とりあえず
熱い間に食べよう。
おまえ手ぇ洗って着替えてこいよ。
汚いな!]
はぁい~と笑って天士は
部屋着に着替えて戻ってきた。
【おいしそう~!】
そう言うと天士は
椅子に座り箸を持ったまま
じっ、と待っている。
俺は自分の味噌汁を入れるのに
立っていたのでその天士の行動を
不思議に思った。
[おい、先、食えよ?
何ぼーっとしてんだ?]
【え?だって一緒に食べ始めたほうが
美味しいし嬉しいでしょ?
ほら、早く座って。】
[は?なんだそりゃ?]
【早く早く。】
俺が戸惑いぎみに座ると
じっと食べ始めるのを
見つめてくる天士。
しかたなくごはんを一口
口に入れると満面の笑みを浮かべて
天士も食べ始めた。
【うんま!なにこれ!】
すごい勢いで食べ進める天士に
苦笑しているとやっぱり、と
あいつは声をあげる。
[……なん、だ?]
【寛は笑っているほうがいい、よ。
人のよさが出る。】
[っつ!バカか?
俺が人がいいわけないだろうが…]
【いいや。寛はいい子だよ。】
[子、って…!馬鹿野郎!
子供じゃねえ!昼もそうだ!
お菓子やアイス大量に
買ってきやがって!
年下だからって子供扱いすんな!]
【くくく!ごめん…お菓子やアイス
嫌いだった?コーヒー飲まないって
言うからさぁ…甘いののほうが
好きかなぁ、と思ったんだけど…
食べないなら俺が食べるから
いいよ。寛は何が好きなの?】
[俺がコーヒー飲まねぇって
言ったからなのか…
水で十分だよ、俺は。]
【ストイックだねぇ…】
感心したように見つめてくる天士に
そんないいもんじゃねぇ!、と叫んだ。
俺は乱暴に食べ終わった食器を
集め洗い物をする。
【ねぇ。寛はどうして
家のことこんなにできるの?
さっきの必要に迫られて、って
いうのと関係、ある?】
俺は背を向け食器を洗い
片付けながら生い立ちを
手短に話した。
[だから、家のことは
一通りできんだ……っ!わぁ!
なにすんだ!]
天士が泣いて俺の背中に
抱きついてくる。
【寛…。寛…。】
[ちょ!もう!離せ!
同情すんなっつってんだろうが!]
【同情なんかじゃ、ない…。
俺は寛が愛おしくて
愛おしくて…。】
[なんだよ!意味わかんねぇ!離せ!]
【少しだけ…1分でいいから
こうしていさせて…】
[んぐっ…………………。]
しばらくの間そうして
キッチンのシンクのところで
おとなしくバックハグされていた
俺はだんだんと体が熱くなってきた。
[も、もういいだろっ!]
そう言い逃げるように部屋に戻る。
頭が混乱して熱くて…
この熱はなんなんだろう、と
わけがわからなくなって
俺は窓を開けた。
夜の匂いと涼しい空気が
流れ込んでくる。
どのくらいそうしていただろう。
ドアがノックされ
天士の声が聞こえる。
【寛~?お風呂、入って?
俺もう入ったからさ。
………寝る、ね。おやすみ~】
俺は返事をできずに
天士の足音が遠ざかるのを
聞いていた。
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